じじぃの「人の生きざま_620_ラリー・フェイグ(生化学・遺伝子)」

海馬 (kiokuryoku.net HPより)

Larry Feig, PhD Sackler
Professor of Developmental, Molecular & Chemical Biology
http://sackler.tufts.edu/Faculty-and-Research/Faculty-Profiles/Larry-Feig-Profile
DNAは運命ではない 2010年1月6日 TIME
エピジェネティック的遺伝変異は永続しないが、ものすごく強力でもある。
2009年2月の”the Journal of Neuroscience”誌によれば、記憶もエピジェネティックスで改善して遺伝出来ると言っている。タフツ大学生物化学のラリー・フェイグによると、遺伝子的に記憶障害のあるネズミに玩具を与え、運動をさせ注意を十分喚起させると、長期増強(long-term potentiation)即ち記憶作成のキーとなる神経伝達強化が起きた。驚くことにこの長期増強は、特別に訓練したわけではないその子孫にも現れている。
http://mui-therapy.org/newfinding/genes-not-destiny.html
『脳には妙なクセがある』 池谷裕二/著 扶桑社新書 2013年発行
母親の経験は子どもに遺伝する!? (一部抜粋しています)
恋人同士でなく、母子の関係についても、面白い事実がわかっています。なんと、母親が若い頃によい経験をすると、そのよい影響が子どもに”遺伝”するというのです。
そもそも「遺伝」とは遺伝子が媒介するものであって、たとえば、親が個人的に経験したことは子孫に遺伝しないと考えるのが常識でしょう。この常識を覆す実験データが、タフツ大学のフェイグ博士らによって報告されました。あくまでもネズミの実験ではありますが、フェイグ博士ら自尊も、「似た現象がヒトでも生じるとしたら」と想像を膨らませるほど、思わず考えさせられてしまう実験です。詳しく説明しましょう。
もちろん遺伝子コードは変化しません。変化するためには、進化レベルの長い時間が必要です。ただし、染色体やDNAは後天的に化学修飾を受けることが知られています。すると、遺伝子の機能発現が変化します。これを「エピジェネティックス」といいます。エピジェネティックスは今、生命科学界で流行の研究対象で、かくいう私自身もかつて日本薬理学界年会でエピジェネティックスに関するシンポジウムを主催したことがあります。
今回のフェイグ博士らの発見もエピジェネティックスを巡る話題です。驚くべきことは、その影響が単に後天的であるにとどまらず、その子どもの世代にまで及ぶことです。
ネズミを回り車やトンネルなどの置かれた豊かな環境で育てると、遊びのない閑散とした環境で育てたネズミよりも、迷路を解く能力が高くなることが知られています。これは「海馬」の機能が向上することが理由であるとされています。
フェイグ博士らは、まずこの現象を再確認する実験から開始しています。
海馬の機能はシナプス神経細胞間の結合部)伝達の増強現象を測定することで評価しています。
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さて、フェイグ博士らが見出したさらに興味深い事実とは、先ほど述べたとおりです。つまり、こうして海馬の機能が亢進したネズミから生まれた子どもたちも、また海馬の機能が高かったという発見です。子どもたち自身は豊かな環境を経験していないにもかかわらず、生まれつき海馬機能が高く、記憶力も増強されていました。