じじぃの「スポーツ国家アメリカ・第10章・大リーグとWBCの課題!アメリカの雑学」

2023WBC 侍ジャパン 全7試合ハイライト

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=oqbeABHKbxA


Japan's Ohtani strikes out Trout to seal World Baseball Classic win

2023年3月22日 Reuters
(Reuters) -Shohei Ohtani struck out Mike Trout in a showdown between two of the game's best players to seal Japan's 3-2 victory over the United States in a riveting World Baseball Classic (WBC) final at Miami's LoanDepot Park on Tuesday.
Baseball is the United States' national pastime but Japan's win over the defending WBC champions means they have won three of five editions of the global showcase.
https://jp.reuters.com/article/life/sports/japans-ohtani-strikes-out-trout-to-seal-world-baseball-classic-win-idUSKBN2VO05X/

『スポーツ国家アメリカ』

鈴木透/著 中央公論新社 2018年発行

自由と平等の理念を持つ、移民の国アメリカ。全米がスーパーボウルに熱狂するなど、スポーツが大きな存在感を持つ。野球をはじめとするアメリカ発祥の競技は、社会や文化とどう関係しているか。人種や性、地域社会の問題にアスリートたちはどう向き合ってきたか。大リーグの選手獲得方法やトランプ大統領とプロレスの関係は、現代アメリカの何を象徴しているのか。スポーツから見えてくる、超大国の成り立ちと現在。

第4部 スポーツと社会の新たな共振 第10章 アメリカ型競技の孤立主義パックス・アメリカーナ より

野球の国際化とWBCの課題

冷戦の終結アメリカ独特の国際感覚を活性化し、それを反映するスポーツ孤立主義がより巧妙さを増しているのではないかという懸念は、近年の野球の国際化にもつきまとっている。2006年から大リーグ機構(MLB)と選手会が主催しているワールドベースボールクラシックWBC)にそれは顕著に表れている。

WBCの誕生の背景に、大リーグでの外国人選手の目覚ましい増加と活躍があったことは確かである。また、これを機に野球を世界的に普及させようと大リーグが考え、それまでプロ選手が参加する真の意味でのワールドカップが野球界には存在しなかった状況を是正ししようと考えたのも間違いない。だが、スタート時点でのWBCは、国際大会としては数多くの問題を抱えていた。

まず、開催時期がシーズン開幕直前の3月に設定されたため、現役大リーガーの多くが参加を辞退した。開幕前にピークを持っていくように調整するのは、高額の年俸で所属チームと契約している彼らには気が進まなかった。シーズンで調子を落としたり、WBCでけがをしてしまえば、年俸に響きかねないからだ。WBCの一次ラウンドはアメリカ以外の場所で行われたが、それ以降はアメリカで行われ、日程的にもアメリカに有利だったにもかかわらず、アメリカ代表はメジャーリーグオールスターとは程遠い陣容となった。

さらに、審判の大半がアメリカのマイナーリーグで審判で占められ、二次ランドでの日本対アメリカの試合でも、球審アメリカ人が務めた。サッカーの国際試合では、判定の公平性を担保するために、対戦国以外から審判団を出すのが恒例だが、国際試合では当たり前の慣行すら守られていなかったのだ。実際、この試合の球審ボブ・ディヴィッドソンが、プレーを一番近くで見ていた塁審の判定を覆して日本側に不利な判定を下したのをご記憶の方も多いだろう。

WBCは、中立的な審判団の下、真剣勝負で真の世界一を決めるというコンセプトからはかけ離れていた。そもそも、特定の国のプロスポーツリーグとその選手会が世界大会を仕切るという構図そのものがいびつだ。収益の配分をめぐっても、WBCは当初から大リーグ側と諸外国との間で対立が絶えなかった。野球という競技を本当に国際化したいのなら、大会運営を国際基準に近づける努力がもっと必要だったはずだ。それが半ば放棄された形での開催は、大リーグがさらに外国人選手を発掘するためのイベントなのかと疑われても致し方なかろう。

その後のWBCではいくつかの改革が行われているが、依然として準決勝以降はアメリカ開催で、大リーグ所属の外国人選手が出身国に分かれて戦う。シーズン開幕前のプレ大会のコンセプトが強い。あくまでも大リーグを頂点とする秩序を前提に、その都合を最優先させる中で開催される国際試合は、アメリカ独特の国際感覚の域を出るものとはいえまい。