じじぃの「人の死にざま_1758_ニコロ・パガニーニ(バイオリニスト・作曲家)」

The Devils's Violinist ? Official Trailer (English) 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=FTEb3RsN4jw
Niccolo Paganini

映画「パガニーニ・・・愛と狂気のバイオリニスト」 2014.8.16
史上最高のバイオリンの名手と言われたニコロ・パガニーニ(1782〜1840)。
バイオリンのテクニックに大変革をもたらし、多くの音楽家達に計り知れない影響を与えました。
1782年10月27日、イタリアの北西部ジェノバに生まれたパガニーニは、7歳の時から、父親よりバイオリンの手ほどきを受けました。父親のレッスンは超スパルタ、遊ぶことさえ許されず1日10時間以上に及びました。少しでも熱意が感じられないと食事抜きで練習させられたといいます。
パガニーニは「悪魔に魂を売ってバイオリンの技法を身につけた」という噂がまことしやかに拡がります。まさに ”バイオリンの魔神”が現れたのです。ウィーン市内では、「パガニーニ風の衣装」、「パガニーニ好みの食品」が売られ、彼の周囲には、多数の貴婦人が群がりました。演奏を聴いて興奮の余り、気絶する女性ファンまで出ました。
1837年、最後の演奏会。水銀治療の悪影響が出たとも言われています。
http://mizukawa-t.sakura.ne.jp/ongaku-zuisou/paganini/paganini.html
『にわかには信じられない遺伝子の不思議な物語』 サム・キーン/著、大田直子/訳 朝日新聞出版 2013年発行
バイオリニストの親指 (一部抜粋しています)
スポーツ選手の場合と同じで、新進の音楽家が自分の才能を発揮して野心を成就できるかどうかを、ちっぽけなDNAのかけらが決定する可能性がある。1つの重要な音楽的形質、すなわち絶対音感は、KE家(ロンドンの家族)の言語障害と同じ優生パターンで遺伝することを確認した研究がいくつかある。絶対音感がある人は、子どもの半分がそれを伝えるのだ。一方、絶対音感に対する遺伝の寄与はもっと小さくて微妙だとする研究もあり、DNAがその才能を授けるためには、環境による刺激(たとえば音楽のレッスン)と呼応して作道しなくてはならないとしている。音感のほかにもさまざまな身体的特性が、音楽家の能力を高めたり弱めたりすることがありうる。おそらく遺伝性疾患のマルファン症候群の結果と考えられるセルゲイ・ラフマニノフの大きな手は30センチ、鍵盤で言うと1オクターブ半も広がったので、それほど恵まれていないピアニストの靭帯を切ってしまいそうな曲をラフマニノフは作曲して演奏することができた。手と言えば、ロベルト・シューマンのコンサートピアニストとしてのキャリアは、筋肉を失ったために右手の中指が無意識に丸まったり引きつったりする限局性筋失調症のせいで終わった。この病気の患者は遺伝的にかかりやすい人が多く、シューマンはそれを補うために、その指をまったく使わない曲を少なくとも1曲書いている。しかし彼は過酷な練習スケジュールをけっして緩めず、指を伸ばすように自分で設計した間に合わせの機械仕掛けの責め道具が、症状を悪化させたかもしれない。
それでもやはり、病弱で体が不自由な音楽家の長く栄光に満ちた歴史を見わたしたとき、19世紀の音楽家で名バイオリニスト中のバイオリニスト、ニコロ・パガニーニのDNAほど、味方でも敵でもある二面的なDNAはほかにない。オペラ作曲家のジョアキーノ・ロッシーニは、自分が泣いたことを認めるのを嫌ったが、涙を流したと白状したことが3回あり、そのうちの1回はパガニーニの演奏を聞いたときだった。ロッシーニはそのとき号泣したが、その不格好なイタリア人に魅了されたのは彼だけではなかった。パガニーニは黒い髪を長く伸ばし、演奏会では黒いフロックコートに黒いズボンで演奏するため、青白い汗びっしょりの顔がステージに浮かんでいるように見えた。しかも演奏中、腰を妙な角度に曲げていて、激しい勢いで弓を動かすとき、ひじをありえない角度で交差させることもあった。一部の専門家は、彼の演奏会は芝居がかっていると感じ、バイオリンの弦が演奏中に大げさに音を立てて切れるよう、ショーの前にすり切れさせていると非難した。しかし、彼の見世物師としての力を否定する人はいなかった。ローマ教皇レオ12世は彼を黄金拍車騎士に任じ、王立鋳貨局は彼の肖像を刻んだ効果を鋳造した。パガニーニは多くの批評家から史上最も偉大なバイオリニストと賞賛され、クラシック音楽界で不朽の名声を得るのは作曲家だけというのだ通例だが、彼はほぼ唯一の例外である。
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パガニーニは目にあまるほどギャンブルにはまっていて、一度はショーの前にバイオリンを賭けたほどだ(そして負けた)。さらに悪いことに、彼はヨーロッパ中で若い娘や家政婦や良家の子女とどんちゃん騒ぎをして、密通への実におおらかな欲求をさらけ出していた。とくに大胆な口説き落としとして、彼はナポレオンの妹のうち2人を誘惑し、そのあと捨てたと言われている。「私は実に醜いが、バイオリンを弾きさえすれば、女性たちは私の足元にひざまずく」と自慢したこともある。教会は感心しなかった。
とはいえ、パガニーニの性欲過剰な行動は、遺伝子と芸術についての重要なポイントを指摘している。芸術的衝動は、その普遍性を考えると、何らかのかたちでおそらくDNAにコード化されているのだろう。しかしなぜなのか? なぜ、私たちはこれほど強く芸術に反応しなくてはならないのか? 1つの説は、私たちの脳が社会的な交流と肯定を欲いていて、物語や歌やイメージの共有は人々がきずなを結ぶのに役立つ、というものだ。