じじぃの「未解決ファイル_34_ヤモリ」

第178回 やさしい科学技術セミナー (主催:Japan Prize) 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=rCLZZmuMRUA&feature=relmfu
「ヤモリの足裏」の秘密をナノテクで実現 2005年9月2日 WIRED VISION
米国では自動車保険のマスコットという程度の存在だったヤモリが、それを超えた活躍を見せるかもしれない。このちっぽけな爬虫類が、強力接着シートの開発のカギを握る可能性があるのだ。
 「粘りつく指をした」(sticky-fingered)と言えば、盗癖のある人を罵る意味になるが、ヤモリに対しては適切な形容だ。ヤモリの足裏は繊毛に覆われていて、これがヤモリに、1本の指だけでどんなに滑りやすい垂直の壁面にでもへばりついていられるというすごい能力を与えている。
 米国のレンセラー工科大学とアクロン大学の研究チームは、ヤモリがへばりつく仕組みについての知識をもとに、強力な接着力を持つカーボンナノチューブのシートを作成した。この研究はこれからの接着剤の基礎を成すかもしれない。また今回のケースは、科学が自然を超えた事例でもある――ヤモリの足裏の繊毛の200倍もの接着力を備えるナノチューブ束の作成に成功したのだ。
 「これらの素材(ナノチューブ)がこれほど並外れている理由は、きわめて特異な構造を持っている点にある」と、研究チームを率いたアリ・ディノジワラ準教授は語る。「通常、その構造はわれわれの望む特性を得るのを妨げるが、ナノチューブを組み合わせると割合に欠点はなくなり、強さや働きが定まってくる」
 ヤモリの足に魅せられたのは、実はディノジワラ準教授のチームだけではない。2002年にあるチームがヤモリを研究し、この生き物が壁にへばりついていられる仕組みを発表している。このチームは別の素材を使ってヤモリの毛を人工的に再現し、ヤモリの接着力は化学的なものではなく、幾何学的な構造――ヤモリの足裏の繊毛の先端の大きさと形――に由来するものだと突き止めたのだ。
 ヤモリの足裏にはとても毛が多く、足1本に細かい剛毛が50万本も生えている。毛の長さは5万ナノメートルで、だいたいヒトの髪の毛の太さと同じくらいだ。それぞれの剛毛は何百本ものへら状のさらに細い毛へと枝分かれしており、それらの太さはわずか200ナノメートルとなっている。
 研究者らは、剛毛とへら状の毛の適切な配置のおかげで、ファンデルワールス力と呼ばれる分子間のある種の引力が生じ、ヤモリが壁にへばりついていられることを突き止めた。この力は、雪の結晶の形成やアクロバットのようなクモの動きなど、さまざまな現象を説明するのに使われてきた。
 ヤモリの繊毛のような接着構造を人工的に作成する試みでは、初めはフォトリソグラフィーという工程を通してプラスチックの柱を用いる方法が取られていた。ところがこの方法には限界があった。プラスチックの柱は比較的もろく、さらには、ヤモリの足裏の繊毛がナノスケールなのに対して、プラスチックの柱はミクロン(1ミクロンは1000ナノメートル)レベルという本質的な大きさの違いもあった。
 ディノジワラ準教授のチームが採用した、ナノチューブを束にしてヤモリの足を人工的に再現する(写真)方法は、かつてのプラスチックの柱を使う方法に比べると、力学的強度の面でもサイズの面でも優れている。ナノチューブは本物のヤモリの剛毛のサイズに近く、そのため同様のファンデルワールス力の特性を示すのだ。
 ディノジワラ準教授らのチームは、プラスチックの一種であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)にナノチューブを植え付けた。そうすることでナノチューブが固定されるとともに、土台の部分には柔軟性を持たせ、ヤモリの足と同じようにしならせて対象物の表面にチューブを密着させることができる。課題が1つあった――カーボンナノチューブの形成には摂氏800度という高温が必要だが、PMMAはそのような温度には耐えられないのだ。この問題を解決するのに、チームはナノチューブを高温に耐えられるシリコンウエハーの上で形成し、チューブを冷却してからPMMAの上に移すという方法をとった。
 「この研究の最も興味深い点は、このように本質的に異なる2つの素材――ナノチューブとPMMA――を一緒にして自然界のものを模倣したことにある」とディノジワラ準教授は語った。チームはこの研究成果を『ケミカル・コミュニケーションズ』誌に発表した。
 ディノジワラ準教授がナノチューブを用いて成功を収めたことで、微細な構造体が厳格にその形状を定めることで接着において大きな役割を果たせる事例がまた1つ示されたと、マサチューセッツ大学アマースト校のアルフレッド・クロスビー助教授(高分子科学・工学)は指摘した。「微細な形状を用いて接着をコントロールするというテーマは、非常に興味深い」とクロスビー助教授。
 ディノジワラ準教授らのチームは今後、より大きなナノチューブ――ここで「大きな」というのは、1平方センチメートルという規模だが――のシートに取り組む予定だ。実験室で成功すれば、将来的には現在使われているものよりも高度な接着力を提供することになり、真空の宇宙空間で利用できるかもしれない。宇宙飛行士たちはいつの日か、指の先端にナノチューブを備えて強化されたグローブで重要な装置を握りしめ、宇宙空間を漂うようなことになるかもしれない。
 仮に十分な接着力が得られれば、こうしたグローブは地球上でも活用できるだろう。空想の世界さながらに、壁をクモのように――いや、ヤモリのように――よじ登れるようになるかもしれない。
http://wiredvision.jp/archives/200509/2005090201.html
スタジオパーク 「超ハイテク繊維」の可能性 NHKブログ 2009年09月24日
【解説】稲塚キャスター
日本の「超ハイテクの繊維」を、自動車や家電製品などと融合させて、生活の中での新たな利用の可能性を探ろうという展示会が、東京都内で開かれています。今井解説委員とお伝えします。
Q1)どのような展示会ですか?
A1)超ハイテク繊維というと、例えば、炭素繊維が航空機の機体に使われるなど、工業などの分野で利用が進んでいます。ただ、もう少し、生活に身近なところでも、新しい利用の可能性があるのではないかということで、繊維業界が、日本の自動車や家電メーカー、大学の研究者などと連携して、今回の展示会を開いたのです。まずは、映像をごらんください。
▼ これは、笑う自動車です。まだ、模型の段階ですが、外側は繊維。「最大9倍に伸びて、すぐに戻る」という繊維です。伸縮性が非常に高いので、自然な微笑みに見えるのです。ほっぺもぷくっと膨らんで、かわいい。普段、車にクラクションを鳴らされると、威嚇されているような心境になりますが、このように、笑ってもらえると、なごやかになりますね。そのような狙いなのです。
▼ これは、「ふき取り虫」と名付けられた、床のホコリをふき取る掃除機です。周りを覆っているのは、「髪の毛の7500分の1の太さ」という、超極細の繊維でできた布です。センサーで、家具や壁をよけながら、ホコリを感知して動きます。細かい凹凸がたくさんあるので、従来の掃除機では取りきれなかった、細かいホコリや油までふき取ってくれ、掃除が終わると、充電器の上に戻って、自ら充電するそうです。
▼ こちらは、動く床ロボットです。ひとつひとつはタイルを想定したロボットで、それを覆っているのは、細かい金属の粒を織り込んで電気を通す機能をもたせた布です。上から足で踏むと、足の位置や体重移動の変化を、コンピュータに無線で知らせて、常に、足の位置が同じ場所にあるように、足元のロボットが動きます。つまり、上に乗っている人は、歩いても歩いても、同じ位置にいる。斜めに行っても、後ろに行っても同じです。何に使うかというと、周囲をプラネタリウムのような映像で覆うと、全身で体感するゲームができたり、火事などを想定した避難訓練ができたりするということです。
▼ こちらは、光を通すコンクリートです。中に、プラスチックを材料とする光ファイバー(つまり、光を通す繊維)が埋め込まれていて、その繊維によって、コンクリートの向こう側の光が透けてくる仕組みで、コンクリートの向こう側を人が通ると、その影が映し出されるのです。
▼ こちらは、顔の形をしたマスクです。高熱で加工できる特殊な不織布を使っていますので、自由に形をつくったり、模様を印刷したりできるのです。これは、チンパンジーの顔。こちらは、「理想的なバランスの美人顔」。これをつけると、誰でも、鼻から下は美人に見えるそうです。ちなみに、今回は、デザイン重視でつくったので、インフルエンザ予防の効果はないそうです。
▼ 最後ですが、これは膨らむテーブルクロスです。これも、極細(ごくぼそ)の繊維を使った布に、インクジェットで柄を印刷してあります。細かい繊維で作ってあるので、機密性が高いし、薄くて軽い。その性質を利用して、特殊なテーブルで下から空気をあてて、膨らましているのです。コーヒーなどを載せるのはちょっと心配ですが、心が安らぎます。癒しの効果がありますよね。
Q2)なぜ、こうした展示会が開かれたのですか?
A2)狙いは、ずばり、日本繊維、ものづくり日本の復活です。かつて、繊維というと、日本を代表する産業でした。しかし、90年代以降、中国などから安い繊維が大量に入り込み、国内の出荷額は、このようにピークの3分の1に減っています。さらに、不況による業績の悪化で、大手メーカーの間では、国内の工場を閉鎖したり生産を停止したりする動きも相次いでいます。実は、この展示会、2年前も試行的に開かれて、その時は、中小の繊維メーカーの素材が多かったのですが、こうした苦境を受けて、今回は、大手メーカーが、それぞれ世界に誇る、そして日本でつくっている最先端の素材を提供したのが大きな特徴です。異分野との連携で、日本での物づくり復活のタネを見つけたい。そのような、大手メーカーの切実な思いが表れていると言っていいでしょう。
Q3)ハイテク繊維と言えば、保温性の高い下着などを思い出しますが?
A3)大手繊維メーカーに言わせると、すでに世の中に広く出回っているものは、「少し前の技術」。今回、出展されているのが「他の国がしばらくは追いつけない最先端の技術」とのことです。例を、二つあげたいと思います。
▼一つ目は、「ナノ」、つまり、一メートルの10億分の1というレベルの、きわめて微細な加工技術を使って加工した繊維です。例えば、先ほど紹介した床拭き掃除機に使われた繊維がそれですが、一本の太さは700ナノメートル。これだけ細いと、一本一本の糸に、さまざまな機能をもった薬剤を練りこんだり、周りに塗ったりすることで、様々な機能を持たせることもできる。また、ふんわりして肌にやさしいし、細かいオウトツがあって摩擦力があります。実際、この摩擦の性質を利用して、履いて歩くと力が入って、おなか周りの脂肪を減らす「メタボリック対策パンツ」の開発も進められているそうです。
▼二つ目の技術は、先ほども紹介した電気を通す繊維です。このように、上から押すと、コンピュータが感知して反応します。この繊維をカーペットにすると、泥棒が入ったことがわかるし、服にすると、服がエアコンの機能を持ったりする。着ているだけで、血圧や体重をはかって健康管理をしてくれる服や靴なども将来的には考えられています。
Q4)実現できるのでしょうか?
A4)今回、展示されたものは、いずれも、まだアイディア段階です。ただ、この展示会は、東京に先立って、イタリアのミラノで開かれていて、その後、世界中から引き合いや問い合わせがきているということです。いろいろな可能性があるということです。日本の経済はまだまだ厳しい状態が続いていますので、せっかくの技術。すぐにではなくても、いずれ世界に展開するビジネスにつなげてほしい。そして、雇用の拡大につながればいいなと、期待したいと思います。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/200/26811.html
『トンデモない生き物たち』 白石拓 宝島社 2006年発行
天井を逆さにはうヤモリのナノテクノロジー
イモリとヤモリ、どちらが両生類でどちらがは虫類か。いつも混乱してしまいがちだが、そんなときは漢字を思い浮かべるのがよい。
イモリは「井守」と書き、ヤモリは「守宮」と書く。語源はそれぞれにいろいろあるだろうが、両生類は水中と陸上のはざまで暮らしているから、井戸を守るイモリが両生類、と覚えておけば忘れにくい。
確かに、まったくかけ離れた動物なのに、イモリとヤモリは名前もさることながら、形も似ている。だから、実物を見分けるときは足の指を数えたい。イモリは足の指が前が4本、後ろが5本なのに対してヤモリは前後とも5本ある。
足の指が1本多いからというわけではないが、ヤモリには生物界きっての離れ業(わざ)をもっている。それは、その足でどこにでもくっついて離れない能力だ。
ヤモリはトカゲの仲間で世界におよそ670種、日本にも10〜11種すんでいる。
ヤモリはすべりやすいガラスにもピタリと張りついて、平気で上っていく。それどころか天井に逆(さか)さにとりついて、ふつうに歩くこともできる。ヤモリがこのように物体にしっかりくっつくことができる理由は、足の裏にビッシリ生(は)えている極めて細い毛にある。
ヤモリの足の裏は、1本当たりおよそ50万本もの繊毛(せんもう)におおわれている。繊毛の太さは約0.05ミリメートル。人間の毛髪と同じぐらいだ。そして、各繊毛はさらに先がブラシのように、何百本ものへら状の毛に枝分かれしている。枝分かれした毛の太さは繊毛の250分の1、わずか0.0002ミリメートルしかない。これは単位を変えると200ナノメートルで、まさにナノテクノロジーの領域だ。
しかし、微細な毛は物体とくっつくのにどのように関係しているか?
ふつうに考えると、平らに磨かれた面なら、面と面を合わせたほうが接触面積が大きいように思える。しかし、非常に大きな倍率の顕微鏡で見ると、肉眼では平らに見えた面もデコボコだらけで、そんな面と面を合わせても、実際に2つが接触している総面積は、驚くほど小さい。それよりも、ヤモリの足裏のように、非常に微細な毛が無数に生えているほうが、物体に接する面積が大きく、密着度が高くなるのだ。
そして、接触している毛の先端と物体の間には、分子レベルの引力がはたらいており、それが両者をくっつける接着力のもとになっている。この分子レベルの力をファンデルワールス力という。
こうしたしくみで、ヤモリはガラスであれ、タイルであれ、木製の天井であれ、どこにでも強力にくっつく。微細な毛1本あたりの接着力は、これまで知られているどんな動物の接着力より、ゆうに10倍は強いとされる。
ヤモリは天井に張りついたとき、4本の足のそれも1本の指だけでも落ちることはない。計算上は、ヤモリ1匹で40キログラムの重さを支えられるというから、たいていの大人は天井のヤモリ2匹をつかんでぶら下がれることになる。

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どうでもいい、じじぃの日記。
9/24、NHK 「スタジオパーク 『超ハイテク繊維』の可能性」を観た。
「超ハイテクの繊維」を、自動車や家電製品などと融合させて、生活の中での新たな利用の可能性を探ろうという展示会が、東京都内で開かれた。
映像に、「笑う自動車」が出てきた。車の前、ライトの部分が目で、その下のボンネットの部分が口になっている。ニカッと笑い、口も伸び縮みする。
外からは「何でそうなるの!」の世界だ。伸び縮みする素材は「最大9倍に伸びて、すぐに戻る」という繊維でできているのだそうだ。
日本が誇る技術にナノテクノロジーがある。
スパイダーマン」はナノテクノロジーを駆使して活躍する?映画だ。
日本を救う切り札は「ヤモリマン」なのだ。