じじぃの「チューリッヒの小鬼たち」

『グローバル恐慌』−−金融暴走時代の果てに 浜矩子 岩波書店 (一部抜粋しています)
3 金融が地球を一人歩きする時
チューリッヒの小鬼たち
「TUC(英国労働組合会議)が賃上げ要求の抑制を拒否したその時、チューリッヒの小鬼たち、そして他の金融センターの小鬼たちが、こぞってポンドの処分に入った。」
これはかっての英国首相、今は亡きハロルド・ウィルソンによる1964年の発言である。
この時、英国ポンドは為替市場で売り投機の波に襲われていた。ウィルソン発言にある労組の賃上げ抑制拒否行動で、ただでさえ「英国病」のレッテルを貼られるようになっていたイギリス経済の低迷がさらに深化する。そうみられてのポンド売りラッシュであった。
そのポンド売りの主役を演じたのが、ウィルソン氏言うところの「チューリッヒの小鬼たち」である。チューリッヒの小鬼たちとは誰か。なぜ、ここで、彼らの時代を振り返るのか。それは、彼らの子孫たちがグローバル恐慌に至る過程で見逃せない役割を果たして来たからである。
チューリッヒの小鬼たち」とは、要するにスイスの銀行家たちのことである。チューリッヒはスイスの都市であると同時に、国際金融の中心地だ。そこに陣取ってカネを動かす銀行家たちの投資行動のおかげで、ポンドが危機にさらされた。そのことに対する憤懣と苛立ちがウィルソン発言につながった。
小鬼たちはちまちましていて姑息な存在だ。度量が狭くて秘密主義だ。正々堂々と勝負しない。そんな奴らに翻弄されるのは誠に腹立たしい−−。「チューリッヒの小鬼たち」の一言には、そんなウィルソン氏の思いが込められていた。
実際に、スイスは徹底した銀行秘密主義の国である。透明性とか、説明責任などという言葉とはおよそ程遠い秘密主義のベールの中に、取引先情報を包み隠すことを旨として来た。そうすることで、世界の富裕層の資産運用を一手に引き受ける。それがスイス型バンキングのビジネス・モデルであった。それは基本的に今も変わらない。決して大見得を切ったり、派手な立ち回り方などすることはない。無言のうちに大きな利益を追求する。それがスイス型バンキングの真骨頂だ。
そのような小鬼たちの機敏な小回りによって、偉大なポンドが危機に陥る。このことがウィルソン氏の焦燥の発言につながった。

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タックス・ヘイブン ウィキペディア(Wikipedia) より
タックス・ヘイブン (英:tax haven、仏:paradis fiscal) とは、税金が免除される、もしくは著しく軽減される国・地域を指す。和訳から「租税回避地」とも呼ばれる。
ヘイブン(haven)は「避難所」の意。よくある間違いであるが、タックス・ヘブン(heaven:「税金天国」)ではない。ただし、フランス語では、paradis(天国、極楽)という言葉が用いられる。

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どうでもいい、じじぃの日記。
浜矩子著『グローバル恐慌』を一応、読んだ。あまり理解していないが。
4/5、NHK 海外ネットワーク 「金融規制を強化せよ・G20報告 長尾香里」を観た。
主要20ヵ国金融サミットがロンドンで行われている時、G20に反対しているデモの映像が流れた。
彼らのデモ隊の一部の人が銀行を襲っていた。今、ロンドンの失業率は6.5%である。ロンドンの金融街の店のほとんどが閉じられている。
今年の2月、最大手の銀行がタックス・ヘイブンの仕組みを悪用して顧客の資産をだまし取ったとして、最大手の銀行が営業停止になった。
今回の金融サミットの主な議題は脱税の温床になっているタックス・ヘイブンの撲滅宣言である。
スイスやカリブ海に浮かぶアンティグア・バーブーダタックス・ヘイブンの1つとしてやり玉に上がっていた。
タックス・ヘイブンに預けられている富裕層の資産は総額約11兆5000億ドル(約1130兆円)、脱税額は年約2550億ドル(約25兆円)にのぼる。そのほぼ3分の1がスイスに集中している。
米富裕層の資産隠しを助けていたスイスの金融最大手UBSなどがやり玉に上がっていた。ブラックリスト入りはなんとか免れたものの、これで金融機関が衰退しそうだと心配するスイスの市民があった。
世界的な金融危機で財政難に陥ったイギリスなどが、国際金融システムの透明性を高めるため、タックス・ヘイブンとみなされる国に規制を設ける構えだ。
チューリッヒの小鬼たち」も金融危機格差社会を演出している一つのなのかもしれない。