じじぃの「科学・芸術_989_中国でいま何が・急変する対日感情」

日中首脳、和やかに会談 関係改善加速で一致(18/09/12)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=XfyGFAByiPg

『中国でいま何が起きているのか』

邱海涛/著 徳間書店 2019年発行

急変する対日感情と日中間系の今後 より

日中接近の裏では何が

改革開放が始まった1980年以降、中国と日本のあいだでは教科書検定問題や首相の靖国神社参拝など政治的なトラブルがいくつか起こったが、いずれも限定的なものだった。
しかし、2012年に尖閣諸島が国有化されると、日中関係は急速に悪化し、中国の反日運動は決定的なものとなった。
当時の中国では、民間団体であろうと政府機関であろうと、日本側とのいっさいの対話や交流が禁止された。筆者には、不老不死の薬を求める秦の始皇帝によって日本に派遣されたとされる徐福を研究する「中日徐福研究会」の友人がいるが、尖閣諸島が国有化されて以降、会員間の交流や会議がぴたりととまったそうだ。
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いうまでもなく、韓国と中国は日本に対する歴史問題で共闘してきた。日本としては、中国との関係改善によっれ中韓の共闘関係を断ち切りたいという思惑も働いているだろう。
実際、今回の日韓対立では、多くの中国人が日本を支持している。というのも、日本も日本人も約束をよく守るために中国人は敬服しているが、韓国および韓国人はよく騙すという印象が強いからだ。
いずれにせよ、そのような双方の思惑から、日中対立の構図がついに崩れたわけだ。

対日感情と対米感情の差

中国人が日本人を非難する際、「中国が台頭するたびに、いつも日本は中国を挑発し、数々のトラブルを起こして行く手を阻(はば)もうとする」とよく言われてきた。中国人は、そうしたことが歴史上5回もあった、と主張している。
2回目までは白村江(はくそんこう)の戦いと元寇という古代の話であるが、3回目は日清戦争、4回目は1930年代からの日中戦争、そして5回目が2012年の尖閣諸島国有化だとしている。
しかし、現実には、いま中国を滅ぼそうとしているのはアメリカだ、と中国人は悟るようになった。そのため、米中対立はこれから相当長く続くだろうと思われる。
貿易会社に勤める友人は、「ようやくアメリカ人の本性がわかった。かなり性格が悪い。
貿易会社に勤める友人は、「ようやくアメリカ人の本性がわかった。かなり性格が悪い。ビジネスではつきあわざるをえないが、深い交際は避けたい」と不快そうにつぶやいていた。
これまで、中国人が日本とアメリカに対してもっていた認識や感情の違いは、以下のようなものだった。
アメリカは広く、日本は狭い。このため、自然と日本を見下す心理が生まれる。中国人は大きい者を敬うが、小さいものは侮蔑する。だから、中国人が日本を貶める際には「小日本」(ちっぽけな日本)という言葉をよく使う。
●第2次世界大戦が終わるまで、世界列強のなかでは、アメリカが中国にももたらす被害がいちばん小さかった。日本は敗戦国で中国に対して罪がある。このために日本を憎む心理が生まれる。そのうえ、日本人は内向的で争いことが嫌いなため、強く言えば中国に従うと思われてきた。
●中国でも反米運動は起こるものの、反米思想が中国人に根づいていないために、短期間で終わることが多い。非西側諸国のなかで、中国人の反米意識がいちばん穏当で、反日意識がいちばん苛烈だといわれている。
●人権、民主、言論の自由、また法律体系など、アメリカは世界から世界から手本として崇(あが)められている。そのため、中国人にも自然とアメリカ崇拝の思想が生まれる。
上海で生まれ育った筆者は1985年に日本に留学し、以降、15年間、日本で生活してきたが、2000年からは仕事のために再び中国に定住することになった。
そこで筆者が驚いたのは、以前に比べてアメリカを紹介するテレビ番組が非常に多くなっていたことだ。映画はアメリカものばかりで、スポーツ番組もアメリカのスポーツの試合ばかりで、隔世の感があった。
しかし、現在では、アメリカを憎む中国人が急増しており、反日の声はほとんど聞こえなくなっている。もちろん、すべての中国人が反米に傾いているわけではないが、雰囲気としてかなり増えていることは確かだ。
中国人のあいだでは、無料インスタントメッセンジャーアプリの「微信」がよく使われている。「LINE」とほぼ同じ機能をもっており、好きなテーマを論じあうために立ち上げられるグループの内容は、政治、経済、軍事、文化、社会といったテーマが圧倒的に多い。
また、グループ内では反米と親米に分かれており、基本的に学歴が低い者は反米派に傾き、学歴が高い者は親米派に傾くようである。自分の利益にもかかわっているので、人びとは頻繁に交流して米中貿易戦争に関するニュースや情報を収集・交換し、不満の事態への対応策を考えている。いままで見たことがないほど、関心度が高まっている。