じじぃの「靴が鳴る!本当は恐ろしいほど残酷な」

靴が鳴る 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=ARpMCelPZmg&feature=related
童謡詩人・清水かつら
http://www.sky.sannet.ne.jp/katura/
『童謡の秘密―知ってるようで知らなかった』 合田道人/著 祥伝社 2003年発行
靴が鳴る 聞こえてくる靴の音とは? (一部抜粋しています)
 ♪おてて つないで 野道を行けば・・・。
この童謡を「おててつないで」というタイトルだと思っている人が以外と多い。手をつなぎながら、無邪気に遊ぶ子供たちの姿が目に浮かんでくるからなのだろう。しかし、この歌の実際の題名は「靴が鳴る」である。
でもなぜに、
「おてて つないで・・・」歩くと、靴がなるのだろう?
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中流家庭を築いたもの、それは戦争である。
その戦勝ムードは、人々に心のゆとりを持たせた。戦争による工業化の波が工場の数を増やし、それがサラリーマン族を生んだ、そして靴を履いて出勤するお父さんたちが生まれた。
清水は人々の命を奪った憎き戦争も、勝つことにより国が富み、思いがけない産物、童謡を生み育てたことに対し、一種の喜びすら感じていた。
この歌の靴の音、それは一般人には遠い存在である革靴が鳴っているのではなかった。この靴の音は、戦場へと向かう軍靴(ぐんか)の音だったのである。
兵士たちが足並みを揃えながら、"ざっざっざっざっ"と行進し、戦地へ赴(おもむ)く靴の音。
それこそが、「靴が鳴る」だった。
サラリーマン族などいない、どんな田舎町の人であっても、戦争に出向く兵士はいた。革靴ではピントこなくても、軍靴だったら、子供にも容易に理解できたはずだ。
それは父が履く軍靴かもしれない。兄のかもしれない。学校の先生の靴かもしれない。でも日本のため、私たちのために、大人の男たちは靴を鳴らして戦いに出ていく。
先に太平洋戦争の敗北があるまで、決して日本は戦いを無駄なものだとは考えていなかった。男の子の大きくなったときの最大の夢は兵隊さんになることだった。
明治維新まで外国との折衝を閉ざしていた日本が、あの大国、清を攻め打ち、またロシアとも戦った。確かにそれによって、尊い人命はいくつも散った。靖国の社(やしろ)に御霊(みたま)として祀(まつ)られた。
戦争を反対する声がなかったわけではない。でも、その戦いのあとの勝利の美酒はうまかった。領土も広がったし、兵器や軍艦をこしらえるための技術の向上や鉄鋼業、造船業などの隆盛により、働き口もぐんと増えた。そして大正に入ってから、第一次世界大戦への参戦。また日本は豊かになった。
第一次世界大戦の翌年、勝利に酔いしれているその年こそが、この「靴が鳴る」の発表年だった。
全員でひとつになって、つまり、
 ♪おてて つないで・・・
軍靴を鳴らしながら敵陣に向かうことによって、日本はまた大きく成長していったのである。
 ♪晴れたみ空に 靴が鳴る・・・。
み空とは、美しく雲ひとつない"美空"なのではなく『日本書紀』に推古天皇が歌にも使かっている"御空"なのである。
「晴れたみ空・・・」とは、神々などに対して敬いの気持ちを込めるときに使われる言葉なのだ。日本の神とは、本質的に天皇をさすことになる。"御空"、つまり天皇陛下のために、
「靴が鳴る・・・」。日本人は、戦場へとはせ参じたのだ。"天皇陛下万歳"と叫びながら・・・。そして勝利により人々の生活に潤(うるお)いが満ちてくる。それは、子供たちへの教育の関心度の高まりでもあった。
新しき暮らしの扉を開くうれしさで心が弾(はず)む。胸が高鳴る。だからこそ、そのために靴は鳴るのだ。軍靴が鳴るからこそ胸が高鳴るのだ。そんな思いをこの歌は根底に秘めていたのである。
見たことも、聞いたこともない革靴の鳴る音を想像するだけでは、子供はそれを身近な歌だとは感じない。でも、この歌の靴は軍靴だったからこそ、みんなで"み空"に向かって、声高らかに歌えたのである。

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『靴が鳴る』 作詞:清水かつら 作曲:弘田龍太郎
1. おてて つないで 野道を行けば
   みんな可愛い 小鳥になって
   歌をうたへば 靴が鳴る
   晴れたみ空に 靴が鳴る
2. 花を つんでは おつむにさせば
   みんな可愛い うさぎになって
   はねて踊れば 靴が鳴る
   晴れたみ空に 靴が鳴る

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どうでもいい、じじいの日記。
『童謡の秘密―知ってるようで知らなかった』という本を見ていたら「靴が鳴る 聞こえてくる靴の音とは?」というのがあった。
 ♪おてて つないで 野道を行けば・・・
で始まるあの有名な歌詞である。
この本の著者によると、
 ♪歌をうたへば 靴が鳴る
 ♪晴れたみ空に 靴が鳴る
の「靴」は革靴で「靴が鳴る」は、
「兵士たちが足並みを揃えながら、"ざっざっざっざっ"と行進し、戦地へ赴く靴の音」
なのだそうだ。
「晴れたみ空」の「み空」とは、
「神々などに対して敬いの気持ちを込めるときに使われる言葉」
なのだそうだ。
清水かつらが『靴が鳴る』を作詞したとき、この「靴が鳴る」はどんな音を思い浮かべて作ったのだろうか。靴は"ざっざっざっざっ"と鳴ったのだろうか。"キュッキュッキュッキュッ"と鳴ったのだろうか。
清水かつらは『靴が鳴る』の他に、『叱られて』、『雀の学校』などをの童謡を作詞している。
清水かつらが生きた時代は第一次世界大戦が終わり、日本が軍国化していった時代だった。
富原薫作詞の『汽車ポッポ』(昭和13年の作品)はもともと『兵隊さんの汽車』という題名だった。歌詞も現在のものと一部異なり、汽車に乗って出征する兵士を見送る内容であった。
清水かつらが作詞したものに『特幹の歌』というのがある。「特幹」とは「海軍特別幹部候補生」の略称で、飛行機の操縦士を養成するために10代の少年を速成した戦争末期の制度だ。
『靴が鳴る』の作品は大正8年で、『特幹の歌』の作品は昭和19年で、明らかに時代が違っている。
『靴が鳴る』の作詞からは戦争の匂いは感じられない。
大正8年当時の靴はどんな靴で、どんな鳴き声だったのだろう。
清水かつらはどんな思いで『靴が鳴る』を作詞したのだろうか。