じじぃの「科学・芸術_832_相対性理論・ミンコフスキーダイアグラム」

Introduction to special relativity and Minkowski spacetime diagrams | Khan Academy

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ii-KBKSODek

Special and General Relativity

Minkowski Diagram

ミンコフスキー空間

ウィキペディアWikipedia) より
ミンコフスキー空間(Minkowski space)とは、非退化で対称な双線型形式を持つ実ベクトル空間である。ドイツの数学者のヘルマン・ミンコフスキーに因んで名付けられている。
アルベルト・アインシュタインによる特殊相対性理論を定式化する枠組みとして用いられる。この特定の設定の下では空間に時間を組み合わせた時空を表現するため、物理学の文脈ではミンコフスキー時空とも呼ばれる。

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『「超」入門 相対性理論 アインシュタインは何を考えたのか』

福江純/著 ブルーバックス 2019年発行

時間と空間の統一 時空のダイアグラム より

物体の運動のような、空間内における時間的変化は、一般的には、空間を固定して、その中での動き(動画)として表すことが多い。しかし、(特殊)相対論では、空間と時間をあわせて「時空」として捉える立場なので、ふつうの方法で表すことは難しいし、逆に混乱を招くことさえある。しかし、時間座標を空間的に表した「時空ダイアグラム」なるものを用いると、物体の運動を視覚的に表現することができるようになるのだ。
実際の空間は3次元もあり、(1次元の)時間と共に図示するのは難しいので、時空のダイアグラムでは、表現上、空間の次元を減らして表すことが多い。たとえば、横軸に空間の距離xを取り、縦軸に時間tを取ったり、水平方向にx軸とy軸を、縦軸に時間tを取ったりする。
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今度は、太陽のまわりを回る惑星の運動を、水平方向に2次元の空間を取った時空ダイアグラムで表してみよう(図1.画像参照)。太陽は(原点に)静止しているので、太陽の軌跡は時間軸に沿ったまっすぐな直線になる。一方、空間内で円運動している惑星の軌跡は、時間が進むにつれ上の方向(未来方向)に引き延ばされて、螺旋状になる。
秒速30万kmで真空中を伝わる光。電波もX線可視光線も、電磁波はすべて光速で伝わる。この光速度cというのは、とても特殊な速度で、相対論で光速度を基準にしてものごとを考えることが多い。

実際、相対論では、単なる時空ダイアグラムではなく、「ミンコフスキーダイアグラム」と呼ばれる、光速度を基準にした特別な時空ダイアグラムを使う(図2.画像参照)。

ミンコフスキーダイアグラムがふつうの時空ダイアグラムと大きく違う点は、空間軸と時間軸のメモリの取り方(単位)である。すなわち、空間軸に対して時間軸をすごく引き延ばしてあるのだ(空間軸をすごく押し縮めてあるとも言える)。もう少し具体的に説明しよう。
ふつうの時空ダイアグラムだと、たとえば空間軸はmとかkmの単位で測り、時間軸は秒や時間で計る。すなわち身のまわりのスケールで、それぞれの軸のメモリを刻んでいる。このメモリスケールでは、秒速30万kmもの高速の光の軌跡は水平に近い直線になるだろう。
しかしミンコフスキーダイアグラムでは、時間軸の1メモリを1秒にするなら、同じ長さに取った空間軸の1メモリは1光秒に刻む(1光秒は光速で進んで1秒かかる距離、すなわち30万km)。あるいは、図のように、空間軸方向には1光年のメモリを、時間軸方向には1年のメモリを、同じ長さで刻むのである。こうすると、光は1年で1光年進むから(それが定義だ!)、光の軌跡はミンコフスキーダイアグラムでは傾き45度の直線になる。言い方を変えれば、光の軌跡が傾き45度の直線になるようにメモリを刻んだ時空ダイアグラムがミンコフスキーダイアグラムなのである。
こういう刻み方をする理由は、相対性理論では、光速度を基準にして、いろいろな運動を考えるためだ。だからもし、車の運動などのような日常的な運動をミンコフスキー空間で表せば、それらの速度は光速度に比べて非常に小さいので、時間軸にほぼ沿った方向の直線や曲線として表示されることになるだろう(すごくわかりにくい)。
なお、これらのミンコフスキーダイアグラムにおける慣性系(物体)の軌跡を、ひとことで、慣性系の「世界線」と呼んでいる。”横軸を空間軸とし縦軸を時間軸としたミンコフスキー空間での……”というよりは話が早い。
また45度に傾いた光の世界線は、ふつう「光円錐」と呼んでいる。これは水平方向に2次元の空間(x軸とy軸)を取ったミンコフスキーダイアグラムでは、光は時間軸から45度のあらゆる方向、すなわち頂角45度の円錐面内に伝わるからだ。
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ミンコフスキーダイアグラムは、1907年に(チューリッヒ工科大学アインシュタインを教えたこともある)ヘルマン・ミンコフスキーがはじめて導入したものだが、相対論の表現はこれによってずいぶんわかりやすくなった(オリジナルなものでは、虚数なども使うガ、話のエッセンスは同じ)すなわち、アインシュタインが1905年に特殊相対論を打ち立てて時間と空間を時空に統一したとは言うものの、多くの人にとって、その取扱いはなかなかピンと来なかったのである。空間と時間は、相対論の前でも後でも、そして現在でも、相変わらず、あまりにも見かけが違っているためだ。
しかし、ミンコフスキーダイアグラムの上では、時間があたかも空間のように表されている。3次元の空間を表すときに、x軸、y軸、z軸を使うが、ミンコフスキーダイアグラムに置ける時間軸は、ちょっと特別なz軸のように見えるのである。そして、空間内における物体の運動という字かん変化をともなう現象が、世界線という視覚的な図形で表されることになった。また特別な意味をもつ光は、傾き45度の光円錐という特別な図形で表されるように定められた。

数式の背後に隠されていた見えにくい相対論だが、視覚に訴える手段で図形的に表現したミンコフスキーダイアグラムは、難解な理論の理解者を一挙に増やした画期的なモノだったのだ。