じじぃの「人の死にざま_1517_ルイ・ジャック・マンデ・ダゲール(ジオラマ作家)」

Louis Daguerre's 225th birthday 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=uCJhBiDQ3_c
Deutsches Museum, Munchen 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=EwmDOLj_oxw
Louis Jacques Mande Daguerre

  

ルイ・ジャック・マンデ・ダゲール ウィキペディアWikipedia)より
ルイ・ジャック・マンデ・ダゲール(Louis Jacques Mande Daguerre、1787年11月18日 - 1851年7月10日)は、フランスの画家、写真家。史上初めて実用的な写真技術を完成した人物として知られる。
写真の研究を行う前は、パリで舞台背景画家・パノラマ画家・ジオラマ作家として活躍していた。
同じ画家で先に写真研究を開始していたニセフォール・ニエプスとともにカメラの研究を開始。ニエプスは1826年に最初の写真術であるヘリオグラフィーを発明し、世界最初の写真を残しているが、その露光時間は8時間程度を要するもので、到底一般的な実用に耐える技術ではなかった。
ダゲールはニエプスの死後も研究を続け、1839年銀板写真法を発表した。このカメラは発明者の名前をとってダゲレオタイプと呼ばれ、露光時間を10-20分から最終的には1-2分にまで抑えることに成功し、肖像写真の撮影も容易なものとなった。

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『サイエンス異人伝 科学が残した「夢の痕跡」』  荒俣宏/著 ブルーバックス 2015年発行
科学を見せる劇場のこと――ジオラマの歴史 (一部抜粋しています)
どこまでもだだっぴろいドイツ博物館を一巡するとき、見る者をまず魅了するのは、あちこちに用意されたジオラマだろう。ジオラマとは、立体感にあふれた実景の縮小模型とでもいうべき、目を奪う展示装置のことだ。まるで映画のミニチュア・セットみたいな舞台があり、そこに小さな人間と機械の模型が置かれている。背景はパノラマ画だが、両方の効果が合わさって、魔法の窓のむこうにはほんものの三次元世界が覗けるかのような錯覚におちいる。
このジオラマを創造したのは、近代写真術の生みの親としても知られるダゲールである。ダゲールは最初、1785年にイギリスの画家ロバート・バーカーが発明した超広角の風景見せ物、(パノラマ)という装置をつくる仕事に従事していた。しかしパノラマは、視野は広いけれど、どうしても立体感がない。もっとリアルな立体的パノラマをつくりたくて、光を使うことに思いあたった。光が透過する幕を画面に使い、ここに光をうらおもて両方から当てる。
たとえば半透明の幕に山の絵を張りつけたとしよう。これを正面から光をあてると、山の細部があざやかに浮かぶ昼の光景があらわれる。こんどは室内を暗くし、幕のうらがわから光を透過させると、山はシルエットとなり、黒々とそびえたつ。赤いライトを裏から表へと透過させれば、みごとな夕焼けシーンもできあがるであろう。
こうしてダゲールは光を応用することによって、よりリアルでより劇的な情景装置をつくりだし、1823年にジオラマ命名した。
ダゲールは、この幕をいくつも組みあわせて立体感をだすことに成功し、やがて光の効果を加味した立体模型づくりへと進出した。これが現代のジオラマだ。日本でいえば、盆景に照明効果を加えたミニチュアの情景というところだろうか。ドイツ博物館のジオラマで、ことにすごかったのは、アルプスのパノラマを写真に撮る男を再現したジオラマだった。
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ジオラマをかくて、視覚がもともとシミュレーション装置にすぎないとの理解を基とし、人工の光景を「現実の光景」として知覚させるからくりとなった。ジオラマを覗くわれわれは、もう1つ、頭の中に同じようなジオラマをこしられている、ということである。
ちなみに、ジオラマの発明者ダゲールは、1839年に写真の原理を明示した人物としても知られる。そう、かれは科学の提示した驚異を、いよいよ技術に――日常に置きかえる作業を開始したのだ。その技術は、ほかでもない。光がうつしだした像を現像させる写真定着術の発見と利用である。伝説によれば、ダゲールは銀板にヨウ素蒸気を作用させ光で像を定着させる方法を考案しつつあった。すでに、ある種の感光版に光を当てれば、光の作用で板面に黒化が起き、像が定着することは判っていたのだが、なにしろ露光時間が長すぎるし、ほとんど像が固定しない。何千枚と失敗したあげく、その1枚を戸棚に放りこんでおいた。あとで磨き直して再利用するつもりで、しかもこの戸棚は化学薬品をおさめたものだった。数日後、戸棚をあけて、ダゲールは腰を抜かしたという。失敗したとばかり思っていた銀板に、くっくりと像が浮かんでいるではないか。ダゲールは詳細な実験の結果、30分ほど光にさらしただけの銀板でも、これに水銀蒸気をあてると像が出現することを発見した。現像という技術の発見であった。
そしてとどめに、ジオラマはその眼球に「シャッター」を搭載させた。瞬(まばた)きである。ここに生まれたのが、立体像の次の(動く映像)である。たしかに、瞬きはシャッター機能に似ている。カメラでは、1つの像を感光版に定着させ次の像を次の感光版に連続して定着させるためには、像を区切る「間」が必要になる。だから、瞬きせざるを得ない。こうして瞬きしながら感光させた映像の連続を、ある速度で流してみると、あらふしぎ! 像が動きだすのだ!