じじぃの「人の死にざま_1674_オットー・ヴァールブルク(生理学者・医師)」

ミトコンドリアのATP合成 (hobab.fc2web.com HPより)

CoQ10(ユビキノン)
ユビキノン(ubiquinone)は、電子の受容体として、生体内で、重要な働きをしている。ユビキノンは、ミトコンドリアの電子伝達系で、電子伝達に関与する。
http://hobab.fc2web.com/sub4-CoQ.htm
オットー・ワールブルク ウィキペディアWikipedia) より
オットー・ハインリッヒ・ワールブルク(Otto Heinrich Warburg、1883年10月8日 - 1970年8月1日)はドイツの生理学者、医師。
ベルリンにて1921年-1927年までベルリン大学助教授を経て、1931年-1953年までカイザー・ヴェルヘルム生物学研究所(現在のマックス・プランク生物学研究所)の局長として、細胞生理学の研究を行う。彼は腫瘍の代謝、及び細胞(特に癌細胞)の呼吸の研究を行った。(ワールブルクの)黄色酵素の性質と製造法の発見により、1931年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。彼は1931年にThe Metabolism of Tumoursを編集し、1962年には、New Methods of Cell Physiologyを執筆した。彼は細胞内で低酸素濃度下において腫瘍が発達することを最初に実証した。

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ミトコンドリアが進化を決めた』 ニック・レーン/著 みすず書房 2007年発行
呼吸の意味 (一部抜粋しています)
19世紀末になるころには、呼吸が細胞内で起き、生命のあらゆるところでエネルギー源となっていることが明らかになった。それでも、呼吸の仕組みが実際にどんなものなのか――ブドウ糖の酸化によって生じたエネルギーが、どのように生命のエネルギー需要と結びつくのか――は、だれにもわからなかった。
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ヘモグロビンなどの色素に色が付いているには、特定の色の光(虹に見られるような光の波長域)を吸収し、残りの色の光を反射するためだ。化合物が吸収した光のパターンは、その物質の吸収スペクトルと呼ばれる。酸素と結合すると、ヘモグロビンはスペクトルの青緑と黄色の部分にあたる光を吸収し、赤い光を反射する。だから動脈血は鮮やかな赤い色に見えるのだ。静脈血ではヘモグロビンから酸素が離れるので、吸収スペクトルが変化する。このデオキンヘモグロビン(デオキンは脱酸素の意味)はスペクトルの緑の部分にあたる光を吸収し、赤と青の光を反射する。そのため静脈血は深紅になるのだ。
このように呼吸が細胞内で起きることから、研究者は血液でなく動物の組織でも似たような色素を探しはじめた。最初に成功を収めたのは、アイルランドの開業医チャールズ・マクマンで、彼は馬小屋の2階の干し草置き場に小さな実験室を構え、暇を見つけては研究していた。その実験室でマクマンは、壁に空いた小さな穴から患者が道を歩いてこないか見張り、邪魔されたくないときには家政婦を呼んでそう伝えたらしい。1884年、彼は組織のなかに、ヘモグロビンと同じようにして吸収スペクトルが変わる色素を発見した。
そしてこの色素こそ探し求められている「呼吸色素」にちがいないと主張したが、残念ながらその複雑な吸収スペクトルを説明できず、そもそもスペクトルが呼吸色素のものだと証明することさえできなかった。マクマンは発見はひっそりと忘れられ、やがて1925年に、ケンブリッジ大学ポーランド生物学者ダヴィド・ケイリンがその色素を再発見する。ケイリンは、だれもが言うとおり聡明な研究者にして魅力的な講師で、しかも心優しい人だったので、マクマンを第一発見者として立てるのを忘れなかった。だが、実のところ、マクマンをはるかに凌ぐ知見を手に入れ、スペクトルがひとつでなく3つの色素のものであることを明らかにしている。これにより彼は、マクマンを悩ませた複雑な吸収スペクトルを説明できるようになった。その色素をケイリンは「シトクロム」(細胞の色素という意味)と命名し、吸収スペクトルに現れる吸収帯の位置によってa、b、cと分類した。この分類はいまなお使用されている。
ところが不思議なことに、ケイリンの見つけたシトクロムはどれも酸素と直接反応しなかった。明らかにまだ何かが足りなかったのだ。このミッシング・リンクを解き明かしたのが、ドイツの(ベルリンにいた)化学者オットー・ヴァールブルクで、その業績により1931年にノーベル賞を受賞している。ここに解き明かしたと言ったのはヴァールブルクの知見が間接的で、かなり手が込んでいたからだ。
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そうして見えてきた全体像はこんなものだった。ブドウ糖が分解されて小さな断片になり、それがクレブス回路(クエン酸回路)という連鎖反応――いわば資産剥奪のメリーゴーランド――に送り込まれる。この連鎖反応では、炭素原子と水素原子が剥ぎ取られr、二酸化炭素として廃棄される。水素原子はヴァールブルクの補酵素コエンザイム)と結合し呼吸鎖に入り込む。そこで水素原子は構成要素である電子とプロトンに分かれ、以後のプロセスは両者で異なる。プロトンに何が起こるかについては、あとで見ることにし、まずは電子に注目しよう。電子は、一群の電子運搬体によって呼吸鎖の端から端まで受け渡されていく。個々の運搬体は、順次(電子を獲得して)還元されては、次の「鎖の環」で酸化される(電子を失う)。これは、呼吸鎖が連続的な酸化還元反応になり、微小な電線のように振る舞うことだ。電子はこの電線を、およそ5〜20ミリ秒ごとに1個の割合で、運搬体から運搬体へ乗り移る。酸化還元反応はどれも発エルゴン的――つまり、どれも仕事に使えるエネルギーを放出するということ――である。最終段階では、電子はシトクロム cから酸素へ渡り、そこでふたたびプロトンと結合して水ができる。この最後の反応がヴァールブルクの呼吸酵素で起きるのだが、その酵素は酸素を使ってシトクロム cを酸化するため、ケイリンによって「シトクロム酸化酵素」と改名された。ケイリンのつけた名はいまも使用されている。
現在では、呼吸鎖はミトコンドリアの内膜に埋め込まれた4つの巨大な分子複合体で構成されることがわかっている。