じじぃの「人の死にざま_1732_パウル・エールリッヒ(細菌・免疫学者)」

 ミサイル療法 (coe-accele.med.gunma-u.ac.jp HPより)

2012/10/23:DDS研究所(発):米国国立癌研究所でのEPR効果にもとづく対癌戦略ワークショップで講演 崇城大学
去る10月10日、米国国立がん研究所(NCI)において、ナノテクノロジーにおけるEPR効果のワークショップが開かれました。
EPR効果は本学DDS研究所特任教授の前田浩先生が1986年に提唱された理論で、固型がんのピンポイントミサイル療法の基本概念のこと。米国のNCIのナノテクノロジー部門も本格的にEPR効果にもとづく対癌作戦を促進するということです。前田教授はそのシンポジウムのメインスピーカーとしてEPR効果発見の経緯、EPR効果の増強法について講演されました。
http://www.sojo-u.ac.jp/faculty/department/pharmaceutical/news/121023_004426.html
エールリッヒ コトバンク より
パウル・エールリッヒ(Paul Ehrlich, 1854 - 1915)はドイツの細菌学者。免疫学,化学療法の先駆者。
駆梅薬サルバルサンの発見者。ライプチヒ大学で医学教育を受けたのち,ベルリン大学の助手となった (1878) 。その後 R.コッホの伝染病研究所に入り,E.ベーリングが発見したジフテリア血清の抗体価の決定方法などを開発した。
「エールリッヒ仮説」は別名を「側鎖説」ともいう。細胞は毒素の抗原決定基(トキソフォア)と結合する表面部位や側鎖(ハプトフォア)をもっていて,細胞が刺激を受けるとこのハプトフォア部分が循環系へ供与されて免疫抗体になるというもの。

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『新しい薬をどう創るか―創薬研究の最前線』 京都大学大学院薬学研究科 ブルーバックス 2007年
体の中の薬の動きを自由にあやつる (一部抜粋しています)
ガン細胞の表面には正常組織とは異なるガン細胞特有の抗原(ガン抗原)が存在します。抗体は抗原を特異的に認識できる分子で、抗ガン剤とガン抗原を認識する能力を持った抗体を結合させたものを作れば、ガン細胞だけを狙い撃ちできることになります。これを”ミサイル療法”と呼びますが、ターゲッティングの手法で最も有用と考えられるDDS(ドラッグデリバリーシステム)技術の1つです(画像参照)。実はこのアイデアが現実のものとなるのには、その着想から100年もかかっているのです。
1854年ドイツで生まれたP・エールリッヒは、19世紀末から20世紀初頭に免疫学発展の基礎を築いた有名な病理・細菌・免疫学者です。”エールリッヒの側鎖説”と呼ばれる学説を提唱するなど多くの研究業績をあげました。1908年には免疫に関する業績によりノーベル医学生理学賞を受けています。
エールリッヒの側鎖説は今では、教科書にも載っている有名な学説ですが、当時の知識では十分説明がつかないので受け入れられない時期もあったようです。
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ガン細胞は正常組織とはずいぶんちがった特徴を持っています。1つは正常組織に比べて血管壁の構造が非常にルーズで、大きな物質でも簡単に通り抜けられるという特徴です。もう1つは、通常細胞にはリンパ系と呼ばれる組織から物質が洗い流されるときに利用される道筋がありますが、ガン組織にはリンパ系がまったくない、またはほとんど発達していないという特徴です。
この2つの特徴のため、大きな物質がガン組織のところだけに分布してそこに長時間にわたって留まることになります。これをEPR効果(enhanced permeability and retention effect)と呼びます。血管透過性と組織での滞留性が大きくなっていることによる効果という意味です。
低分子(小さいサイズ)の抗ガン剤は正常組織とガン組織を無差別に攻撃してしまいますが、このEPR効果の考えに基づけば、大きな物質を抗ガン剤の運び屋として利用すれば、ガンの組織だけに届けられるのです。これがガン組織への受動的ターゲッティングの原理です。