じじぃの「カオス・地球_181_小川和也・人類滅亡2つのシナリオ・第3章・人間の本性・性悪説」

【前編】絶対に民主化しない中国の歴史【解説】

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=dtt8l8PoMBw


角川学芸出版単行本 『絶対に民主化しない中国の歴史』

井沢元彦【著】
・天人相関説は、天が選んだ皇帝と徳のある官僚による人民統治の考え方であり、宗教。この考えは、天に選ばれた皇帝を権力の絶対者とするもの。
・性三品説は、人間の品性には上品、中本、下品の三種類があり、下品の人間は生まれつきの悪で、改善する余地は無い。人間の格付けをする事になり、中国は民主主義が生まれない土壌になった。
儒教聖典孔子を聖人にまつりあげるために、でっちあげていったもの。 独裁者・習近平が死んでも、中国共産党が倒れても、中国は民主化せず、独裁者による「恩知らず」な国であり続けるようです。

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朝日新書 人類滅亡2つのシナリオ―AIと遺伝子操作が悪用された未来

【目次】
はじめに
第1章 AIによる滅亡シナリオ
第2章 ゲノム編集による滅亡シナリオ

第3章 科学と影のメカニズム

第4章 “終末”を避けるために何ができるか

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『人類滅亡2つのシナリオ―AIと遺伝子操作が悪用された未来』

小川和也/著 朝日新書 2023年発行

画期的なテクノロジーほど、暗転したときのリスクは大きい。特にAIとゲノム編集技術は強力で、取扱いを誤れば、人類に破滅をもたらす因子となりうる。「制度設計の不備」と「科学への欲望」がもたらす、人類最悪のシナリオとは。

はじめに より

本書における「人類滅亡」は、特に最後の3つに焦点を当てている。

近年、「人間」「人類」の解釈は各分野の専門家の間でも揺れており、「ポストヒューマン」を人間とみなすか否かについての議論も分かれる。それこそが、AIやゲノムテクノロジーが人類の概念にまで影響を与え始めた証でもある。

まだ多くの議論の余地は残されているが、本書では、あえて「現生人類としてのホモ・サピエンスが甚だしく遺伝子改変された状態」を種の延長線上に置かず、「現生人類の終焉」を人類滅亡と解釈することをシナリオの前提とした。それくらいシビアに受け止めるべき分岐点に人類が立たされていると認識し、戒めとするためだ。

こうした定義と前提をもとに、本書では、歴史上の出来事や状況を踏まえ、未来の事象がどう変わっていくかを調査・推論する学問分野である未来学の視点で、最悪な未来=人類滅亡までのプロセスを示していく。その上で、最悪な未来を回避するためのアプローチを提案したい。それが本書執筆の動機となっている。

AIは「人工」であり、ゲノムテクノロジーは「操作」である。結局は、いずれも人間が主語だ。未来に人類の運命を委ねるのではなく、人類がより良い未来を作らなければならない。

本書で提示するシナリオを、未来で実現させてはならない。
たとえ、一部の人間の悪意、悪意なき悪意であっても、それが束になり始めると、制御する難度が上がってしまう。その束を作らず、人類滅亡のシナリオを絵空事で終わらせるためにも、どうか多くの人に読んでいただきたい。

第3章 科学と影のメカニズム より

人間の本性―― 欲望が科学に影を落とす

科学技術による影はどのように作られるのか、歴史は振り返りながら論じてきた。そこで留意しなければならないのは、影を落とす主語は科学技術ではなく、常に人間であるということだ。ここでは、なぜ人間は影の作り手になってしまうのかについて掘り下げることにする。それこそが、AIやゲノム編集技術に影を落とす危険性の根底であり、人類滅亡を回避するためには人間の性質を理解しておかなければならないからだ。

そもそも人間は、私利私欲を持つ生き物である。

中国戦国時代の思想家である孟子は、人間は生まれながらにして善であるとする性善説を唱えたが、性善説では、人間が悪に転じる可能性についても説いている。人間の性はもともと善であっても、欲を持つと悪を行うようになってしまう。外からの影響を受けることによって、本来の心の善の兆しが曇らされるのだという。
だからこそ聖人の教えを学び、礼を身に付けるといった教育を受けることにより本来の善・仁の心を持ち備えるべきであると説く。

一方、性悪説で知られる中国戦国時代末の思想家である荀子による『荀子』第17巻第23性悪篇には、人間の本性すなわち生まれつきの性質は悪であって、善は偽すなわち後天的な作為の矯正によるものだとする記述がある。

この教えによると、人間の本性には生まれつき利益を追求する傾向があり、この傾向のままに行動すると、他人と争い奪い合うようになり、お互いに譲りあうことがなくなってしまう。また、人間には生まれつき嫉んだり憎んだりする傾向があり、この傾向のままに行動すると、互いに傷つけ合うようになり、誠意を尽くして信頼し合うことができなくなる。
さらに、人間には生まれつき美しい声を聞いたり、美しい色彩を見たがる傾向があり、この傾向のまま行動すると、節度を越して勝手気ままに振る舞うようになり、礼儀や道理をないがしろにするようになってしまうのだとする。

人間の本性の赴くままに行動し、憎しみ合い、傷つけ合い、争い奪い合う。信頼や道理なき混乱の世界で、技術の濫用や悪用が行われやすくなる。人間の生まれつきの性質は悪いものであるからこそ、善い性質は後天的な矯正によるものであり、世の中が平和に治まるように後天的努力で修正して前へと向かうべきだとしている。

荀子孟子性善説を批判し、性を欲望も含んだものとして捉え、あるがままの人間の本性は悪であると説いた。そして、外在する「礼」すなわち学修によって人間を矯正する必要があるのだと説いた。

孟子が人間の主体的な努力で社会全体を統治できるという人間中心主義であったのに対し、荀子は君主が社会に制度を制定しなければ人間は悪に流されてしまうという社会システム重視であった。

性善説でも性悪説でも、人間は悪と無縁ではない。だからこそ、悪に流されないための制度や仕組みが必要であるということは、テクノロジーの分野においても言えることではないだろうか。
現状、ゲノム編集や人工知能お技術は著しい速さで進化しているが、それに対して制度設計をはじめとした対策が追いついていない。悪用される余地や、利益追求に駆り立てられた組織が非論理的な行動を取る隙も多く残されている。後述するが、本書で示す回避策は、この人間の性を踏まえた世界の制度設計である。