NHK100分de名著 折口信夫「古代研究」【NHK出版 日本放送協会】本の要約・まとめ【真夜中のZoom読書会】
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折口信夫
近代日本人の肖像 | 国立国会図書館
国文学者、民俗学者、歌人。
日本の古典、古代の民俗生活についての学問的成果は国文学、民俗学をはじめ、神道学、芸能史等、多方面にわたり、文献や資料を実感的に把握することを目指した独創的な内容を持ち、「折口学」とも称されている。主な著作として『古代研究』(1929-30)がある。
また歌人として、根岸短歌会、アララギに参加するが、大正13(1924)年反アララギ派を結成して、『日光』の創刊に関わった。創作の面においても多岐にわたり、歌集に『海やまのあひだ』(1925)、詩集に『古代感愛集』(1952)、小説に『死者の書』等がある。
https://www.ndl.go.jp/portrait/datas/6077/
すぐ忘れる日本人の精神構造史
【目次】
はじめに
序章 民俗学の視点で日本の歴史を見るということ
第1章 日本人のマインドは、縄文ではなく稲作から始まった
第2章 武家政権が起こした社会変化
第3章 信仰、道徳、芸能の形成
第4章 黒船来航、舶来好き日本人の真骨頂
第5章 敗戦、経済大国、そして凋落へ
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『すぐ忘れる日本人の精神構造史―民俗学の視点から日本を解剖』
新谷尚紀/著 さくら舎 2024年発行
生活が苦しくても「しかたがない」と我慢する、責任追及をせず問題点をふわっとさせたまま何となく進み、やがて忘れる――そんな日本人の思考や行動の傾向性は「稲作を土台に、律令制+荘園制+武家政権の時代」を経て培われてきたといえる。本書では日本の歴史の経歴、慣習の積み重ねを民俗学の視点から歴史を追跡することで、どうやってそのような日本人が育まれたのかを知り、これからの社会のあり方、日本人のあり方を考える。
序章 民俗学の視点で日本の歴史を見るということ より
民俗学って、いったい何?
生活の歴史の中の「伝承と変遷」、「原因と結果」を読み取る
柳田國男はフランス語のtradition populaireを「民間伝承」と翻訳し、その「民間伝承」を返球する学問として民俗学を創始しました。そして、その民俗学を深く理解し、協力して育てたのが折口信夫(1887~1953)です。
彼らの民俗学は多くの一般の人たちの生活の中のtradition(伝承)と、それと対(つい)をなすtransition(変遷)の、その両者をセットとして捉え、生活の変遷の動態の変わりにくいものと変わりやすいもの、その両方があることに注目する研究でした。つまり古代から現代まで長い日本人の生活の歴史の中で、何が変わり、また何が変わりにくく伝えられてきているのか、それを追跡しようとしたのです。
たとえば、古代から現代まで長い歴史の中に伝えられている衣食住の生活の歴史について、柳田の『木綿以前の事』(『定本 柳田國男集』第14巻(新装版)、筑摩書房、1982)を一読してみれば、文献だけの歴史学とは異なり、日本各地の民間伝承の中に生活の変遷を見出す視点とその方法とがあることがわかるでしょう。
都市やその近郊農村などの先進地域では、いち早く木綿が普及し、人々に肌ざわりの柔らかさと心地よさ、そしていろいろな模様に染めて着る楽しさを教えてくれました。その一方では糸くずの塵(ちり)をまき散らすようになり、湿気の多い島国では暑中の汗は木綿では水分を含みやすく不便でした。風通しのよいものといえば、木綿以前の麻布や麁麻布(あらあさぬの)、また栲布(たくぬの)や藤布などであったこと、そしてそれらがまだ日本各地の農村や山村には残っていることに注意しています。木綿以前の生活では、粗い布の着用で人々の葉だがいまより丈夫であっただろうといいます。そして、昔もいまも、人々の生活方法というのは絶えず変わってきているといっています。
そして、いまでは優美とされる女性の内股の歩き方は、着物が変化することで足がからまって裾をうまく捌(さば)けなくなってからのことである、桃山時代までは女性も外足でさっさと歩いていたといたといっています。男性の正座も、いまではよく修練された美風とされていますが、それはもともとは身分の低い者が上位の人の前で奉仕する姿勢であり、サムライの外敵警戒、臨時活動の準備のための姿勢であったといっています。
このように生活変遷の歴史について、文字記録や絵画資料に注目するとともに、日本各地に伝えられている民間伝承を資料として、それらの情報の比較という視点で読み解いています。
柳田の民俗学は、そうして日本に住む人たちの生活の歴史を、みずからがよく見定めて、その中に伝えられてきている先人たちの生活の知恵を自分たちのものとするということが大切だ、という学問でした。そこには、生活の歴史には必ず伝承と変遷とがあり、その過程ではすべて原因と結果があるという視点がありました。