じじぃの「科学・芸術_469_時空の穴・ブラックホール」

報ステ】史上初!“ブラックホール”撮影成功(19/04/10) 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=3q9sRgFN1qQ
ブラックホール

ブラックホール捉えた世界の望遠鏡 (2019.4.11)

ホーキング放射 コトバンク より
ホーキング放射(Hawking radiation)1974年に英国の物理学者S=ホーキングが提唱した、ブラックホールからの熱的な放射。
ブラックホール近傍の量子力学的な真空のゆらぎから粒子・反粒子が対生成し、一方がブラックホールに取り込まれ、もう一方がエネルギーをもったまま放出される。この放射は黒体放射とみなされ、放射の絶対温度Tはブラックホールの質量Mに反比例する。ブラックホールは放射によりエネルギーを失い、最終的に蒸発することが指摘されている。

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ブラックホールの「影」観測 計画大詰め、日本の技術も貢献 2018.2.12 SankeiBiz
目には見えないブラックホールは一体どんな姿をしているのか−。天文学者が追い求めてきた夢がいよいよ現実になりそうだ。日本も参加する地球サイズの電波望遠鏡を使ってブラックホールの“影”を捉える観測プロジェクトが大詰めを迎えている。ノーベル賞級ともいわれる快挙に期待が集まる。
「すごいデータが得られた。観測は非常にうまくいっている」。こう話すのは国立天文台の本間希樹教授だ。
期待されるのはブラックホールの“影”の撮影だ。吸い込まれるガスが発する電波を捉えて高精細の画像にできれば、ブラックホールが真っ黒な穴として写り込むと考えられる。チームは昨年4月、いて座AスターやM87銀河を集中観測。年末からデータ合成を始めた。作業は「未知の領域」(本間さん)だったが、日本の画像処理技術も大きく貢献している。今年秋以降には誰も見たことがないブラックホールの姿を捉えた画像が発表されそうだ。
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/180212/cpc1802120500002-n1.htm
『広い宇宙で人類が生き残っていないかもしれない物理学の理由』 チャールズ・L・アドラー/著、松浦俊輔/訳 青土社 2014年発行
重力による時間の遅れとブラックホール より
ブラックホールは存在する。太陽の質量の20倍を超える大質量の星が進化する最終段階にできる。恒星は、中心での核融合で生じる熱と外側へ押し出す圧力と、内側へ引き込む重力の力がつりあっている。融合による燃焼が終ると、恒星の大きさが十分なら、完全につぶられるのを止めるものがなく、実質的にこの宇宙から消えてしまう。残るのが「事象の地平」という、式(複雑なので省略している)で与えられる一方通行の壁だ。この壁の向こうへ行ってしまうと元の宇宙には戻ってこれない。この地点の向こうでは、中心の特異点まで落ちてしまうしかなく、ブラックホールに呑みこまれたものはすべて、特異点による潮汐力によってばらばらになるのは避けられない。特異点に落ちた後で物質がどうなるかというのはよくわかっていない。それを理解するには重力の量子論が完全にわからなければならないが、まだその理解が得られていないからだ。
ブラックホールには、外の観測者から見ると、事象の地平に近づくにつれて時間が遅くなるという魅力的な面もある。
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ブラックホールは、物理学者を魅了するようになってからほとんどずっと、SF作家も魅了してきた。キップ・ソーンが言うように、ブラックホール研究の「黄金時代」は1960年代で、SFの主流にブラックホールが初めて進出するのも1960年代から70年代の初めにかけてのことだった。アーサー・C・クラークの『都市と星』は、ブラックホールを使った早い時期の例かもしれない。この話では、銀河帝国の住民によって作られながら、後に帝国民に反抗して銀河を破壊しかけた、体を持たない「マッド・マインド」を閉じ込めるために、人工恒星「ブラックサン」が使われる。それがブラックホールのことなら、クラークは、最終的にブラックサンが破綻してマッド・マインドは脱出すると予測して先見の明を示した。この小説が書かれた1950年代後半には、ブラックホールがホーキング放射で蒸発することはしられていなかったのだ。ブラックホールはいずれ(すべての恒星が死滅してからずっと後)、すべて蒸発してなくなるという。
ジュリー・パーネルの「ヒー・フェル・イントゥー・ア・ダーク・ホール」[暗い穴に落ち込んで]という小説は、ブラックホールを回る軌道にひっかかって、重力によってほとんど破壊されかかっている宇宙船の乗員乗客の一団の救出劇を描いている。物語は『神の目の小さな塵』と同じ宇宙が舞台で、今から5世紀たつと宇宙物理学者がブラックホールについて何もかも忘れているというアイデア以外は、科学的には正確だ。ラリイ・ニーヴンはもちろんブラックホールが出てくる小説を何本か書いている。「シンギュラリティーズ・メイク・ミー・ナーヴァス」[特異点が心配だ]という小説には、ブラックホールをくぐることで時間をさかのぼる飛行士が出てくる。
ブラックホールは「崩壊星(コラプサー)」と呼ばれることもあり、いくつものSFでFTL(超光速航法)旅行用に使われてきた。すぐに思い浮かぶのは、ジョー・W・ホールドマンの『終わりなき戦い』とスタニスワツ・レムの『大失敗』だ。前のほうはすでに挙げている。もう1つのほうは、異星人の種族クィンタ人との最初の接触しようとする探検隊の試みを記している。この本では、宇宙線は「グレーサー」(どういうものかはわからないが、重力レーザーのこと)を使ってコラプサーを振動させ、宇宙線がそれをくぐって超高速移動あるいは過去への遡行が行なえるようにする――晦渋な文体で、どちらかのことかは明らかではない。レムは高い教育を受けているので、この部分は物理学者がいわゆるカー・ブラックホール[自転するブラックホール]について行った研究に由来するのだろう。
時間旅行とFTL旅行とブラックホールの関係は、自転するブラックホールを表すアインシュタインの場の方程式のカー解に関係する。どのブラックホールでも中心には特異点がある。特異点では空間の曲率が無限大になり、そこに落ち込むものは、各方向で同時に引っ張られたり圧縮されたりしてばらばらになる。自転しないブラックホールの場合、特異点は1点で、特異点を通ると生きてはいられないが、急速に自転するブラックホールの場合、特異点は輪の形をしている。輪をくぐる物体についてアインシュタインの方程式を解くと、奇妙なことになる。特異点をくぐる飛行士は、「閉じた時間的曲線」を移動することができる。これは過去へ行くことを意味する。この解はFTLも許容するらしい。あいにく解は不安定で、輪の特異点に入った物質はいずれも確実にそこを破壊し、その過程で旅行者は死んでしまう。そのため、ニーヴンとレムの小説や、特異点を超えて旅行する『ブラックホール』のような映画は、残念ながら成り立たなくなる。