じじぃの「人の生きざま_804_チャールズ・ベネット(物理学者)」

Quantum Information’s Revolutionary Origins | Charles Bennett

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=B5BUhzBlO-U

量子コンピューター、始動 新しいコンピューティングの時代がここから始まる

日本経済新聞
2021年7月、日本初となるゲート型商用量子コンピューター「IBM Quantum System One」が稼働を開始した。
クラウドスマートフォンの普及、スーパー・コンピューターの性能向上など、コンピューティングの進化で世の中は大きく変貌した。そして今、量子コンピューティングの進化でまた新しい時代がやってくる。
量子コンピューティングとはどのようなものなのか。世界の多くの国に先駆けて、IBMにとって米国外でドイツに続き世界に2台目*となる量子コンピューターの実機が日本に設置された意味とは。そして量子コンピューティングで社会やビジネスはどう変わるのか。本記事ではまず量子コンピューティングの概要と今後の展望について紹介する。
https://ps.nikkei.com/ibmportal/quantum2109/vol1.html

チャールズ・ベネット (物理学者)

ウィキペディアWikipedia) より
チャールズ・ヘンリー・ベネット(Charles Henry Bennett, 1943年 - )は、アメリカ合衆国の物理学者、計算機科学者。IBM ResearchのIBMフェロー。
ニューヨーク生まれ。ブランダイス大学卒業後、1970年、ハーバード大学において、分子運動のコンピュータシミュレーションの研究に対して、Ph.D.を取得する。1972年にIBM Researchに所属してから、物理と情報の関係を研究する。

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日本経済新聞』 2023年6月30日発行

〈先駆者〉量子情報科学、米IBMフェロー

チャールズ・H・ベネット博士 構想段階から潜在力見抜く より

量子コンピューターや量子暗号を生み出した量子情報科学の研究は1970年、米ハーバード大学の大学院生だったチャールズ・H・べネットが、誰も相手にしなかった友人の独創的なアイデアに強い関心を示したことから始まった。

ベネットの友人でコロンビア大学のスティーブン・ウィーズナーは電子や光子などの微小な世界で成り立つ「量子力学」の法則で偽造を防ぐ新しい通貨「量子マネー」を考案したが、教師も同僚も理解せず、論文の出版は断られた。

しかし、ベネットはそのアイデアを「素晴らしく魅力的だった」と振り返る。2人は何度も議論して、量子力学を使う新しい情報処理の様々な手法を探索し、これを「量子情報」と呼んだ。これがこの分野の始まりだ。

ウィーズナーは早々に学術界を去った。一方で、べネットは米IBMワトソン研究所に就職してからも、量子情報について考え続けた。そして14年後の1984年、量子マネーの仕組みを通信に応用して盗聴を検知する「量子暗号」を編み出した。これを皮切りに、情報が空間を越えて飛び移る量子テレポーテーションや、量子を使った超高密度通信などの量子情報技術を、次々に発表した。

だが、量子力学という物理学の理論によって情報処理という数学的な方法を変えるというアイデアは、当初はなかなか理解されなかった。論文は何度も掲載を断られ、学会で発表すると困惑された。

それでもべネットは、人をそらさぬ話と気さくな性格で次々と共同研究を持ちかけ、多くの研究者を巻き込んだ。量子暗号はカナダの暗号研究者、量子テレポーテーションは欧米の5人との共同研究の成果だ。

量子コンピューター理論を作った英国のデイビッド・ドイチュも、ベネットとの雑談での一言が「発想の決定的なきっかけになった」と振り返る。

べネットは量子コンピューターの可能性を誰よりも早く評価した。批判側の論客だったIBMの上司ロルフ・ランダウアーを粘り強く説得し、IBM量子コンピューター研究の中核に育てた。

ベネットは「技術は科学の発想を万人のものにする」と語る。半世紀前に友人と語り合った量子情報技術は、徐々に具現化し、「『量子もつれ』など量子世界の現象を、人々が直感的に理解するようになってきた」という。「それは、この宇宙のとらえ方が変わったということだ」