じじぃの「科学・芸術_289_アーサー王物語『ランスロまたは荷車の騎士』」

Mother Goose-King Arthur-アーサー王 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=hTJk9XQr7VE
アーサー王

忘れられた巨人 カズオ イシグロ (著) 2015年 Amazon
これまで、「日の名残り」や「私を離さないで」など読んできて本作を読みました。読み始めてすぐに感じたのは、「これは本当にイシグロの作品なのか?!」ということでした。それほど、一見しただけでは、本作はイシグロらしくないのです。
第一にイシグロ特有の一人称の語りではなく、全知の語りで物語が展開されていくからです。加えて、アーサー王をはじめとする5世紀(6世紀)を舞台に、当時のブリテン人とサクソン人という人種間の争い。記憶を取り戻すのか、それとも忘れたままでいたほうがいいのか。などなどファンタジーの要素が満載の作品になっています。

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ウェールズのまっかなホント』 ジョン・ウィンターソン・リチャーズ/著、桜内 篤子/訳 マクミランランゲージハウス 2000年発行
英語に訳せないウェールズ語の詩 より
ウェールズの文化で合唱以外に目立ったものといえば詩であろう。他のウェールズのものの多くがそうであるように、詩もまとまりに欠ける。ウェールズ語で書かれた詩と英語で書かれた詩があることもその理由のひとつだ。
ウェールズ語の詩にはケルトの吟遊詩人たちにさかのぼる古い歴史があり、それはウェールズ人の生活の大事な一部を占めていた。イングランドの学者たちはたちてい無視するが、ウェールズ語の詩がヨーロッパ文化に及ぼした影響には大きなものがある。中世のロマンスの原型となったアーサー王伝説をつくりあげたのもウェールズ人であり、そのアーサー王ウェールズ人であった可能性が強い。
ウェールズ語の詩は、豊富な語彙と、韻よりリズムに重きを置くことで知られる。しかし、ウェールズ人が自慢するように英語に翻訳するのは不可能に近い。英語では表現しきれない言葉が多すぎるのだ。
英語で書かれたウェールズ人の詩は、最大の特徴であるウェールズ語を使っていない点んで物足りないが、伝統は生かしている。

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『世界文学大図鑑』 ジェイムズ・キャントンほか/著、沼野充義/監修 三省堂 2017年発行
愛の命令に従おうとしない者は、大きな過ちを犯す 『ランスロまたは荷車の騎士』(1175年〜1181年)クレティアン・ド・トロワ より
ホメロスウェルギリウスにはじまる叙事詩の伝統は、中世を通して、南フランスのトルバドゥールやそのほかの地中海沿岸の国々の吟遊詩人たちが書いたり歌ったりした武勲詩として生きつづけた。中世の叙事詩は、勇敢なおこないや古代における戦い、すなわちムーア人などのイスラム教徒との戦争を題材にしている。しかし、12世紀になると、こうした騎士やその冒険の物語はちがった性格を帯びはじめ、軍功に代わって騎士道的愛が重要なテーマとなり、英雄的行為よりも気品あるおこないに重点が置かれるようになった。
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クレティアンはアーサー王伝説をフランスの人々に紹介しただけでなく、騎士道物語という概念を一新した。『ランスロまたは荷車の騎士』では、それまであまり知られていなかった登場人物ランスロット(フランス語ではランスロ)に光をあてている。ランスロットの探求は本質的にロマンチックであり、王妃ギネヴィアの名誉を守ることによってみずからの高潔を示す。
メレアガンの悪の手からギネヴィアを救い出す使命を負ったランスロットは、数々の冒険に乗り出す。ランスロットは当然ながらメレアガンと対決することになり、最後には勝利するが、そこにはギネヴィアへの求愛もからんでくる。けれども、すべてが思いどおりになるわけではない。誤解や嘘が重なり、ギネヴィアの態度も二転三転する。ランスロットは罪人用のふつうの二輪馬車に乗せられるという不名誉を味わい、一時は牢屋にまで入れられる。だが最後にはランスロットとその愛が勝利し、ギネヴィアの名誉とランスロットの高潔は守られる。
クレティアンの叙事詩への革新的なアプローチは、この時代の空気と一致していた。古い武勲詩はまだ人気を保っていたものの、ヨーロッパじゅうの詩人が新しいスタイルを採用し、アーサー王伝説をテーマとした詩を書いた。詩人たちはこぞって、ランスロットとギネヴィアや騎士トリスタンとその恋人イゾルデのような恋人たちの詩を書き、また聖杯伝説を題材にする詩人もいた。しかし、叙事詩は13世紀に衰退しはじめて、アーサー王伝説は散文で語られることが多くなり、トマス・マロリーの『アーサー王の死』でそれが頂点に達する。

じじぃの「カズオ・イシグロ・小説『わたしを離さないで』!2017年ノーベル文学賞」

Kazuo Ishiguro takes Nobel Prize for Literature 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=dgV5FANcB7w
白熱教室 カズオ・イシグロ 文学完全版 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=VMDQGDmbqF8
カズオ・イシグロ

2017年10月 ノーベル賞発表日と受賞者
   2日  生理学・医学賞 サーカディアン・リズム(体内時計)を生み出す遺伝子とそのメカニズムを発見した米国人3人
   3日  物理学賞     「重力波」を初検出した米国などの国際研究チーム「LIGO(ライゴ)」のリーダー3人
   4日  化学賞      高い解像度で観察できるクライオ電子顕微鏡の発明した欧米の研究者3人
   5日  文学賞      長崎県出身でロンドン在住の日系人作家カズオ・イシグロ氏 \(^o^)/
   6日  平和賞      非政府組織(NGO)の連合体「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN
   9日  経済学賞     ?

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カズオ・イシグロ氏にノーベル文学賞 長崎生まれのイギリス人【UPDATE】 2017年10月5日 huffingtonpost.jp
2017年のノーベル文学賞に、日系イギリス人作家のイシグロ・カズオ氏(62)が選出された。スウェーデン・アカデミーが10月5日に発表した。
1954年に長崎で生まれたイシグロ氏は5歳のときに海洋学者の父親がイギリス政府に招かれ、家族で渡英。1983年に国籍を取得し、石黒一雄からカズオ・イシグロとなった。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/10/05/kazuo-ishiguro_a_23233579/
ノーベル賞中江有里さんがカズオ・イシグロ的中!? 来月出版の著書で「わたしの大切な24冊の1冊」に選ぶ 2017.10.5 産経ニュース
女優で作家、脚本家の中江有里さんは5日夜、自身のツイッターを更新し、「カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』は大好きな本」「嬉しいなぁ」とつづった。
ツイッターによると、中江さんは来月、書籍「わたしの本棚」を出版するといい、同書の「わたしの大切な24冊のうちの1冊」にカズオ・イシグロさんの「わたしを離さないで」を選んでいたという。
2005年に発表された「わたしを離さないで」は、カズオ・イシグロさんの代表作。舞台や映画にもなった。臓器移植の提供者となるために育てられた若者たちの小説。
http://www.sankei.com/life/news/171005/lif1710050040-n1.html
解説・あらすじ - 『わたしを離さないで』  Yahoo!映画
イギリスの文学賞ブッカー賞受賞作家カズオ・イシグロの小説を基に、傷つきながら恋と友情をはぐくみ、希望や不安に揺れる男女3人の軌跡をたどるラブストーリー。
外界から隔絶された寄宿学校ヘールシャムで、幼いころから共に日々を過ごしてきたキャシー(キャリー・マリガン)、ルース(キーラ・ナイトレイ)、トミー(アンドリュー・ガーフィールド)。普通の人とは違う“特別な存在”として生を受けたキャシーたちは、18歳のときにヘールシャムを出て、農場のコテージで共同生活を始める。
http://movies.yahoo.co.jp/movie/%E3%82%8F%E3%81%9F%E3%81%97%E3%82%92%E9%9B%A2%E3%81%95%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A7/337671/story/
2015年7月17日、NHK Eテレカズオ・イシグロ 文学白熱教室』 より
イシグロ アイデアは、時間や場所が決まっているわけではない。3作目の本は、完璧な執事になりたがっている男の話だ。私生活その他の事を投げ出しても、完璧な執事になりたいと願っている。舞台は日本でも4世紀前の設定でもいいし、未来にしてもいい。舞台設定を自由にしても良いと知ったら、困ったことになった。まるで高級レストランに行ってメニューを見て何を選んだらいいか困っているのと同じ状況になったのだ。ここ10年、舞台をどこに設定すればいいのか決められない。選択肢がありすぎて、だ。
男子学生 小説を完成させるまでの時間のうち、どのくらいロケーション、つまり舞台の下調べに費やしているのですか?
イシグロ まさにそこが問題なんだ。私はロケハンに時間を費やしすぎる。私は書き始める前にロケハンをして舞台設定を決めようとする。経済的に利にかなっているからね。小説『わたしを離さないで』は、2回書き損じているんだ。ロケハンが終わって舞台設定が決まったと書き始めたが、どうもうまくいかない。筆が進まなかった。舞台設定が悪いんじゃないか、と思った。『わたしを離さないで』では舞台設定は3回目でやっと決まったんだ。SF小説にしようとね。何らかの理由で若者たちがある意味、老人のように命に限りがある設定の物語を書きたかったからだ。
映画『わたしを離さないで』のシーンが流れる。
イシグロ 小説で使った手法は奇妙な馴染みのない設定の中に物語を置いて、際立たせるというものだ。そして、読んでいるうちにこう考え出す。この状況は自分たちが置かれている状況とよく似ている。主人公が語っているのは自分たち人間のことだ。富める者も貧しき者も、才能があろうがなかろうが、誰にしも寿命がある。『わたしを離さないで』では歴史上の問題とは違うが、臓器提供や科学研究の倫理的問題、遺伝子実験の問題も含まれている。書き始めたときに中心に据えていなかった一連の問題が避けようもなく吹き出してくる。小説を書くときに問題の層がいくつもあるということを認識する必要があり、私もそれを自覚している。付随する問題に対し真摯にあたる。小説の仕掛けとして使うのだから。心の奥底には罪悪感がある。

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どうでもいい、じじぃの日記。
この頃、毎年のように日本人がノーベル賞を受賞している。
ノーベル文学賞は、5年前にアジア(中国人作家)から受賞しているので、村上春樹氏が受賞するかは微妙な感じだった。
今年、受賞した日系イギリス人作家のイシグロ・カズオ氏のことは知っていた。
アーサー王時代のイギリスを舞台にした小説『忘れられた巨人』は、私も読んでみたいです。
村上春樹氏は日本国籍なので、来年は受賞するでしょう?