IBM Quantum System Two
Top 10 quantum computing companies globally in 2023
May 03, 2023 AI Magazine
No.1
IBM is leading the world in quantum computing. Since becoming the first to offer cloud-based quantum computing access, IBM is continuing to release new versions of its quantum computing technologies, and plans to release a 1,000-qubit chip, Condor, at the end of 2023.
https://aimagazine.com/articles/top-10-quantum-computing-companies-globally-in-2023
『2035年に生き残る企業、消える企業――世界最先端のテクノロジーを味方にする思考法』
山本康正/著 PHP研究所 2024年発行
世界のテクノロジーは、かつてない速度で進化しています。
2022年11月に登場したChatGPTのユーザー数は、公開からわずか5日で100万人を超え、瞬く間に世界中に広がりました。これはIT史上最速のスピードです。このブームに乗って、生成AIに必要な半導体を製造するエヌビディアの時価総額は、2024年6月、マイクロソフトやグーグル、アップルを抜き、約500兆円で、上場企業の時価総額において世界一となりました。
これまでIT業界を牽引してきたのはビッグテックのGAFAMが中心でした。
第1章 いま押さえておくべき最新テクノロジーの潮流 より
【量子コンピュータ】――「どんな問題でも速く計算できる」というわけではない
量子コンピュータも注目が高まっている分野です。
アメリカの調査会社CBインサイツによると、量子コンピュータ分野のスタートアップによる2023年のエクイティ調達(新株発行による資金調達)額は13億ドルで、過去最高となりました。
量子コンピュータというと、「ものすごく計算が速いコンピュータ」というイメージを持っている方が多いのではないかと思います。
私たちは普段使っているコンピュータ(量子コンピュータに対して「古典コンピュータ」と呼びます)が、0と1が並んだデジタルで情報を処理していることは、皆さん、ご存知だと思います。
この0や1の1つずつを「ビット(古典ビット)」と呼びます。コンピュータ(CPU)の性能として、16ブットや32ビットなどという数字を聞いたことがあると思いますが、例えば16ビットだと、0や1が16桁並んでいて、2の16乗(=6万5536)個の情報を表現である、というイメージです。
一方、量子コンピュータでは、1つずつのビット(量子ビット)に、0と1を重ね合わせることができます。デジタルではなく、アナログなのです。
そのため、16量子ビットだと、2の16乗個の状態を同時に計算し、重ね合わせた結果を出すことができます。
こうした特性があるため、理論的に、量子コンピュータのほうが古典コンピュータよりも速く解ける問題があります。
例えば、素因数分解です。
現在、広く使われている暗号は、古典コンピュータでは桁数の大きな数字の素因数分解に膨大な時間がかかり、事実上、解けないのと同じだということを利用しているので、量子コンピュータが実用化されると、無効化されることになります。そのため、次世代の暗号も開発されています。
他には、分子の挙動のシミュレートなども、量子コンピュータのほうが速く計算できます。
しかし、どんな問題でも、量子コンピュータのほうが古典コンピュータよりも速く解けるわけではありません。
エラー訂正や量子ビットの実現など、実用化へのハードルはまだ高い
特殊な問題についてとはいえ、量子コンピュータが量子超越性を実現してから5年ほど経つのに、なかなか実用化が進んでいないのかは、越えなければならない技術的なハードルがまだまだあるからです。
その1つが、エラーが発生することです。
デジタルと違い、アナログコンピュータには、ノイズに弱いという弱点があります。量子コンピュータもアナログコンピュータなので、ノイズに弱く、エラーが多く発生します。そこで、そのエラーを訂正する必要があるのですが、このエラー訂正の技術が未確立なのです。
現在、一部で実用化されるなどして、研究が進んでいるのは、「ノイズあり小中規模量子コンピュータ(NISQ)」と呼ばれるもので、古典コンピュータを併用するなどしてエラーに対応しています。
そして、現状では、古典コンピュータでは事足りない、NISQならではの実用的な用途は見つかっていません。
また、量子ビットをハードウェアに実現する方法としてさまざまなものの研究が進められていますが、超伝導方式だとほぼ絶対0度(摂氏マイナス273.15度)まで冷却しなければならないなど、実用化に向けての課題が多く残っています。
ただ、何かしからかの状況が起こって、量子コンピュータでなければ解けない問題の重要性が高まれば、ブレイクスルーが起きる可能性はあるかもしれません。
新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受けて、mRNAワクチンが急ピッチで開発・生産されたことは記憶に新しいでしょう。
mRNAワクチンの研究開発はコロナ禍で突然始まったものではなく、コンセプト自体は1990年代からありました。2010年代には臨床試験が行われる段階、つまり、実用化まであと一歩の段階にありました。それを最終的に後押ししたのが、新型コロナウイルスだったのです。
量子コンピュータについても、長年の研究の蓄積が日の目を見るかどうかは、未知数です。