じじぃの「脳科学・IQの高い人の神経回路・頭が良いってどういうこと?面白い雑学」

The UnXplained: The Secrets of Einstein's Brain

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=U6_IBNPO0Uc


   

IQの高い人は何が違うのか…天才アインシュタインの脳に凡人の2倍あった"ある細胞"

2022/08/10 PRESIDENT Online
【執筆者】毛内拡(お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系助教、脳神経科学者)

天才と凡人は何が違うのか。脳科学者の毛内拡さんは「アインシュタインの脳組織が、死後、世界中の研究者に配布された。研究の結果、脳の一部の領域で、普通のヒトより2倍ほど多い細胞の存在がわかった。その細胞を増やすことはできないが、活性化する方法はある」という――。

またこれも都市伝説のようなものですが、20世紀最大の知性と呼ばれているアルバート・アインシュタインの脳組織が死後、世界中に配布されました。さまざまな研究者が違いを見つけようと躍起になりましたが、ニューロンには特段の違いは見つけられませんでした。
しかし、アストロサイトを含むグリア細胞には違いが見つかったというのです。脳の一部で、普通のヒトと比べて、グリア細胞の数が2倍程度多い領域があったということです。
https://president.jp/articles/-/60025?page=1

『面白くて眠れなくなる脳科学

毛内拡/著 PHP研究所 2022年発行

PartⅢ 脳の可能性は無限大――頭が良いってどういうこと? より

答えがないことに向き合うのが知性

頭が良いといってもいろいろな定義があり一概にはいえません。計算が早かったり、記憶力が良いだけでなく、人の心の機微がわかる人、、音楽や絵画などの芸術に長(た)けている人、、話すのがうまい人、リーダーシップが取れる人などなどです。
日本語では、知能と知性という2つの言葉があり、直感的にはその違いがわかるような気がしますが、その違いはどのように定義するのが良いでしょうか。
私は、「知能」というのは、答えがあることに素早く答えを出す能力であり、「知性」というのは、答えがないことに答えを出そうとする営みそのもののことを指すのだと理解しています。
したがって、人工知能(AI)はあくまで知能であり、計算や分類などは得意でも、人間のような知性は獲得できないのではないかと考えています。人工知能が人間の能力を凌駕(りょうが)する技術的特異点(シンギュラリティ)が2045年に訪れるとまことしやかにささやかれています。人間の仕事の大部分は、人工知能に奪われるかもしれない、だから人間にしかできない仕事を探そうと躍起になっているところです。
もちろん人工知能が得意な部分はたくさんあると思うので、人間にはできないこと、人間には不得意な部分はぜひ、人工知能に補ってもらえればと思います。
しかし、よくあるSF映画のように、人工知能が人間の脳を凌駕して、人類を支配するということに関しては、私は楽観的で、人工知能やコンピュータは決して脳にはなれないし、脳を超えることはないと考えています。その理由については、本書の後半にかけてじっくりと説明したいと思います。
さて、他方、知能にも種類があるようで、それぞれ流動性知能と結晶性知能と呼ばれています。流動性知能は、直感や処理速度などに関与する能力で、結晶性知能は、創造力やコミュニケーション力、社会適応力など、言語に関する能力である能力であると定義されています。流動性知能は、30歳くらいにピークを迎え、65歳頃から低下するといわれており、一方の結晶性知能は、25歳を過ぎても増加し、加齢しても低下しないとされています。この定義からすると、私が思う知性というのは、結晶性知能のほうなのかもしれません。
このような知見は、個人の中で発揮できる知能が、年齢と共に変化してくるというものですが、では脳科学的に頭が良い人というのは、どういう違いがあるのでしょうか。特に脳にはどのような違いがあるのでしょうか。それに対する統一的な見解は出ていませんが、そのヒントとなるような研究事例を1つ紹介したいと思います。

IQの高い人の神経回路は?

ドイツで行われた研究では、いわゆる知能指数(IQ)を指標にし、脳の違いを明らかにしようとしました。これまでの研究で、IQが高い人は、大脳皮質の体積が大きくなっているということがわかっており、この研究でも、IQが高い人の大脳皮質の体積が大きくなっていることが示されました。
次に、IQが高い人とそうでない人の神経回路がどう違うのかを直接可視化することを試みました。さて一般的に、頭が良い人というのは、さぞびっしり頭の中が詰まっているのでしょうね、と思うかもしれません。私もそう思っていました。

しかしながら、研究の結果、IQが高い人ほど、神経回路がシンプルになっているということが判明しました。一方、IQが低い人は、より複雑な神経回路を持っていたというのです。

これはちょっと直感に反した結果で驚きましたが、この結果を解釈すると、脳科学的には、頭が良い状態というのは、省エネである。つまり効率的に脳を働かせられる状態といえます。そう考えると、納得はいきます。