じじぃの「カオス・地球_455_哺乳類の興隆史・第10章・ヒトという哺乳類①」

“OKAMOTO ZERO ONE - CM Dinosaur Edition” (English ver.)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=EQ0px0v9SII

Plesiadapiformes monkey


dinosaurs had sex


Big bang theory: how dinosaurs had sex

17 July 2013 Australian Geographic
Did dinosaurs mate like humans?
We now know with confidence that the meat-eating theropods, such as Tyrannosaurus and kin, were the group that gave rise to the first birds about 160 million years ago.
https://www.australiangeographic.com.au/topics/science-environment/2013/07/big-bang-theory-how-dinosaurs-had-sex/

『哺乳類の興隆史――恐竜の陰を出て、新たな覇者になるまで』

ティーブ・ブルサッテ/著、黒川耕大/訳、土屋健/監修 みすず書房 2024年発行

約3億年前に爬虫類の祖先と分かれたグループが、幾多の絶滅事件を乗り越えて私たちに至るまでの、途方もない歴史を描く書。

第2章 哺乳類が出来上がるまで より

ペルム紀末、現在のロシアに当たる地域には多くの獣弓類が生息し、火山地帯からそう遠くない場所で暮らしていた。ゴルゴノプス類がディキノドン類に犬歯を突き立て、キノドン類がシダ種子植物の森に身を潜めていた。それらの動物が噴火の直接の被害者となったにちがいなく。多くは低俗な災害映画よろしく文字どおり溶岩に飲み込まれただろう。
しかし被害はこれに留まらず、溶岩よりずっと恐ろしい火山の潜在的な脅威が露わになった。「サイレントキラー」と呼ばれる二酸化炭素やメタンなどの有害なガスが溶岩とともに湧き上がり、大気に放出され世界に拡散したのだ。これらは温室効果ガスであり、赤外線を吸収して地表に送り出すことで熱を大気に留める。おかげで急激な温暖化が起き、気温が数万年で5~8度ほど上昇した。
いま起きていることに似ているが、実は現在の温暖化よりはペースが遅かった(現代人に現状の再考を迫る事実だ)。それでも海洋を酸性化・貧酸素化させるには十分で。殻を持つ無脊椎動物やその他の海棲生物が広範囲で死滅した。

第10章 ヒトという哺乳類 より

男の名はリー・ヴァン・ヴェーレン。その外見とは裏腹に(いや「外見どおりに」と捉える向きもあるかもしれない)大学の教授を務めていたが、その才気は一歩間違えば狂気になりかねないものだった。肩書は「進化生物学者」だったが、数学と哲学にも通じていた。キャンパスをうろうろしないときにはオフィスにこもるのが常で、そこには3万冊の蔵書があると言われていた。入室の際はケガのリスクを負う必要があった。リー自身よりも高い資料の山があちこちに、ジャンガのタワーのように危うくそびえていたからだ。私が親しくなった大学院生の何人母、山が崩れて教授が下敷きになることを恐れていた。それを本気で心配したのは、学生たちがリーを慕っていたからだ。

「リーは正真正銘の「変わり者」だった。そう呼ばれながら、実はただの「バカ」に見える他の多くの研究者と違ってね」。私とメールでやり取りしたとき、クリスチャン・カンメラ―は当時をそう振り返った。

クリスチャンは哺乳類に至る傾倒の起源に詳しい専門家として、以前の章にも登場した。なんでも、シカゴ大学での博士課程時代にリーの騒々しい進化論の講義を受けたときに、本人が創作した詩を読まされたそうだ。そのうちの1つである恐竜の交尾についての卑猥な詩は2019年にリーが亡くなった際、ニューヨークタイムズ紙の追悼記事に引用された。
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私の研究者仲間であるトロント大学のメアリー・シルコックスは、私が思うに、霊長類の起源に関する当代随一の専門家だ。その彼女いわく、リーの気づきは革新的だった。「プルガトリウスが霊長類だと気づくなんて、天才としかいいようがない! それくらい霊長類には見えないけど、いまではそこが出発点だったと分かっている」。
そう語ってくれたのは、コロナ禍のオンラインセミナーでエジンバラにいる私の教え子に講演してくれたあとの、質疑応答でのことだった。その返答を引き出した私の質問は簡潔なもので、私の知るかぎり、リーが講師に繰り出したどの質問よりもはるかに短い。「霊長類に関する発見の中で、私が自著で取り上げべきものを1つ選ぶとしたらどれか」。メアリーにとっては考えるまでもなかった。古霊長類各社を志した契機こそ、ルーシーなどの化石人類に関するドナルド・ジョハンソンの著書を読んだことだったが、研究対象を最古の霊長類に絞ったのは、プルガトリウスに魅了されたことがきっかけだったのだから。

プルガトリウスはプレジアダピス類に属する。この舌のもつれそうな名前の祖先系統から、霊長類は進化した。メアリーのように、リーにならってプレジアダピス類を霊長類と呼ぶ研究者もいれば、それらを「ステム霊長類」と呼びたがる研究者もいる。
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暁新世が明けて始新世が始まり、5600万年前のPETMの温暖化期に気温が急騰すると、一部のプレジアダピス類は木登りの能力と視覚機能をいっそう向上させた。そうして誕生したのが真の霊長類、すなわち誰もが霊長類と認めるクラウングループだ。先述のテイルハルディナ(世界を股にかけ、ワイオミングのビッグホーン盆地をはじめ北半球の諸大陸に立て続けに進出した種類)はこの最初の真の霊長類の典型である。

この真の霊長類にはプルガトリウス型の祖先とは異なる点が主に2つあった。
まず、樹上での生活にいっそう適応し、枝から枝に跳び回れるようになった。鉤爪が平爪に変化し、祖先が持っていた対向性の足の親指と長い手指に、対向性のての親指と長い足指が加わり、足首の固定性が高まって(様々な方向への可動性を維持しつつも)跳躍時と着地時の安定性が増したことで、それが可能になった。
次に知能と視力が格段に向上した。脳が大型化すると同時に再編成され、感覚統合を司る新皮質が拡大し、嗅覚野が縮小して視覚野が拡大した。これは嗅覚より視覚が重要になったことの表れだ。真の霊長類は前方を向いた大きな眼で立体視ができ、鮮やかな色もあるテ五度認識できた。眼と脳が大きくなり鼻が引っ込んだことで、吻の短い平坦な顔に近づいた。ヒトの設計図における多くの要素――ギョロリとした眼、潰れた鼻、親指を立てるジェスチャーをする能力、手で物をつかむ能力、手足の平爪、虹の鮮やかな色彩や信号の色を認識する能力、ヒトの知性の基盤――は世界が灼熱化するなかで私たちの祖先が樹間跳び回っていた時期の名残なのである。