じじぃの「科学・芸術_36_江戸学百科全書」

大江戸曼荼羅

大江戸曼陀羅 1996/5 朝日ジャーナル amazon
まず、企画がよろし。様々な研究者や識者をバランスよく配置して、多角的に江戸時代を解き明かそうとしている。一篇が短くて、読みやすいのもよろしい。どこからでも読むことができる。図版も多く、ビジュアル面からも工夫できている。装丁も含めて、しっかりした本づくりができている。
https://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A7%E6%B1%9F%E6%88%B8%E6%9B%BC%E9%99%80%E7%BE%85-%E6%9C%9D%E6%97%A5%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%AB/dp/4022562552
大江戸図鑑 [武家編] 朝倉書店
18世紀,江戸は江戸城から街道沿いに大きく広がり,およそ100万人の寝起きするまち,いわゆる「大江戸」となっておりました。おおざっぱにいうとこの100万人は町人50万,武家50万に分けられます。江戸幕府・将軍家とそれにつらなる旗本や諸大名などが,本書のテーマである「武家」と呼ばれており,いうならば江戸時代の支配階層にあたります。
https://www.asakura.co.jp/books/isbn/978-4-254-53016-2/
『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』 立花隆/著 文春文庫 2003年発行
尊厳死澁澤龍彦、江戸学百科全書 (一部抜粋しています)
京都の病院で安楽死事件が起きて、大きな社会的関心を読んだおりから、ヘルガ・クーゼ編『尊厳死を選んだ人びと』(講談社)は時宜を得た出版となった。
私はあの事件を報道する新聞の論調に不快感を持っていた。その不快感がどこからくるのか、あまり深くは分析してこなかったのだが、この本に登場してくるある医者の次のような文章を読んで、ああ、これだと思った。それは公開書簡を書いて自殺することを選んだ四肢麻痺患者の主治医の文章である。
「クリス(自殺した自分の患者)の死と同時に、ぞっとするようなことが起こりはじめた。もっとも恐怖感を覚えたのは、彼の死をめぐる多くの傍観者たちや見ず知らずの他人によるコメントだった。(中略)クリスの自殺は、ただ彼を生かしておきたいだけの、世の冷血漢の存在を浮き彫りにした。(中略)恐ろしいのは、そのような冷血漢どもの大半が、『何がよいか』をわかっているつもりになっていることだ」
ケースそのものは京都のケースとは似ても似つかないものだが、ろくに具体的事実関係を知らない傍観者がしたり顔でふりまわす表面的道徳論のいやらしさはよく似ているということである。
この本には、安楽死尊厳死のいろんな具体的ケースが詰まっている。こういう問題はあくまでも抽象論としてではなく、具体的ケースにもとずく具体論として論じていくことが重要だということが、これを読めばわかるだろう。
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最近、江戸ブームがつづいているが、朝日ジャーナル『大江戸曼荼羅朝日新聞社)は、このブームの先がけともなった。今は廃刊になってしまった「朝日ジャーナル」の同名の連載(1987年1月〜12月)を1冊にまとめたものである。連載でその都度見ていたときにはそれほど大したものとは思っていなかったが、こうして1冊にまとめてみると、実に見事な江戸学百科全書になっている。
江戸の都市計画、猥雑の構造、芝居と見せ物のある風景、江戸の王権、江戸の人工知能、江戸の人種学、江戸の解剖学、江戸の遊び、小間物屋の文化、浮世床芝居噂、遊女・浪人・欠落人、非人と町方、野火消、江戸の母子姦図、幕末のアルス、エロティカ、江戸の辺界、江戸のエコロジー、江戸のフォークロア、都市と妖怪、江戸の悪霊祓い師、江戸末期の新宗教などなど、章のタイトルをちょっとならべただけでも、この本の面白さがわかるだろう。
図番が実に豊富で見事である。総ページ425ページの約4割がカラー図版である。それに、各界トップクラスのライターたち40余名の動員といい、その執筆内容の水準の高さといい、いまどきこれだけの本はなかなか作れない。朝日新聞社は、こういう連載をのせた雑誌をつぶしてしまったことを恥ずべきである。
                                (1996年6月)