じじぃの「磁気冷凍・磁性体の状態変化で冷蔵庫を冷やすんです?夢の発明」

フロンガスもコンプレッサーも使わず熱をコントロール、磁石のヒートポンプ!~磁気で熱をコントロールできるエントロピクス材料を開発~【産総研公式】

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=AnSbvuX4OEA

「磁気冷凍」の仕組み


「磁気冷凍」 イノベーションは5年後にも!?


5年後には「日本製冷蔵庫」が世界を席捲?…「冷やすメカニズム」を根底から変える「磁気冷凍」の凄い技術

2023.02.24 深川峻太郎,ブルーバックス編集部

「いま、メーカーと一緒に開発を進めているところですが、なにしろ従来の冷蔵庫とは発想がまったく違うので、解決すべき課題がたくさんあります。磁性体をどのように搭載すれば効率よく熱交換できるか、に始まり、そもそも冷凍機の形は何がベストなのかも、まだわからない状況です」
藤田麻哉(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 材料・化学領域 磁性粉末冶金研究センター エントロピクス材料チーム)さんはそう答えたあと、言葉に力を込めた。

「ただ、いまはSDGsを含めて環境問題への社会的な要請もありますから、10年もかけたくはありません。フロン削減や温暖化防止は政治的にも大きなテーマなので、追い風も吹いています。5年後ぐらいには、市場に認知されるものを具体的な形で示したいですね」
https://gendai.media/articles/-/106193?page=4

『あっぱれ!日本の新発明』

ブルーバックス探検隊/著 ブルーバックス 2024年発行

第1章 冷やすメカニズムを根底から変える!「磁気冷凍」という革命 より

コラム① そもそも、なぜ冷えるのか

「アルコール大丈夫ですか?」「ちょっとヒヤッとしますよ」――新型コロナウイルスのワクチン接種会場で、こんなふうにヒヤッとする経験をした読者は多いだろう。

じつは冷蔵庫が冷える原理も、これと変わらない。まるで別次元のことのように思えるが、とどのつまり、脱脂綿が含んだ液体のアルコールが肌に触れ、蒸発して気体になるときに肌から熱を奪うことで「ヒヤッとする」のと同じしくみを、冷蔵庫も利用しているのである。

水でも鉄でも「物質」と呼べるものは、固体・液体・気体という3つの状態のどれかにある。水でいえば、氷か、水か、水蒸気のどれかだ。それぞれの状態はそれなりに”安定”しているので、たとえば液体から気体に蒸発するときには、”よっこいしょ”とジャンプしなくてはならない(これを相転移という)。このジャンプをするのに、エネルギーを必要とするのだ。人間も、ゆっくり座った状態から立ち上がるさいには、”よっこいしょ”と力を入れる必要があるのと似ている。

いま普及している、われわれの家庭にある冷蔵庫の中には、「冷媒」なるものが入っている。おもに水素とフッ素と炭素の化合物(代替フロン)で、この冷媒が容器の中で、相転移を繰り返すことによって、冷蔵庫は冷えている。具体的には、こういうことだ。

①コンプレッサーによって気体の冷媒が圧縮されて、高温・高圧となる
コンデンサーに送られて熱を放出(冷蔵庫の背面から放熱する)し、液体になる
③液体になった冷媒は、こんどは蒸発器で圧力を急に下げられて蒸発し、気体になる

最後の気体になるときに、周りの熱を奪うために庫内が「ヒヤッとする」。この①~③のプロセスを繰り返すことで、冷蔵庫は冷えるのだ。

急に圧力が下がると、物質を液体にとどめておく力が下がるので、蒸発しやすくなる。富士山の上ではカップ麺のお湯が低い温度でも沸騰する、聞いたことがあるかもしれない。圧力が下がって物質が膨脹する。つまり空間が広がると、立ち上がって動き回りたくなる、というイメージだろうか。しかし、ある程度まで蒸発して気体になったら、落ち着いてしまう(それ以上は蒸発しなくなる)ので、また圧縮して放熱し、液体に戻す、というプロセスが必要になるのだ。

この章で紹介した新発明「磁気冷凍」では、冷蔵庫で使う冷媒を、代替フロンから磁石(磁性体)に置き換える。これにより、液体⇔気体という状態変化の代わりに、強磁性体⇔常磁性体という状態変化が起こり、強い磁石から弱い磁石に変化するときに、”よっこいしょ”と周りから熱を奪う。これを利用して、冷やすのだ。

冷媒を膨脹・圧縮させる代わりに、外から磁石を近づけたり離したりして磁場を変化させるプロセスを繰り返すことで冷やす。これが磁気冷凍のしくみである。うまいこと、同じような温度で”よっこいしょ”してくれる材料(磁性体)を組み合わせることができれば、新世代の冷蔵庫が登場する日も近いかもしれない。

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じじぃの日記。

ブルーバックス探検隊著『あっぱれ!日本の新発明』という本に「コラム① そもそも、なぜ冷えるのか」があった。

エントロピー
エントロピーとは物理学の言葉で、「無秩序の度合い」を示す量のことだ。「無秩序な状態の度合い(=乱雑さ)」を定量的に表す概念で、無秩序なほどその値が高く、秩序が保たれているほど低い値となる。

キュリー温度
キュリー温度は強磁性常磁性相転移が起こる温度のこと。

キュリー温度を超えて電子がバラバラになった常磁性体は、磁場を失い、その代わり増加したエントロピーを吸収する。この現象を「磁気熱量効果」という。
   
現在、世界の電力消費の25~30%が冷却に使われていると言われるほど、熱に関する問題がさまざまな形で顕在化してきています。熱量効果を利用すると高効率な冷却などの熱制御を実現できるので、熱問題の解決に繋がります。しかしながら、実用に供されている熱量効果材料はほとんどなく、大きな熱量効果を示す固体材料の開発が求められていました。
本研究では、NdCu3Fe4O12が、室温付近でのサイト間電荷移動1次相転移に起因する磁気エントロピーの変化により、巨大な潜熱が生じることを見出しました。
NdCu3Fe4O12では、圧力を加えることでこの巨大な潜熱のほぼ全てを効率的に蓄熱/放熱して利用できます。実験では、圧力熱量効果により5.1 kbar (510 MPa) の圧力を加えることで約13.7 ℃の大きな断熱温度変化を達成できることが見積もられました。このような材料を使うことで、環境に優しい高効率な新しい冷却システムを構築することが可能となります。
https://j-parc.jp/c/press-release/2021/03/25000670.html

後5年ぐらいしたら、冷蔵庫の冷却システムが一変するかもしれないそうだ。