じじぃの「人の生きざま_555_本庶・佑(がん・分子免疫学)」

Tasuku Honjo - Evolutionary view of the mechanism for immune diversity and genome instability 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=_l1cBCA2NEo
がん治療が変わる「日本発新免疫法」 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=yH2qV4BjMv0
スウェーデンで記念講演を行う
京都大の本庶佑特別教授

「私は幸運だった」=本庶さんが記念講演−ノーベル賞 2018年12月08日 時事ドットコム
今年のノーベル医学生理学賞を受賞する本庶佑京都大特別教授(76)が7日午後(日本時間同日夜)、ストックホルム市内のカロリンスカ研究所で「獲得免疫の驚くべき幸運」と題して記念講演を行った。
「講演の機会を与えられて、とても名誉に思っている。皆さんに感謝します」。紺色のスーツに水色のネクタイを締めて登壇した本庶さんは、柔らかな口調で聴衆に語り掛けた。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018120700957&g=soc
本庶佑 ウィキペディアWikipedia) より
本庶 佑(ほんじょ たすく、1942年1月27日 - )は、日本の医師、医学者(医化学・分子免疫学)。学位は医学博士(京都大学・1975年)。静岡県公立大学法人理事長(第3代)、京都大学大学院医学研究科客員教授
2000年には文化功労者として顕彰されており、2005年には日本学士院会員に選任されている。日本学士院は、本庶の主要な業績について「リンパ球が抗体遺伝子にクラススイッチ組換えと体細胞突然変異という遺伝子改変を導入し、ウイルスや細菌などの病原体の認識と排除に最も適した抗体を作る仕組みを解明しました」と説明するとともに、「活性化誘導シチジンデアミナーゼを発見し、そのメカニズムの全貌を明らかにしたことは国際的に高く評価されています」と讃えている。

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クローズアップ現代 「がん治療が変わる 〜日本発の新・免疫療法〜」 2015年10月27日 NHK
【司会】国谷裕子 【ゲスト】玉田耕治(山口大学教授)
日本人の2人に1人がかかり、3人に1人が命を落とすと言われる「がん」。
このがん治療が、大きな転換点を迎えている。画期的な治療薬、「免疫チェックポイント阻害剤」が登場したのだ。いわゆる免疫療法の一種だが、従来のものとは逆の発想から生まれた。これまでの免疫療法は免疫細胞の攻撃力を高める、いわばアクセルをかける働きが中心だったが、この阻害剤では免疫細胞にかけられた「ブレーキを外す」。他に治療法のなかった患者にも治療効果をあげることに成功した。地道な研究を新薬開発に結びつけたのは1人の日本人研究者だ。効果の持続が長く、幅広い種類のがんに適用できるということで、今や異例のスピードで薬事承認され、世界中で様々ながんへの臨床試験が始まっている。日本で生まれた新薬開発の道のりを紹介しつつ、今後の期待や残された課題に迫る。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3723.html
サイエンスZERO 「登場!がん治療を変える新薬 免疫のブレーキを外せ」 2015年5月17日 NHK Eテレ より
【司会】南沢奈央竹内薫 【ゲスト】玉田耕治 (山口大学医学部 教授)
「がん免疫療法」で、高い効果を上げる新薬「ニボルマブ」が承認されました。がん免疫療法は長く期待されてきましたが、実はこれまで、寿命を延ばすことが科学的に証明されて、日本で薬として承認されたものはなかったのです。この開発には日本人の研究者が深く関わっていました。そして、新薬のポイントは、免疫細胞の「ブレーキ」に注目したこと。どこが画期的だったのか、今後がん治療がどう変わりうるのか。
本庶佑京都大学大学院医学研究科教授)。日本を代表する免疫学者の一人であり、PD-1の発見から新薬「ニボルマブ」に深く関わってきました。
PD-1の遺伝子は免疫細胞のT細胞で働く遺伝子です。本庶さんがこのPD-1に注目したのには理由がありました。
実験ではT細胞が刺激されたときだけ、このPD-1遺伝子が非常に強く発現していたのです。
本庶教授、「通常はなくても何かいったんことがあるとグワッと出てくるというのは、何か非常に特殊な機能をしていることを推測させる」
この遺伝子の機能を調べるために、PD-1遺伝子が働かないようにしたマウスがつくられました。
生れたのは一見普通のマウス。変化は数ヵ月後にようやく表われました。
これは関節の顕微鏡写真です。右のPD-1が働かないマウスでは組織が乱れています。炎症を起こしているのです。
こちらの例では心臓が肥大しています。すい臓の細胞には黒っぽく見えているT細胞が大量に入り込んでいました。
PD-1が働かないと過剰な免疫反応が起きる。ということはつまり、PD-1に免疫のブレーキという機能があったのです。
本庶教授、「これはそんなに重篤ではない。バカーンと全部やっつけられるのではなくて、非常に弱いコントロールされた制御が行われていることを示している。だからやはりこれはちゃんとやれば臨床応用できるかもしれないと。その辺がひとつのターニングポイントです」
本庶さんは免疫のブレーキ・PD-1を抑えて免疫を活性化できれば、がん治療につながると考えました。
こちらはマウスの肝臓に転移したがんの様子を比較したものです。
PD-1の働きを抑える薬を使ったところ、がんの増殖が抑えられ、寿命も延びていました。免疫のブレーキを外すことががんの治療につながると証明されたのです。
このまま薬の開発に向けて動き出すかにみえました。ところが、
本庶教授、「治療に応用しようということを一生懸命に企業に話をもちかけたが、まったく冷たいというか乗り気になる企業が全くなかったのが実情。(なぜなら)がんの専門家はがんの免疫療法は眉唾モノだと考えていたと思う。僕はがんの専門家ではなかったのでやりたいと思った」
アメリカの科学雑誌論文の映像。
免疫チェックポイント阻害剤が一躍世界中から注目をあびたのは2012年のことでした。ある論文が発表されたのです。
研究ではPD-1を抑える薬を治療の手だてがないがん患者に使いました。
最初は3種類のがん「メラノーマ(悪性黒色腫)」「非小細胞肺がん」「肝臓がん」、そのすべてにこれまでにない効果があったというものでした。なかでも驚きなのはメラノーマについての結果です。
がんの大きさが変わらないか小さくなった患者が続出し、効果が年単位で持続していたのです。これまでの抗がん剤には見られなかったことでした。
日本でメラノーマについての臨床試験が進み、2014年7月に新薬ニボルマブは承認されました。
アメリカでは2015年3月にメラノーマに加え、肺がんでも薬として承認されています。
http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp505.html
『ゲノムが語る生命像 現代人のための最新・生命科学入門』 本庶佑/著 ブルーバックス 2013年発行
ガン治療のあらたな展望 より
分子標的薬は、特定のガン遺伝子が原因となり、そのターゲットが明確にされているガン腫については非常に有効性が高いことが知られている。問題は、この標的ガン遺伝子によるガン腫の例は比較的限られていることと、この薬剤を投与し続けることにより新たな変異を持ったガン腫が選択的に増殖し、やがて抗ガン剤が効かなくなることである。
その他の抗ガン剤としては、前立腺ガン、乳ガン等においてホルモン感受性の腫瘍があり、これらに対してホルモンやその拮抗製剤が使われ有効性が示されている。これらによって、乳ガンの手術後、5年生存率は飛躍的に高まっている。
しかし、近年もっとも注目を集めているのは、ガンの免疫療法である。従来、ガンの免疫療法に関しては多くのガン治療医は懐疑の目を向けてきた。その多くは、ガン免疫療法の中には科学的根拠の薄いものがあり、承認がきちんとなされていないにもかかわらず民間の医療機関で横行する等の弊害があったからである。
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そうした中、2012年6月に画期的な免疫療法と称するものが、世界的権威のある学術誌で紹介され、現在大きな反響を呼んでいる。これは著者らが1992年に発見した免疫系を抑えるリンパ球レセプターPD-1にたいする抗体を用いる免疫賦活化療法である。