映画『護られなかった者たちへ』本予告(60秒)
映画『護られなかった者たちへ』あらすじ・キャストを解説!傑作ミステリーを映画化 【原作ネタバレ】
2021年5月20日 ciatr
中山七里による傑作ミステリー小説『護られなかった者たちへ』の実写映画化が発表されました。原作となるのは、東日本大震災から数年が経った仙台を舞台にくり広げられる、連続殺人事件の謎を追った社会派ミステリー小説。
https://ciatr.jp/topics/314858#:~:text=%E6%98%A0%E7%94%BB%E3%80%8E%E8%AD%B7%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%E8%80%85%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%B8%E3%80%8F%E3%81%AE%E3%81%82%E3%82%89%E3%81%99%E3%81%98,-%C2%A92021%E6%98%A0%E7%94%BB&text=%E6%9D%B1%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%A4%A7%E9%9C%87%E7%81%BD%E3%81%8B%E3%82%899%E5%B9%B4,%E3%81%B0%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%81%AE%E7%94%B7%E3%81%A7%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
『護られなかった者たちへ』
中山七里/著 宝島社文庫 2021年発行
善人の死 より
「お疲れ様ですっ」
先に到着していた蓮田が駆け寄ってきた。中学から体育系だったというだけあり、タテ社会の警察にあっても殊更上下関係に従順だが、その律義さが苫篠にはやや煩わしく感じる。
「検視はもう済んだのか」
「今まさに終わったとこです。鑑識はまだ現場で採集中ですけど」
・
死体は四肢を拘束された上に口を塞がれていた。
苫篠は合掌し、いったん頭(こうべ)を垂れてから改めて死体を見た。死体の四肢はガムテ―ムでな何重にも巻かれている。口も同様にガムテープで塞がれ、辛うじて鼻だけが縛(いまし)めから逃れている。苫篠が奇妙に思ったのはガムテープの状態だった。テープの表面に幾筋もの皺(しわ)がよっている。
「典型的な餓死の症状ですね」
唐沢は事もなげに言う。
「全体の筋が異常に委縮しています。体重の減少が著しいのも各臓器の重量が減少しているからでしょう。この状態では水分も摂(と)れなかっただろうから、餓死以前に脱水症状を起こしていた可能性もあります。死後2日は経過しているでしょう」
テープに皺が寄っていたのは筋肉が収縮したせいだったのか。
「もっとも司法解剖しなければ断言はできませんけどね。なにせ餓死状態の検視は、わたしにはあまり経験がありません」
唐沢の弁は言い訳がましい。かつての事例の少なかった餓死も、ここ数年は孤独死の増加で目立ってきたという事情があるからだ。
「もうガムテープを剥がしてやりましょうか」
鑑識の手を借りて注意深くガムテープを剥がし、そして着衣を脱がせる。やがて腹部が腐敗変色した体躯が露(あらわ)わになる。
家族の死 より
何とか申請書を作成し、待ち合い用の長椅子に座って待つ。けいと利根以外にも申請を待つ者が多く、数えてみると15人もいる、手元にある番号札は18番。けいの順番いなるまでまだ10人以上待たなければならない。
申請者の全員に生活保護が下りる訳ではない――世事に疎い利根にもその程度の知識はある。だが、今のけいの姿を見れば間違いなく申請が通ると思っていた。聞けばもう2週間以上も風呂に入っておらず、碌に食事も摂っていない。人前に出るので一応は一張羅を着てもらったが、それでも窮乏生活をしているのは肌の艶や歩き方で十二分に推察できるはずだった。けいの申請が通らないのなら、どんな境遇の貧困者が申請しても通るわけがない。
2時間ほど待って、ようやくけいの順番が巡ってきた。利根はけいを抱えるようにして窓口に向かう。
窓口の職員は<三雲忠勝>と記された名札を胸につけていた。
「遠島けいさん、ですね。……あれ? 確か先週も来られましたよね。あの時、申請は却下させてもらったはずですが」
「再申請に来たんですよ」
けいが口を開く前に利根が割って入った。
「電気もガスも止められて、もう限界まできてるんです。どうか申請を通してください」
本人に先んじて口を出してきた利根を、三雲は胡散臭そうな目で睨む。第一印象は丁寧で温和だと思っていたのだが、いざ話してみると隠れていた陰険さと猜疑が顔を覗かせた。
「おたくはどなたです。遠島さんのお身内ですか」
「近所……いえ、元近所の者ですけど」
「えっとですね、付き添いはご親族ないし保護者の方に限らせていますので、ご遠慮いただけませんか」
「あのですね。俺もあんまり知らないんですけど、生活保護って国民に最低限の文化的生活を保障してくれるものなんですよね。だったらけいさんの先生を通してください。この人の生活。とてもじゃないけど文化的なんて言える代物じゃありません」
三雲は利根の訴えを無視するように視線を逸らし、けいに向き直る。
「遠島さん。わたし前回の時にも言いましたよね。生活保護という制度は本当にどうしようもなく為す術をなくした人が最後に利用するものです。まだまだ働ける人や他に収入の当てがある人は、そもそも申請してもらっては困るんです」
「いや、だからけいさんは……」
「遠島さん、あなた大阪に弟さんがおられますよね。それなら、まずその弟さんを頼ってみてはどうですか」
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
どうでもいい、じじぃの日記。
中山七里著 『護られなかった者たちへ』を読んだ。
ある日、仙台市の保健福祉事務所課長・三雲忠勝が手足を拘束され、ガムテープで口を塞がれた状態で餓死しているところを発見された。
捜査線上に容疑者として浮かび上がったのは利根泰久。彼は模範囚として刑期を終え出所したばかりだった。
利根は知り合いの遠島けい(80歳ぐらいのお婆さん)に付き添い、保健福祉事務所に一緒に行く。
生活保護の申請をしても、三雲は冷たい態度で接しけいを相手にしなかった。
結局、彼女は餓死してしまう。胃のなかには食べ物の代わりに食べたのかティッシュペーパーが入っていた。
著者の中山七里さんは、最後に驚きを仕かける「どんでん返しの帝王」として知られている。
まあ、そういう犯人像も考えられるなあ。