じじぃの「神話伝説_95_クー・フーリン(ケルト神話の英雄)」

How Cu Chulainn Got His Name - A Legend from Ancient Ireland 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=xl7BKEZg0FQ
Cu Chulainn

クー・フーリン ウィキペディアWikipedia)より
クー・フーリン(アイルランド語: Cu Chulainn)は、ケルト神話の半神半人の英雄。クー・フラン、クー・フリン、クフーリンとも。
父は太陽神ルーもしくはSualtam Mac Roth、母はコノア王の妹デヒテラ(Deichtine)。 幼名はセタンタ(Setanta)。
灰色のマハ(Macha)と黒色のセングレン(Sainglain)の二頭の馬が引くチャリオットに乗る。 髪は百本の宝石の糸で飾られ、胸には百個の金のブローチを付けた美しい容貌だが、いざ戦いが始まると激しく痙攣し、額からは光線を発してあごが頭くらいの大きさになる。両目の間には七つの瞳が生じ、片方の目は頭の内側に入り、もう片方は外側へ飛び出す。手足の指は七本に増え、両頬には黄・緑・赤・青の筋が浮かぶ。電流のように逆立った髪は根本では黒いものの先端に向かうほど赤く変色し、そこから血が滴るほどの恐ろしい形相に変貌するという。

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『世界神話伝説大系 40 アイルランドの神話伝説 [Ⅰ]』  八住利雄/編 名著普及会 1929年発行
クランの猛犬 (一部抜粋しています)
セタンタは、だんだん大きく成長していった。そしてやがては、コノア王の宮廷へ連れて来られて、ほかの貴族や首領たちの子弟たちと同じように養育されるようになったのである。
その中に次のような事件が起こった。そしてその事件のために、セタンタはクフーリンという名をつくれるようになり、そのクフーリンという名で知られるようになったのである。
ある日の午後であった。コノア王は臣下の貴族たちと一緒に、ある宴会に出かけて行った。その宴会というのはクレグネイのクラン(Cullan)という金持の鍛冶屋の小丘の家で行われるものであり、コノア王たちはその夜はそこで過すことになっていた。
セタンタも、その一行に加わることになっていた。が、コノア王たちが出かけた時に、セタンタは仲間の者たちとホッケーの遊びに興じていた。中途で自分だけ抜けることができなかったので、セタンタは王に向かって、どうぞ先にお出かけ下さいと願った。そしてこの遊びがすみしだい、後から追っつきますからと言った。
そこでコノア王の一行は、先に出かけた。そして日没前に、目的地へつくことができたのである。
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しかし、彼らは後から来るセタンタを忘れていたのである!
祝宴は真っ最中であった。華やかな笑声は厚い周壁の外にまで漏れて聞こえ、面白い音楽は絶え間なく奏でられていた。ところが突然に、なんとも言いようのない恐ろしい声が聞こえた。祝宴に酔い狂っていた人々も、その声を耳にすると思わずその場に立ちすくんでしまったほどであった。
それはクランの猛犬が吠えた声であった。見知らぬ人の姿を認めると、この猛犬は物凄い声で吼えたてるのであった。しかし猛犬の恐ろしい怒声は、たちまちの中にはげしい格闘の響と変ってしまった。
人々は、この時セタンタのことを思い出した。そして事変の予感に胸をとどろかせながら、門の外へ走り出た。すると彼らは何を見たか? 煌々(こうこう)たる提灯の光に照らされて、昂然と突っ立っている1人の若者を見たのである。そして足下に、地に染まって斃(たお)れている猛犬を見たのである。この若者は言うまでもなくセタンタであった。
セタンタがおくれて来たのを見ると、この逞しい猛犬は物凄い吼え声をたて、素早く彼にとびかかって来たのであった。そこでセタンタは、猛犬の咽喉元をぐっと掴むと同時に、門の柱石を目がけて投げつけたのである。セタンタの超人的な力は、こうして難なくこの猛犬の生命を奪ったのであった。
コノア王の騎士たちは、口々にセタンタのすばらしい勇気を褒めたたえた。セタンタはたちまちの中に、光栄ある戦勝の勇士となったのである。が、それは長くはつづかなかった。急にセタンタに対する人々の賞賛の声は止んでしまった。というのは、そこにこの家の主人クランが悲し気に立っているのを見たからである。
クランは、忠犬が殺されたのを悲しんでいたのだった。毎夜自分の家の安全を守ってくれた忠犬の無残な死を、悲しんでいるのだった。今夜から、誰が代ってこの忠実なる猛犬の役目を果たしてくれようぞ。人々はクランの心中を察すると、言い合わせたようにセタンタの勇敢な行為に対する賞賛を止めたのであった。
その時、若者セタンタは言った。
「お、クラン氏よ、では、私にこの猛犬の児を下さい。私はその児を立派に育て、親に劣らない忠実な猛犬にしてお目にかけます。必ず、なしてお目にかけますから御安心下さい。そしてその児が親の代わりになり得るまでの間、私に、楯と剣とを貸して下さい。私が殺した猛犬に代ってお家の番をいたしましょう。いかに忠実な猛犬でも、私よりも立派にお家の番をすることはできないと思います」
セタンタのこの言葉を聞くと、人々は言い合わせたように拍手した。セタンタの条理に通った申出に感心したのである。そしてその場で、彼の最初の勇ましい行為を記念するために、若者クフーリンという名をつけた。クフーリンというのは、クランの猛犬という意味をもった名前であった。そしてセタンタはその時から死ぬ時まで、クフーリンという名で呼ばれていたのである。