じじぃの「人の生きざま_484_リン・マーギュリス(生物学者)」

Chromosome (24) mtDNA - Lynn Margulis and the mitochondrial DNA 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ru7Wyt778QQ
ミトコンドリア内で生産されるエネルギー』 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=YAVCVlv8Yto
リン・マーギュリス

リン・マーギュリス ウィキペディアWikipedia)より
リン・マーギュリス(Lynn Margulis, 1938年3月5日 - 2011年11月22日)は、アメリカの生物学者マサチューセッツ大学アマースト校地球科学部教授。
ジェイムズ・ラブロックが提唱したガイア理論の支持者。
天文学者カール・セーガンの最初の妻で、著述家ドリオン・セーガン(Dorion Sagan, 1959年 - )、ソフトウェア開発者でセーガン・テクノロジーの創設者ジェレミー・セーガン(Jeremy Sagan)、ニューヨーク市の弁護士ザカリー・マーギュリス=オーヌマ(Zachary Margulis-Ohnuma)と教師で著述家のジェニファー・マーギュリス(Jennifer Margulis)の母である。
2011年11月17日に出血性脳梗塞を起こし、同年11月22日にマサチューセッツ州アマーストの自宅で死去。73歳没。
【共生進化論】
マーギュリスは、ネオダーウィニズムに代表される適者生存、すなわち強い種が生き残っていくという進化の原則に真っ向から反対する立場をとる。競争ではなく、共生こそ進化の原動力であり、重要なプロセスであると主張している 。

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『「自分」の壁』 養老孟司/著 新潮社 2014年発行
私の体は私だけのものではない (一部抜粋しています)
クビの短いキリンと長いキリンがいて、長いほうが高いところの葉っぱを食べるのに有利だから生き残った。生き残るのに有利な特徴、遺伝子を持つ個体が生き残っていくのだ、という説です。
よくできた、わかりやすいストーリーですし、ある程度はこれで説明がつくように見えます。ところが、実際の生物を見ていくと、どうも自然選択説だけでは説明がつかないことが、とても多い。
私が30年近く前に出した『形を読む――生物の形態をめぐって』(培風館)という本でも、そのことについて書いています。「自然選択説だけでは、生き物の形の進化は説明がつかない」と書きました。「形の進化は」という条件をつけたのは、そうせずに「自然選択説はおかしい」とストレートに書いたなら、たいへんな反発を喰らうことになるからです。ダーウィンを神聖化して絶対視する人が怒り出す。実際に、友人の池田清彦さんは、そういうことをストレートに言って、あちこちで攻撃されてたいへんでした。かなり感情的に批判されたようです。しかし、誰かが感情的な批判をするときは、そのどこかに嘘がある。そんなふうに私は考えるようにしています。
ともあれ、ヨーロッパの学者たちは、かなり長い間、ダーウィンを疑おうとしなかった。ところが最近、ちょっと雲行きが変ってきました。こちらの抱いている違和感を、彼らも持つようになったのです。
たとえば、細胞の研究からわかってきたことがあります。人体は約60兆個の細胞から成っている、とされています。この細胞の中を見ると、変なことに気づきます。細胞の中には核があって、その中に遺伝子もあるということは学校で習ったことがあるでしょう。
問題は、細胞の中には別の変なものが入っている点です。
ミトコンドリアです。ミトコンドリアは私たちの体内で重要な役割を果たしています。酸素を吸い、糖を分解してエネルギーを生む、という仕事はミトコンドリアが一手に引き受けてくれている。
なぜ青酸カリを飲んだ人は即死するか。青酸カリを飲むと胃の中で青酸ガスが出る。このガスを吸うとミトコンドリアは、ぱったりと活動を止めてしまう。要するに細胞の中で窒息してしまう。そしてミトコンドリアが窒息すると、エネルギーも生み出せないから人は死んでしまうというわけです。
ミトコンドリアを調べると、細胞本体とは別に、自前の遺伝子を持っているということがわかってきました。
人間のような生物が持っている遺伝子は核の中にあります。一方で、細菌などの遺伝子は核の中に入っていません。細胞に核がそもそもないのです。こういう生物を原核生物と呼びます。
ミトコンドリアの遺伝子は細菌のほうの遺伝子でした。つまり、私たちのものとはまったく別物だったのです。
これは、別に最近の発見でも何でもありません。もう数十年前からわかっていたことです。ちょっと生物学を知っている人なら誰でも知っているでしょう。
ミトコンドリアに限らず、細胞の繊毛や鞭毛のもとになる中心体も自前の遺伝子を持っています。植物でも、葉緑体は、本体の植物とは別の自前の遺伝子を持っている。
遺伝子は生物の設計図だといいます。しかし、体内にいる細胞が別の設計図を持っている、これをどう考えればいいのか。
リン・マーギュリスというアメリカ人の女性生物学者は、次のような仮説を立てました。
「自前の遺伝子を持つものは、全部外部から生物の体内に住みついた生物である」
ミトコンドリアは外部からやってきて人体に住みついたものだ、というのです。
彼女はこの論文を1970年に学界に提出しました。学術論文は、通常、匿名のレフリー(審査委員)が見て、合否を決めます。今ではある程度受け容れられているマーギュリスの説ですが、発表当初、彼女の論文はなんと17回も否定されたといいます。これはかなり異例のことです。ダーウィンへの信奉の強さがその背景にあります。