じじぃの「科学・地球_393_人類の起源・はじめに」

Great Transitions: The Origin of Humans - HHMI BioInteractive Video

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Yjr0R0jgct4

人類の起源


Human Origins and Ancestry

●Ancient DNA Tells Our Species' History
Nearly 20 years ago, scientists developed techniques for extracting small amounts of DNA from ancient samples, like bones or fur or even soil, and used very sensitive methods for sequencing the extracted DNA [see DNA Sequencing].
Genomic studies like these have allowed us to examine human genomes from around 500,000 years ago when our ancestors (the species Homo sapiens) were diverging from other similar species, such as Homo neanderthalensis or Neanderthals.
https://www.genome.gov/dna-day/15-ways/human-origins-ancestry

『人類の起源 古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』

篠田謙一/著 中公新書 2022年発行

はじめに より

スペイン語Bonanza(ボナンザ)という単語は、「豊富な鉱脈」や「繁栄」を意味する言葉です。英語では「思いがけない幸運」、「大当たり」という意味も持っています。一見なじみのないこの言葉ですが、ここ数年、古代DNA研究の活況を表す言葉として盛んに使われるようになっていることをご存知でしょうか。
その背景には、次世代シークエンサの実用化が大いに関係しています。詳しい説明は本文に譲りますが、次世代シークエンサの技術を使うと、サンプルに含まれるすべてのDNAを高速で解読することができるのです。今世紀の初めころまで、技術的な制約から古人骨はミトコンドリアDNA(細胞内に数多く存在します)しか分析できませんでした。しかし2006年に次世代シークエンサが実用化すると、大量の情報を持つ核のDNAの解析が可能になります。その後、2010年にネアンデルタール人の持つすべてのDNAの解読に初めて成功するなど、古代DNA解析にもとづいた人類集団の成り立ちに関する研究が非常に活発になり、現在では世界各地の一流科学誌に毎週のように論文が掲載されています。古代DNA研究はまさに「ボナンザ」の時代を迎えているのです。
本書では、そんな古代DNA研究の最新成果をもとに人類の起源をたどってみたいと思います。なお、ここでいう「古代」とはancientの和訳程度の意味で、扱うのは数十万~数百年前と広い年代を生きた人びとです。
前もってダイジェストしておくと、これまで約20万年前にアフリカで生まれたとされてきた私たち原生人類(ホモ・サピエンス)ですが、もっとも近縁な人類であるネアンデルタール人のDNAを解析した結果、彼らの祖先と分かれたのは実は60万年ほど前だということが明らかになっています。
ネアンデルタール人ホモ・サピエンスとのDNAの比較によって、両者が分岐のあとにも交雑を繰り返していたことも判明しました。それだけでなく、他の絶滅人類とを交雑していたこともわかっています。ホモ・サピエンスの進化の道のりは、従来想像されていたよりもはるかに複雑なものだったのです。
進化を遂げた私たちの祖先は、アフリカを旅立ったあと世界各地にどのように広がり、定着していったのでしょうか。古代の人びとがどのように移動し、文化の形成に関わっていったのかについてはこれまで知る術(すべ)がなく、ほとんど顧みられることはありませんでした。しかし、現代人のDNAデータの解析、そして古人骨に残るDNAとの比較研究によって、その実態がすこしずつ判明しつつあります。その旅程は、中東からヨーロッパや南アジアに向かい、東南アジアやオセアニアに広がり、次いで東アジア、南北アメリカ大陸にまでおよぶ壮大なものでした。本書ではその道筋にしたがって、近年明らかになった成立の歴史を説明していきます。
各章では、世界各地に拡散した人びとがどのように現代の地域集団を形成していったのか、時代を追ってそのシナリオを眺めてみたいと思います。本文中で取り上げるように、古代文明の誕生する直前のヨーロッパやインドでは、これまでの常識を覆すような集団の大きな遺伝的変化があったことが明らかになっています。
さらに、私たちが「民族」という言葉で括っている世界各地の集団が、DNAから見るとまったく性質の違う集団の集まりだというケースもあることもわかってきました。世界各地に展開している人類集団は、ある地域における「これまでのヒトの移動の総和」といえます。そのため、特定の遺伝子分布の地域差は集団の成立を解明する有力な手がかりになるのです。
「古代の資料にDNAが解析可能な形で残っている」ということが示されたのは、1980年代のことです。その研究の本格的なスタートは、微量なDNAを増幅する技術であるPCR法の発明を契機としています。最近では、ウイルス検知のために使われることでも有名になりました。
古人骨に残るDNAの量はごくわずかなので、そのままでは解析することができないのですが、この方法がブレイクスルーとなって、その壁を乗り越えたのです。PCR法は医学同様、人類学にも多大な恩恵をもたらし、古代DNA研究という新たな学問分野を生み出すことになりました。
古代DNA研究のさらなる発展は、分子生物学の技術革新に牽引されて進んでいきました。とりわけ21世紀になって、ヒトDNAを解明するためのさまざまな方法が開発され、世界各地の人類集団のDNAの解析が進みました。DNAは私たちの体を形作る設計図であり、体内で行われているさまざまな化学反応を制御している遺伝子を記述する、いわば「文字」のようなものです。その研究が進むことで、たとえば病気や薬剤に対する抵抗性の違いが、DNAの違いに起因することも明らかになりました。
古代DNA研究は、集団成立のシナリオを明らかにするだけではなく、環境や病とヒトとの関係を解き明かすポテンシャルも持っています。たとえば肥満の遺伝子は、古代の人類にとっては生活に適応するものでしたが、現在ではライフスタイルの変化によって疾病の要因と見なされています。

DNAの変化を追うことで、ヒトが生物としてどのように環境に適応してきたのかを明らかにすることができるのです。それは社会の変化を考えるにあたって、とても重要な情報です。最近では「ヨーロッパ人の肌の色が現在の状態に近くなったのはいつごろからなのか」など、DNAの働き自体に注目した研究も行われるようになっています。

19世紀以降、生命科学の研究は、それまで宗教や人文社会科学の領域だと考えられていた分野に進出するようになりました。ダーウィンの進化論によって「神」の存在を前提とせずに生物の多様性を説明できるようになり、脳科学の進歩によって心の理解にも大きな進展がありました。そうして生命科学は、ヒトに関わる既存の学問、特に人文科学の分野に大きな影響を与えてきました。一般にはまだそれほど認識はされていないかもしれませんが、近年の古代DNAの研究は、同じくらい大きなインパクトを考古学や歴史学言語学の分野に与えており、さらには「人間とは何か」という巨大な問いにも新たな答えをもたらそうとしているのです。
いうまでもなく、そのほとんどは現在進行形で研究が進んでいるものです。研究のさらなる進展にしたがって、異なる結論が導き出されることもあるかもしれません。それでも、現時点で何が明らかになっており、古代DNA研究が何を目指しているのかを学ぶことで、この研究の行き着く先を見通すことができるはずです。本書がその一助になれば幸いです。

じじぃの「認知症・ApoE4・心の持ち方で進行が遅くなる?日本人の遺伝子」

APOE4 gene and associated risk for Alzheimer's disease | Dale Bredesen

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ecC9J_jdXmM

認知症になりやすい人 (ApoE4 遺伝子)


近年、新たに分かってきた認知症の危険因子:一から学ぶ、認知症

2016/1/20 日経Gooday
●ApoE持つ人には、認知症の予防法が効かない!?
鳥羽さんによればApoE4を持っている人は平均70歳代でアルツハイマー認知症を発症するという。
また、この遺伝子を持っている人は、生活習慣の改善など、一般的に良いと言われている認知症の予防法が効きにくい。例えば、少量であれば認知症予防になるとされるアルコールも、ApoE4を持っている場合は、効果がないか逆効果の可能性もあるのだという。
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/15/062500024/011800023/

『日本人の遺伝子からみた病気になりにくい体質のつくりかた』

奥田昌子/著 ブルーバックス 2022年発行

第4章 設計図の違いだけで「なる病気」は決まらない より

病気のスイッチを切る心の働き

このように(ストレスなど)、心のありようは遺伝子の働きを大きく変えますが、望ましいエビジェネティクス変異を引き起こすこともあります。高齢化が進むなか、日本でも患者さんが多い認知症について、なりやすさを高める遺伝子のスイッチをオフにできる可能性が指摘されています。
アルツハイマー認知症になりやすいタイプの遺伝子にApoE(アポイー)4があります。ApoE4を持つ人に認知症が発生する確率は人種によって差があり、ApoE4を持たない人とくらべて欧州系は4.3倍、日本人は3.9倍、そしてアフリカ系では2.1倍高いことがわかっています。
ただし、同じようにApoE4を持っていても、認知症と診断される年齢や進行速度には個人差があります。何がその違いを決めるのかについて、2018年に驚くような研究結果が公表されました。
平均年齢72歳の米国人約4800人に参加してもらい、はじめにPGCモラールスケールという評価法をもちいて、加齢についてどう感じているかを判定しました。ここには「歳(とし)を取り、役に立たない人間になったと感じる」などの質問が並んでいます。また、唾液から採取したゲノムを調べることで、このうち1250人がApoE4遺伝子を持つことがわかりました。
その後4年にわたって認知症の発生率を調べたところ、年齢を重ねることを前向きにとらえていた人は、そうでない人とくらべて認知症の発生率が明らかに低かったのです。
年齢、教育歴、性別、人種、心臓の病気や糖尿病があるかないか、調査開始時点での認知能力などで調整したデータです。
参加者全員のなかで加齢を前向きにとらえているグループは、そうでないグループとくらべて認知症の発生率が約56%と半分で、ApoE4遺伝子を持つ人に限ると、半分以下の約44%でした。「気の持ちようなんて非科学的だ」と思う人がいるかもしれませんが、この研究は現在の知覚をふまえて、最大限厳密に実施されたものです。心のありようが病気のスイッチを「オフ」にしたと考えざるを得ません。

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どうでもいい、じじぃの日記。
『日本人の遺伝子からみた病気になりにくい体質のつくりかた』という本に、人種間に結構 病気になりやすい、なりにくい、があると書かれていた。

アルツハイマー認知症になりやすいタイプの遺伝子にApoE(アポイー)4があります。ApoE4を持つ人に認知症が発生する確率は人種によって差があり、ApoE4を持たない人とくらべて欧州系は4.3倍、日本人は3.9倍、そしてアフリカ系では2.1倍高いことがわかっています」

「病気は気から」と言われる。
実際、高齢になって、人から役立たずと言われたり、歳(とし)をネガティブに思ったりすると、認知症の進みぐあいが速くなるのだとか。
しかし、もともと、「役立たず」はどうなんでしょうか。
トホホのホ。