じじぃの「虫とサンゴと環境と」

『ほんとうの環境問題』 養老孟司池田清彦 新潮社 2008発行
概要。
地球が温暖化しているのだとしても、それが人間のせいなのか、どの程度人間活動に原因があるのか、をハッキリさせるのは大変難しいでしょうし、仮に人間活動の影響が大だとして、防ごうとして防げるのか、防いだ方が本当に得なのか、これまた簡単ではないでしょう1。大体「この調子で活動すると100年後には」などというフレーズをよく見かけますが、100年後も同じように活動できないから大変だ、という話ではないのですか? 「この調子」で活動していけば、100年も経たずに活動の方が破綻するでしょうし、「地球のため」には万々歳ではないですか。

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『いちばん大事なこと 養老教授の環境論』 養老孟司 集英社新書 2003発行
概要。
「手入れ」は、自然にいっさい手を加えないという環境原理主義とは対極的な考え方である。人間と無関係な自然はありえない。人間と関係をもってしまった自然にはきちんと手を入れ、自然のシステムを守ってやらねばならない。
「手入れ」と「コントロール」は違う。「手入れ」は相手を認め、相手のルールをこちらが理解しようとすることからはじまる。これに対して「コントロール」は、相手をこちらの脳の中に取り込んでしまう。対象を自分の脳で理解できる範囲内のものとしてとらえ、脳のルールで相手を完全に動かせると考える。しかし自然を相手にするときは、そんなことができるはずがない。虫を追いかけているのも、虫がどこにいてなにをしているか、自分の脳がすべて把握できるわけではないからだ。相手を自分の脳を超えたものとして認め、できるだけ相手のルールを知ろうとする。これが自然とつきあうときの、いちばんもっともなやり方だと思う。

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バカの壁」の養老孟司先生講演 (一部抜粋しています)
「都会と田舎」
今、子育てが怪しくなってきている。どうしたらよいか?私は次のようにと提案します。即ち、参勤交代をしようということです。1ヶ月田舎に行って畑を耕したり、マキを割ったり、田の草を取ったりするのです。外国ではバカンスといって何週も休暇を取って、仕事とは別な事をします。ボランティアなどをして過しますがそれを世間は認めている。長く休んでいる間に会社で座席が無くなるのでは困るわけで、これは皆がやらなくては始まらない。まず霞が関の方から行って貰いたい。あんなビルの中で四六時中居たらおかしくなってしまいます。身体を使って人間を変えて貰わなくてはなりません。頭や身体が変われば、脳の中も変わります。即ち、言っている言葉が変わってくるのです。今、国民は役人や政治家の言っている言葉を信用しません。言っている言葉が軽くなって来ている。生徒も学校の先生の口先だけでしゃべっていることを知っている。意識の源となる言葉は脳や身体が十分手入れしたものからでなくては本物が発せられないということです。
 自然とは身体や脳、子供も自然の一部です。身体を動かし、脳の働きのバランス、子供のしつけなどをして認識して手入れをしていかなくてはならない。自然保護とは自然を放って置くのでは無く、苦手な自然と意識する自分との折り合いを付けて行くことなのです。
 「正しい方が勝つ」ということは、昔の人はよく言ったものです。全くその通りなのでして、正しい方は腕力を使わないでも必ず勝つという自信がある。自信が無いから暴力に頼るのです。この自然の摂理を信じて折り合って下さい。
http://www.akanekai.jp/bakakabe.htm
『プライムニュース』「虫とサンゴと環境と」 8月5日 BSフジ
【キャスター】八木亜希子、反町理、山本周 【ゲスト】東京大学名誉教授 養老猛、女優 田中律子
http://www.bsfuji.tv/primenews/movie/index.html?d090506_0
どうでもいい、じじぃの日記。
8月5日、BSフジ プライムニュース「虫とサンゴと環境と」を観た。
養老猛さんが出ている。こんなことを言っていた。
反町 永遠の昆虫青年 養老猛さんからどうぞ。
養老 手塚治虫じゃないけどオサムシという虫がいるんですよ。
八木 環境で虫も変わってきているんですか。
養老 コンビニで昆虫採集しているんですよ。光で虫が寄ってくるんですが、コンビニには買物目的でいくんじゃない(笑)。月がいたるところに出てしまっているので、昆虫や鳥の生態も変わってきている。イギリスに卵の殻の厚さを測っている学者がいる。DDTの影響で卵の殻の厚さがだんだん薄くなってきている。全体でみると昆虫は減ってきている。
八木 (田中さんに)この活動をしようというきっかけはなんだったんでしょうか。
田中 98年にエルニーニョで潜ったらサンゴが白色になっていた。白色のサンゴはきれいと思ったがサンゴが死ぬ直前なんだと言われた。2年後、潜ったらサンゴがボロボロになって墓場になっていた。その頃、温暖化とか言われていなかった。この20年で8割のサンゴが死んだ。
映像でサンゴを水槽で養殖し、サンゴが親指ぐらいになったら海に植え付ける田中さんの活動している様子が流れた。
一年に一回、満月の大潮のときサンゴの卵が海中に放出される。
田中 サンゴを移植したからといって20〜30年前に戻らないが、この活動をすることによってサンゴの生態を知ってもらう。
八木 (養老さんに)田中さんを見てどう思うか。
養老 男は集めるが、女の人は育てる。
山本さんからサンゴのガイドラインの説明がある。はっきりしたサンゴの規制はない。
反町 白化現象はどんなところでおきているのか。
田中 全体ですね。深いところでも、浅いところでもおきている。サンゴが少なくなって、それを食べる魚がいなくなり、食物連鎖が変わってきている。14歳から潜ってきたから、今度は恩返ししないといけない。100年後も子供たちが真っ黒になって遊べる環境を残したい。
養老 「里山の手入れ」ですね。自然に対して人間が手を入れていかないと。人間の子供を育てるのと同じ。人間の場合、お母さんがいろいろと子供の世話をするでしょ。4大文明が滅びた。自然の木材をすべて使い切ってしまった。再生不能の状態まで使い切ってしまった。相手のこともある程度認めてやる。そして手を入れていく。
反町 8月31日、衆議員の投票日ですが、各党あまり環境問題を言っていませんね。
養老 政治は頭の問題だが環境は体の問題で言葉にならない。お腹が痛い。何だか体の調子がおかしい。環境問題も身体の問題と同じで肌で感じるしかない。おかしいとは農業、一次産業の人には分かっている。自然と直接、向き合っている人が減った。一次産業で働く人は4%しかない。そういう常識が世間から消えていった。
反町 そうすると、もっと切羽詰まってこないと問題にならない。
養老 日常生活にもっと関わってこないと感じない。
田中 政府はやっていますよというだけ。心で感じてほしい。
養老 何で体を使わないの。都会で働く人は12ヵ月のうち、1ヵ月を一次産業で働く。分業として体を使うこと、頭を使うことをするのではなく両方をやらないとだめ。分業でどちらかというのは理想的な生活につながらない。
反町 人間の生態系ということからもおかしいということですね。
養老 今は一生懸命働こうという時代ではない。田舎で1〜2ヵ月働いて、その間仕事が無い人に都会で働いてもらう。
八木 ワークシュアリングですね。
田中 がむしゃらに働くを変えてみる。人生がえらい変わってくる。
提言
田中律子さんの提言。「100年後の子供達にこの海を残そう」
養老猛さんの提言。「参勤交代 からだを使おう」