じじぃの「科学・地球_471_量子的世界像・粒子はなぜじっとしていないのですか」

Particle Detectors at CERN's LHC | What the Physics

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=lobcJ6NtB3s

井戸型ポテンシャル

   

なぜ電子が非局在化すると安定化するの?【化学者だって数学するっつーの!: 井戸型ポテンシャルと曲率】

2020/8/17 Chem-Station
●一次元井戸型ポテンシャルとはどんな系ですか?
ここで井戸の横幅が広げることを考えます。井戸が広がると、井戸の両端を結ぶ際により緩やかなカーブの曲線で両端を繋げられるようになります。このとき、曲線のカーブ(曲率)は分子の運動エネルギーに相当するため、井戸が広がるというただそれだけの効果によって、電子の運動エネルギーが小さくなり、電子は安定化できるのです。
https://www.chem-station.com/blog/2020/08/chemmath3.html

『量子的世界像 101の新知識』

ケネス・フォード/著、青木薫塩原通緒/訳 ブルーバックス 2014年発行

XⅡ 波と確率 より

粒子はなぜ1ヵ所にじっとしていることができないのですか

波動関数はある一点で定義できる特性――波の値と波の曲がりかた――を持っているが、波そのものを一点に押し込めることはできない。波はその本質からして、ある程度の空間領域に広がっている。実際、波を小さな領域に押し込めるのは難しいのだ。
たとえば、透過不可能な2枚の壁にはさまれて、そのあいだを行ったり来たりしている粒子を考えてみよう(図.画像参照)。

壁が互いに近寄ってくると、粒子の運動領域はますます狭まって、はさまれている粒子の波長は波長はどんどん短くなる。ド・ブロイの式にしたがえば、波長が短くなるということは、粒子の運動量が大きくなる。つまり粒子は境界内に押し込まれれば、押し込まれるほど、多くのエネルギーを獲得する。

これをまったく見動きできなくなるまで締めつけるには、無限のエネルギーが必要だ。矛盾するようだが、粒子は身動きできないのに、無限の運動エネルギーを持つことになる。
物質が、現にそれが持っているような密度(や質感や色)を持っているのは、量子物理学が成り立っているからである。古典的な世界では、電子がエネルギーを放射しながら、らせんを描いて陽子やその他の原子核が飛び込んでいき、最後にはすべての物質が小さな塊と化して、すべてのエネルギーが電磁放射として宇宙に流れ込んでいくだろう。しかし実際は、波を支配している量子規則により、電子は「大きな」距離(といっても、1ナノメートルの何分の1かだが)にわたって広がる運動状態に落ち着く。項目67(電子の波動性と原子の大きさはどう関係していなすか)で説明したように、物質の波動性は原子の大きさを定めてもいるのだ。

古典物理学から量子物理学への移行は、おもにナノメートルの領域で起こる。量子効果は、大きな分子やほかの原子の集合体に明白にあらわれて、個々の原子では顕著となり、さらに深い原子以下の領域では、もはや不可欠なものとなる。現代の量子物理学研究の多くが注目しているものも、この深い領域である。最も小さい世界で何が起きているのかを物理学者はつきとめたいのだ。しかし物質の波動性が、小さな世界を見ることを難しくする。
一般に、波を使ったものを「見る」とき、その波の波長よりずっと小さいものはみることができない。この原則が、光学顕微鏡の限界を定め、光学顕微鏡では見えないものを電子顕微鏡で見ることを可能にしている。電子顕微鏡の電子の波長は、可視光の波長よりずっと短いからだ。波長が短いほど小さいものが見えるというこの現象を理解するには、水面から突き出ているポールを考えてみればいい。波を見てもポールについての詳しい情報はえられない。それは波の波長がポールの直径よりもずっと大きいからである。しかし、単にポールを見れば、ポールの詳細がよくわかる。つまり見るということは、ポールの直径よりもずっと短い波長の光を使っているということだからだ。

粒子加速器1920年代に利用が始まって、2010年に大型ハドロン衝突型加速器で(いまのところ)頂点に達した。
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そうなった理由のひとつは、加速される粒子の波長をますます短くして、ますます小さい小さい空間領域を「見られる」ようにするためだ。たとえばLHCで使われている7Tevの陽子の波長は、約2x10-19メートルで、原子核の大きさよりずっと小さい。それどころか、陽子そのものの5000分の1にもなる小ささだ。
そんなわけで、物質に波動性があるために、小さな距離を探るにはさらに多くのエネルギーが必要なのである。粒子はおいそれとは姿を見せてくれない。結果として、矛盾するようだが、物理学界の最大の装置は自然界の最小の部分を調べるために使われている。もちろん、高エネルギーをつくりだすのは、波長を短くするためだけではない。さまざまな重い新粒子をつくるためには、その質量に相当するエネルギーそのものが必要だ。高エネルギー物理学の根源にはド・ブロイのλ=h/pと、アインシュタインのE=mc2という2つのシンプルな式が横たわっているのである。