【極地研公式】#95 南極氷床~地球最大の氷に何がおきているのか?~ 新学術領域研究 『熱ー水ー物質の巨大リザーバ 全球環境変動を駆動する南大洋・南極氷床』
グリーンランドや南極の氷に含まれる気泡の酸素量が減少し続けている
地球から「酸素が消えていく」謎 プリンストン大教授らが指摘
2016.10.01 Forbes
地球上の酸素量が減少し続けていることが、プリンストン大学のダニエル・ストルパー(Daniel Stolper)教授の研究により明らかになった。教授はグリーンランドや南極の氷に含まれる気泡を調査し、その結果をサイエンス誌に発表した。
https://forbesjapan.com/articles/detail/13761
授業実践記録(理科)
何%の酸素があれば燃えるのか?
燃焼後の空気には約17%の酸素が残っている。つまり,「酸素が約4%減ると,ロウソクの炎は消える」。
https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/j-kadaiscie/0809/index.htm#:~:text=%E3%81%A4%E3%81%BE%E3%82%8A%EF%BC%8C%E3%80%8C%E9%85%B8%E7%B4%A0%E3%81%8C%E7%B4%84%EF%BC%94,%E3%83%AD%E3%82%A6%E3%82%BD%E3%82%AF%E3%81%AE%E7%82%8E%E3%81%AF%E6%B6%88%E3%81%88%E3%82%8B%E3%80%8D%E3%80%82
『日本列島はすごい――水・森林・黄金を生んだ大地』
伊藤孝/著 中公新書 2024年発行
6章 森林・石炭・石油――列島の燃料 より
1 火のちから
焚き火小説に駄作なし
ある日、気分転換にSNSを眺めていたら、こんな文章が飛び込んできた。「焚き火を描いた短編小説、名作にしかない説」。これはなぜか心にひっかかった。その方が挙げていたのは、ヘミングウェイ「2つの心臓の大きな川」、志賀直哉「焚き火」、ジャック・ロンドン「火を熾(おこ)す」、スタインベック「朝めし」、村上春樹「アイロンのある風景」である。
私の本棚にあったのは『神の子どもたちはみな踊る』に収められた「アイロンのある風景」のみだったので、それを再読してみた。はじめて読んでからもう20年以上経過しており、初読と変わらず新鮮。舞台は茨城の海岸沿いの小さな街で、世代も出自(しゅつじ)も違う者が、砂浜で焚き火に顔を照らしながら徐々に響き合っていく。
テレビが元気だった時代、「焚き火はキャンプのテレビ」と称された。今ならさしずめ「キャンプのスマホ」だろうか。要するに、何時間でも眺めていられるということ。ただし、焚き火を眺めているときとスマホでせわしなくSNSやYouTubeを追っているときでは、心持ちはだいぶ異なる。実際、火を眺めることの心理的な効果については、科学的にも探究が始まっている。オール電化の建物が増え、火はわれわれの生活から遠い存在になったが、古典的な焼き芋だけでなく、焚き火調理は根強い人気がある。また一軒家を新築するとき、親父の夢は薪ストーブだ。
検証はできないかもしれないが、一般に、われわれが飽きずに焚き火を眺めていられる背景には、人類と火との長く密接な関係があるといわれる。火われわれをは他の強力な動物や寒さから守った。そして、そのままでは食べられないもの、消化の悪いものを加工した。細菌を殺し、食感を良くし、香ばしさを加えた。さらには、森林を一瞬で焼き尽くし、草原に変える働きまでした。炎を眺めつつ、これら原初の火との体験を思い起こしているのだろうか。さて、人間にとってこの絶対に欠かせないものである火は、いつから地球に存在するのだろう。
まとめ
本章ではまず日本列島が植生豊かで、肥沃な土壌が存在する背景をみてきた。
それは単一の要因ではなく、豊富な降雨量、火山の存在、黄砂の供給、岩石の若さ、ヤギ・ヒツジの不在、氷床が発達しなかったことなど、無数の偶然に支えられたものであった。
日本列島がユーラシア大陸から独立する直前、湿った大陸縁辺で作られた石炭は、日本列島にも相続され、日本の高度成長を支えた。
日本列島の独立後、列島の大改造の時代に細長い海を埋め立てることに一役買った珪藻は大量の有機物を地層中へと埋没させ、メリハリをつける運動のもと、石油へと姿を変え、われわれが回収可能な油層となった。
そして現在、地球には炎が存在できるほど、大気中には酸素が存在している。これらは、酸化分解まぬがれた有機物が地層に埋没してくれたおかげである。
二酸化炭素の増加による温暖化、石油の枯渇はのっぴきならない問題として理解されている。しかし、「酸素減少」問題を皆心配していないのはなぜだろう。もちろん、地球が温暖化し、限界値を超え、別の気候ステージに変わってしまうことは重大事件だろう。でも、大気中の酸素濃度が減少し、「火がつかない地球」になることは、より深刻な問題ではないだろうか。ある朝、「お茶でも飲もう」とガステーブルのツマミをひめっても火が付かない。それにちょっと息苦しい。B級パニック映画のオープニングのようではないか。枯渇するほど石油を使っているのに、酸素減少は大丈夫なのか。
大気中の酸素を専門にして研究している学者は、心配ご無用という立場である。それは、石炭にしても、石油にしても、地層に埋没された有機物のごくごく一部であるからだ。化石燃料を埋蔵量すべて燃焼させても大気中酸素の0.5%を消費しないらしい。
火が付かない酸素濃度16%まではまだまだ余裕があるそうだ。
でも、熱帯雨林は1分間で東京ドームの約2個分のペースで地球上から消えている、といった報道を目にするし、車で移動するあいだについ最近まで森だったっところがソーラーパネルで埋め尽されているのを見たりすると、やや不安になる。化石燃料の消費だけではなく、現在進行形で光合成を担っている場所が切り崩されているのだから。
近年、南極氷床に取り込まれた気泡の研究から、過去80万年間、コンスタントに大気中酸素が減り続けている様子が観測されている。(DA Stolper "A Pleistocene ice core record of atmospheric O2 concentrations")。
いうまでもなく、人間が本格的に火を使用する以前から、自然現象として酸素が減少していることを意味している。