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反物質の軌跡
カール・デイヴィッド・アンダーソン ウィキペディア(Wikipedia) より
カール・デイヴィッド・アンダーソン(Carl David Anderson、1905年9月3日 - 1991年1月11日)はアメリカの実験物理学者である。1936年に陽電子の発見でノーベル物理学賞を受賞した。
ニューヨークにスウェーデン移民の家の子供として生れる。カリフォルニア工科大学で物理と工学を学ぶ。1930年博士号取得。1939年から引退までカリフォルニア工科大学の教授の職にあった。
ロバート・ミリカンのもとで宇宙線の軌跡を霧箱で観測中に、1932年に陽電子を発見し、ポール・ディラックの予言した陽電子の存在を証明した。
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『科学雑誌 ニュートン』 2016年4月号
村山斉博士に聞く・「反物質」を、ほかの科学者たちは信じなかった より
「反物質の存在は1928年、ポール・ディラックによって理論的に予言されました。このころディラックは、当時の新しい物理学である『量子力学』と『特殊相対性理論』を統合した理論をつくろうとしていました。その過程で、『粒子とはおびている電気が逆のもの』、つまり、『反粒子』が存在するはずだという、奇妙な結果がみちびかれるのです」(村山斉博士)。
ディラックは、実物の反粒子が発見される前に、数式を使って反粒子が存在することを予言したことになります。しかもこのとき、弱冠26歳でした。
村山斉博士に聞く・反物資を偶然発見した より
「反物質は、ディラックの予言からわずか4年後の1932年に偶然発見されました」(村山斉博士)。
アメリカの物理学者、当時27歳のカール・アンダーソンは、宇宙から飛んでくる高速粒子である「宇宙線」をくりかえし観測していました。すると、未知の粒子が観測装置に飛びこんできたのです。
「この未知の粒子は、電子と質量がまったく同じで、電子とは逆のプラスの電気を帯びていました。このことから、未知の粒子がディラックの予言した『反電子』だとわかったのです。その根拠は、宇宙線の軌跡でした」(村山斉博士)。
右下は、アンダーソンが宇宙線の中から見つけだした「反電子」の軌跡の写真(画像参照)です。まっすぐ飛んできた粒子は、電磁石に囲まれた「霧箱」という観測装置に入ります。霧箱は、電気をおびている粒子が入ってきた場合は、磁気の影響で軌跡が曲がるようにくふうされていました。しかも、プラスの電気をおびている粒子と、マイナスの電気をおびている粒子では、曲がる方向が逆になるという性質があります。また、粒子によって軌跡の長さや形がことなることがわかってきました。
アンダーソンは、これらの性質を利用して、さまざまな粒子を分類し、それまでに知られていたどの粒子でもない、未知の粒子を発見しました。そしてのちに、それが反電子であることがわかったのです。