創薬AI「アルファフォールド3」 グーグルが新薬開発を変える!?
2024.05.09 テレ東BIZ
数十年かかることも多くある薬の開発期間が短縮される技術を、アメリカのグーグルが8日に発表しました。
それが「AlphaFold3」と呼ばれるAI=人工知能です。「タンパク質、DNA、RNA、リガンドなどの構造とそれらがどのように相互作用するかを正確に予測することで、生物学の世界と創薬に対する私たちの理解を変えることができる」としている。新薬開発の現場は変わるのでしょうか。
https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/wbs/newsl/post_295977
『2035年に生き残る企業、消える企業――世界最先端のテクノロジーを味方にする思考法』
山本康正/著 PHP研究所 2024年発行
世界のテクノロジーは、かつてない速度で進化しています。
2022年11月に登場したChatGPTのユーザー数は、公開からわずか5日で100万人を超え、瞬く間に世界中に広がりました。これはIT史上最速のスピードです。このブームに乗って、生成AIに必要な半導体を製造するエヌビディアの時価総額は、2024年6月、マイクロソフトやグーグル、アップルを抜き、約500兆円で、上場企業の時価総額において世界一となりました。
これまでIT業界を牽引してきたのはビッグテックのGAFAMが中心でした。
第1章 いま押さえておくべき最新テクノロジーの潮流 より
【創薬】――生成AIの活用で新薬が次々と!?
ここまでは、最先端テクノロジーの中でも、最も大きなトレンドの渦(うず)になっている生成AIを中心に述べてきました。
生成AIの急速な進化は、他の業界にも多大な影響を与えています。例えば、創薬の領域です。
グーグル・ディープマインド(Google DeepMind)が開発した「アルファフォールド(AlphaFold)」は、高い予測精度を誇る生成AIとして、創薬の世界に革命をもたらしました。2018年にバージョン1、2020年にバージョン2が発表されています。
数多くのアミノ酸がつながってできている、体内に存在するタンパク質は、自然と折りたたまれて、複雑な形をしています。アミノ酸の配列がわかっていても、立体的にどうなっているかがわからなければ、薬による化学反応を起こすには不十分です。
3次元構造を分析するために、従来は多大なコストがかかっていたのですが、大量のデータを処理・分析できるアルファフォールドの登場によって、高精度で予想できるようになりました。そのため、病気の治療薬の開発、薬物の標的の特定など、医療業界のさまざまな領域に多大な貢献を果たしたのです。
生成AIの進歩によって、医療の可能性が一気に引き上げられたといっても過言ではないでしょう。
グーグル・ディープマインドは、2024年には後継モデルにあたる「アルファフォールド3」を発表。さらに精度と解析速度を向上させただけでなく、タンパク質に限定されていた予測の範囲を、タンパク質と他の分子の相互作用にまで広げています。
生成AIの高度な分析力をもとにした分子構造の予測や組み合わせの提案は、創薬以外の領域でも活用できます。既存の素材を組み合わせることによって、プラスチックよりも強固で安全性が高く、環境に優しいエコフレンドリーな新素材が開発される。そんな日もそう遠くないでしょう。
研究者たちが何年もかけて必死に試行錯誤してきたことが、生成AIの能力によって、短時間、ローコストでできるようになるでしょう。
現在はグーグル・ディープマインドの独走状態に見えますが、今後材料科学の領域では、各素材の特性を学習した独自のAIの開発が進んでいくかもしれません。