じじぃの「科学夜話・ホルミウム・磁気冷凍・水素を作り出せ!サイエンスゼロ」

磁石がモノを冷やす!「磁気冷凍」で水素を液化

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=DCCXyyGx-pE

希土類ホルミウム金属Hoに弱磁場をかけた際のエントロピー変化

小さな磁場変化だけで大きな磁気冷凍効果が得られる現象を発見

2021.02.19 国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)
NIMSは、液体水素の輸送ロス・貯蔵ロスを低減するために有効と期待される極低温における磁気冷凍技術において、永久磁石を用いた小さな磁場変化だけで大きな冷却作用が得られる現象を発見しました。
【概要】
1.NIMSは、液体水素の輸送ロス・貯蔵ロスを低減するために有効と期待される極低温における磁気冷凍技術において、永久磁石を用いた小さな磁場変化だけで大きな冷却作用が得られる現象を発見しました。

ホルミウム金属のメタ磁性転移現象を用いることで、従来法より磁場変化量当たりで1桁程度大きな磁気熱量効果を得ることに成功しました。本成果は、永久磁石を用いた効率的な極低温磁気冷凍の実現に向けた新たな選択肢を示したものであり、低コストでコンパクトな水素液化・貯蔵システムへの応用が期待されます。

2.カーボンニュートラルに向けて、クリーンエネルギーである水素を最も高密度に貯蔵できる液体水素の保管・輸送技術の開発が求められています。
特に、水素が液体になる-253℃という極めて低温に保持する冷却技術が鍵を握りますが、現状のガス圧縮・膨張サイクルによる冷却法は小規模になるほど効率が低くなります。
3.今回NIMSは、わずかな磁場変化で磁性体の磁気モーメントの向きが急激に変化するメタ磁性転移の特徴に着目しました。
本研究において、永久磁石で発生可能な程度の弱い磁場でメタ磁性転移を起こすホルミウム金属を用いてエントロピー変化を詳細に調べた結果、わずかな磁場変化だけで、従来の磁気冷凍材料より磁場変化量当たり1桁程度の大きな磁気熱量効果が得られることを見出しました。さらに、今回見出した相転移は、水素の沸点 (-253℃) 付近から高温側の広い温度範囲で起きることが分かりました。従来は特定温度での磁気熱量効果の発現に特化した磁気冷凍材料を選んで用いることが一般的でしたが、この現象を利用すれば、1つの磁気冷凍材料だけで様々な動作温度において効率的な冷却作用を得ることができます。
https://www.nims.go.jp/news/press/2021/02/202102190.html

サイエンスZERO 「脱炭素社会の切り札! 水素エネルギー最前線」

2021年5月16日 NHK Eテレ
【司会】小島瑠璃子、森田洋平 【ゲスト】西宮伸幸(日本大学理工学部 特任教授)
「脱炭素社会」の切り札、水素エネルギー。
使用したときにCO2を排出しない夢のエネルギーだが、効率的に貯蔵・運搬するためには液体にする必要がある。だが、水素が液体になる温度は-253℃なので、膨大な電力がかかるという難問が。その解決のカギとなる日本発の技術「磁気冷凍」が実用化間近。
さらにAIを駆使した材料探索で、誰も予想していなかった化合物が発見され、効率が飛躍的に上がろうとしている。最前線に迫る!
https://www.nhk.jp/p/zero/ts/XK5VKV7V98/episode/te/MZG5WZ3Y87/

『SUPERサイエンス レアメタルレアアースの驚くべき能力』

齋藤勝裕/著 シーアンドアール研究所 2019年発行
レアメタルレアアースは最先端科学分野において強力な能力を持つ元素で、発光、発色、レーザー発振、磁性発現などの性質をもつことから現代社会に欠かせない貴重な元素です。
私たちの身の周りにあるスマホはもちろん、パソコン、テレビや車や医療機器などにもレアメタルが使われています。本書は、レアアースレアメタルの違いや性質、仕組みをイラスト入りで科学的に解説します。

Chapter.8 レアアースの個性 より

原子番号67 ホルミウム Ho

・地殻中での存在量 1.4ppm
・性質 比重:8.795、融点:1474℃、沸点:2696℃、銀白色
・用途
 ホルミウムレーザー・・・YAGレーザーにホルミウムを添加したものはホルミウムレーザーと呼ばれ。外科手術に用いられる。患部の切開と止血が同時に行うことができる。
 磁極片・・・ホルミウムは希土類中で最大の磁気モーメントを持つ。磁石にホルミウムの金属片を接着すると、ホルミウム原子の磁気モーメントが磁場の向きに並び、磁力線が束ねられて磁力が強くなる。このような金属片を磁極片という。