Craziest Red Cards given by VAR
deliberate fouls will still incur a red card.
Denying a goalscoring opportunity: Red card rule relaxed by IFAB
14 April 2016 BBC
Players who commit a foul to deny a goalscoring opportunity will no longer automatically be sent off, football's rule-making body has confirmed.
https://www.bbc.com/sport/football/36047575
『<絶望>の生態学――軟弱なサルはいかにして最悪の「死神」になったか』
山田 俊弘/著 講談社 2023年発行
人間は、意図せず大量絶滅を引き起こそうとしている。その絶望的状況が明らかになってきた。生物多様性の喪失と大量絶滅の先に、希望はあるか? 絶望的な未来を回避する術はあるか?――その答えは生態学が教えてくれる。
第6章 ラッコが消えれば海も死ぬ より
本当は恐いリベット仮説
リベット仮説は、アメリカの生物学者であるポールとアンのエーリック夫妻により提唱されました。2人の著作には、”リベット抜き”という特殊な架空の職業に就く男が登場します。ここでは、少し私流にアレンジを加えながら、彼らの考えを紹介しましょう。
リベットとは、飛行機の翼を本体に固定するための金属製の部材です。カシメといわれる特別な工法で翼を固定する際に、リベットを打ち込みます。カシメは、半永久的で高い強度の締結ができる手軽な工法で、古くから航空機の翼の固定に用いられてきました。
冗長性仮説
もうひとつのモデルが冗長性仮説です。このアイデアでは、種(のもつニッチ)は金属製のリベットのように冗長性(融通がきくということ)に乏しいものではなく、ある程度の柔軟性があると考えます。加えて、種間で少しずつニッチが重複しているとも考えます。
先ほど、ニッチを「ひとつの種の生存に必要な環境と資源のセット」と紹介しました。アメリカの生態学者、ジョセフ・コネルはニッチの概念をさらに”基本ニッチ”と”実現ニッチ”の2つに分けています。ニッチを二分する彼の考え方は冗長性仮説を理解するのに役立ちます。
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リベット仮説では、ある種の絶滅により空いた”穴”が、生き残った種に埋められることはありません(一度引き抜かれたリベットの穴はふさがれることなく残ります)。対して冗長性仮説では、残りの種により埋め合わせられる(こともある)と考えます。
要(かなめ)のポジション
サッカーのたとえを用いて冗長性仮説を説明しましょう。サッカーは1チーム11人で戦うスポーツです。スポーツですからルールがありますが、試合中に悪質なルール違反を犯した選手は、審判から退場を宣告されることがあります。退場者を出したチームは、残りの時間を10人で戦わなければならず、戦況は厳しくなります。
サッカーの試合中、一方のチームの右サイドバックの選手が退場を言い渡されてしまいました。この退場は戦況に響きます。なぜならばこのポジションは、敵チームのサイドアタックを防ぐための要だからです。相手チームはがら空きとなった右サイドを突き、攻め込んでくるにちがいありません。ヤバい状況です。
この状況で、退場者を出したチームの選手は、「あそこは退場者した選手が受け持っていた場所だから、私が関知するところではない」などと考え、知らんプリをすることはないでしょう。残った選手が少しずつ担当エリアを広げ――たとえばセンターバックの選手が右サイドまで守備範囲を広げたりして――、退場した選手の穴を埋めようとするはずです。
冗長性仮説は、絶滅種を出してしまった生態系は、その絶滅により生じる機能的な穴が(退場者を出したサッカーチームのごとく)残りの種で埋められるという考えです。この考えには冗長性があり、複数種のニッチが多少重なっているという前提があります。生き残った種による絶滅種のニッチの穴埋めがうまくいっている限りは、少数の種が絶滅したとしても、生態系の機能にはほとんど影響がありません。
ありゃありゃ、退場者を出したチームは素行が悪いようです。また1人、また1人と退場者を出し続けています。このチームはどうなるでしょうか? 残った選手では穴を埋めきれなくなり、崩壊してしまうことが容易に想像できます。
冗長性仮説によれば、生態系の機能的な低下がはじまるのは、残りの種ではバックアップできなくなるほど種の絶滅が進んだときです。
もうひとつ重要な点があります。サッカーチームには、ほかの選手が守備範囲を広げるだけではどうしても埋められないポジションがひとつあるのです。11人の中で唯一手を使うことが許されたゴールキーパーです。ゴールキーパーの退場は、直ちにチームの崩壊を招きます。生態系にも、サッカーチームにおけるゴールキーパーのように、機能的な代替の利かない(ニッチの穴埋めができない)種があるかもしれません。
冗長性仮説では、もしその種の絶滅が起これば、即座に生態系の機能の劣化がはじまると予想します。この予想を裏づける事例を次節で紹介しましょう。
以上の考察から、「機能が落ちないのだから、多少絶滅してもかまわない」という考えの誤りに気づいたはずです。たしかにある一種の絶滅が、直ちに生態系の機能低下や崩壊を招くことは(一部の例外を除けば)ないでしょう。しかし、絶滅種が増えれば、機能低下の崩壊は避けられません。人間活動を原因とする絶滅は一種たりとも許されないことが、最善の策だということです。