じじぃの「人の死にざま_97_三木・のり平」

三木のり平 - あのひと検索 SPYSEE
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桃屋 江戸むらさき 動画 YouTube
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三木のり平 ウィキペディアWikipedia) より
三木のり平(本名:田沼則子(たぬまただし)、1924年4月11日-1999年1月25日)は、昭和期の喜劇人、俳優、演出家。長男小林のり一はコメディアン。
【来歴・人物】
1956年東宝と専属契約し、『のり平の三等亭主』で映画初出演。以後、森繁久弥と共演した『社長シリーズ』や、森繁、伴淳三郎フランキー堺と共演した『駅前シリーズ』などで人気を博した。『社長シリーズ』での「パァーッといきましょう」は、流行語にもなった。
「スターは三船(敏郎)。役者は(三木)のり平。」と言わしめるほど、その演技力は、大衆的に認知され、評されるほどであった。演出家としての才能も高く、森光子主演の舞台『放浪記』では、1981年より演出も務めている(他界後の公演も、肩書上は「演出」を担当していることになっている。もちろん現在は、「演出補」の本間忠良が実質的演出担当者に)。森光子は自身より年少かつキャリア的にも後輩であるのり平に対し「のり平先生には感謝している。」と今なお涙ながらに賛辞している。
また、「桃屋」のアニメーションCMは、1958年の『助六篇』から1998年の『カライ盗ルパン篇』まで40年間放送され、お茶の間に親しまれた(よく間違えられるが、同じくコメディアンである大村崑ではない)。1999年の『大根の運命篇』より、実子で長男の小林のり一が声を担当している。1999年1月25日、肝腫瘍のため死去。享年74。葬儀委員長は親友・森繁久彌が務めた。
また、マンガ『焼きたて!ジャぱん』には、主人公たちの対戦相手として、桃屋のアニメーションの三木のり平がそのまま三木のり平本人として登場し、ごはんですよ!を使用したパンを制作した。アニメ版の声は青野武が担当した。

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『のり平のパーッといきましょう』 三木のり平/小田豊二 著 小学館 1999発行 (一部抜粋しています)
はじめに−−−−
眠っているような顔だった。
鼻と顎(あご)の下の髭(ひげ)は、きれいに整えられ、三木さんは、穏やかな顔で横たわっていた。
僕は三木さんの眠った顔を見たことがなかった。夕方4時頃から三木さんの家ではじまった「飲み会」でも、次々と参加者が酔いつぶれてゴロゴロと横になっていても、三木さんは、最後までいつも元気だった。
都中の1時過ぎ、「じゃ、僕はそろそろ・・・・」と小声でつぶやきながら、立ち上がろうとすると、三木さんは不機嫌そうな顔をして、「もう帰るのかい?」と必ず聞いた。じつは、これが「あと1時間で帰っていいよ」という三木さんの合図だった。
そして、それからの1時間が貴重なお説教の時間になった。女の上手な扱い方から喜劇の未来まで、その時、その時によってテーマがちがっていたが、照れ屋のふだんの三木さんからは決して聞くことのできない「正論」が続いた。
三木さんに初めて話を聞いた日のことは、一生忘れられない。
インタビューを終え、銀座で飲んだ後、三木さんをご自宅に送るタクシーのなかで、僕は三木さんに激しい口調で叱られたのだ。
「大通りの横断歩道でいい」と言うのに、僕がしつこく自宅前まで送ると言うと、突然、車のなかで三木さんは怒ったのだ。
「うるせえな、俺がいいって言ってんだろ。降ろせよ。その先に横断歩道で!」
僕は、それまでの三木さんとはちがう、あまりの剣幕にたじろぎ、運転手にそう伝えると、三木さんは無言のままコートの襟を立て、憤然と車を降りていった。
僕を乗せた車は、そのまま少し進み、Uターンをすると、再び同じ道に戻った。
すると、さっき降り立ったところに、三木さんが、そのままの姿で立っていた。そして、僕が「あっ」と叫ぶ間もなく、車はスピードを上げ、通り過ぎようとしていた。
僕はあわてて、後ろを振り返った。小さくなった横断歩道の脇で、三木さんは、去り行く僕の車に向かって、手を振ってくれていた。
遠くなっていく三木さんの立ち姿に、僕は車のなかで体をねじりながら、何度も何度も頭を下げた。
三木さんのお棺の前で、若い新聞記者がマネージャーの前島達男さんに、質問をしていた。
「あの、お棺の上の刀はなんですか」
「守り刀だよ」
「三木さんの家に代々伝わっていたものですか?」
「そうじゃないよ、人が亡くなった時に、こうやって載せておくもんだよ」
三木さんがいまにも起きてきて、
「お前、そんなことも知らないの?」
と言いそうだった。
亡くなる10日前、三木さんと札幌のススキノで飲む約束になっていた。札幌で行われる日本劇作家大会のシンポジウムに、三木さんが出席することになっていたからだ。しかし、突然の風邪で三木さんが入院したという知らせが入った。
僕は「あっ、風邪じゃない」と思った。なぜなら、最初の「その先で降ろせ」事件のあった時の車中での三木さんとの会話を思い出したからである。
あの時も三木さんは風邪で入院し、退院した直後だった。僕が「風邪で大変でしたね」というと、三木さんはこう言った。
「風邪なんかで入院するかよ。本当のことを言うと、肝臓が悪くてな。面倒だから、風邪にしてあるだけだよ」

線香を立て、三木さんに長いお礼を言い、お棺を離れると、長男の小林のり一(かず)さんが「あの親父をよくあんなにしゃべらせましたね」と言ってくれた。
断っておくが、僕がしゃべらせたのでは断じてない。家ではガンコで偏屈な親父を演じ続けていた三木さんのことだ、きっと息子であるのり一に伝えたかったことを、僕に話したにちがいない。
一度、こんなことがあった。
ある晩、インタビューの終り頃、酔った勢いで、僕は、おそれ多くも、三木さんにこう言った。
「先生、僕がもう少し若かったら、先生の弟子のなって喜劇を勉強したかったな」
すると三木さんは、あの大きな目玉でジロッと僕のほうを見て、真面目な顔で言った。
「いまからでも、遅くないよ」と。
その時、僕には生意気にもわかったことがあった。
三木さんは、本当は、息子ののり一さんに、自分の持っている芸のすべてを教えたかったのにちがいないと。
先輩に敬礼!
僕は、師匠なし、弟子なしで、ずっとやってきたけどさ、その時その時に、師匠はいたような気がするね。
菊田一夫なんていう先生には、本当に世話になったと思うよ。いや、もちろん、いろいろなことはあったよ。だけどさ、あの先生に認められなかったら、ああはいい舞台を踏めなかったんじゃないかと思うし、いまだって、菊田先生の芝居を演出できるのは、そのおかげだよな。エノケンさんにも、かわいがってもらったね。
浅草のエノケンさんのオペレッタは、子供の時にみただけだけど、戦後のエノケンさんとは最後まで一緒にやれたような気がする。
いま思えば、舞台上でずいぶんエノケンさんを吹かしちゃったけど、普通の人なら怒鳴られるもんだろうけど、あの人は逆に喜んでくれた。
ああ、僕が若い頃っていうのは、喜劇が全盛期でね。エノケン、ロッパ、金語桜、森川信、シミキン、曾我廼家五郎八、渋谷天外・・・・。いい喜劇役者がたくさんいた時代だったね。いまはお笑いっていうとき、コントとか漫才の出来そこないみたいなものばっかりだろ。
よく、素(す)であんなことができるよな。地のまんまなんだろうけどさ、僕たちはなにかの役をやっていないと、テレビなんかに、まともに出られないよ。
いま、ビートたけしがテレビで司会やるんでも、なんかかぶりものをしたり、ヒゲ描いたりしているだろ。あれが正しいんだよ。だから、たけしはビートたけしと、北野武を自分のなかではっきりと分けているのがよくわかるよ。
そうだろ?最近は所ジョウジも理屈がわかってきて真似しているけど、かぶりものをしてたり、ヒゲ描いたりしてる時って、勝手におもしろいことを言ってるだろ。その役になれるからだ。やっぱり、そうでなくちゃいけないよ。
懐かしい喜劇の仲間たち
しかし、こうやって思い出してみると、シゲさんには負けるにしてもさ、僕も実に現役で長く生きてるね。
芸能界、演劇界で長く生きていくコツ? うん、一言では言えないけど、それだけ努力がいると思うね。僕がここまで役者としてやってこれたのは、偉そうに言えば、僕は自分を甘やかさなかったことだと思う。
たとえば、僕は流行語を流行(はや)らせても、大流行したらもうその言葉う使うことを自分で禁じた。たとえば、「パーッといきましょう、パーッと」だって、そうだよ。
あれが流行したらさ、会社のほうは、それこそ出る映画出る映画で、「パーッと」って言えっていうんだよ。僕は断固拒否したもの。
ああいう流行語は、いつ廃(すた)れるかわからないだろ。流行語が廃れると同時に、それを言ってるヤツまで古くなっちゃうんだよ。ああ、そりゃやるのは簡単だよ。やれば楽できるっていうこともわかっている。それになにより一時的にうんと儲かる。だけど、僕はやらなかった。
それから、基本的にはフリーの立場にいたこともよかったと思う。専属契約をしていないんだから、いろいろな仕事に出会えた。そこでまた、勉強だもの。
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