末日聖徒イエス・キリスト教会モルモン教とは何か? 後編
2023年5月18日 BS朝日
アメリカ西部ユタ州の州都・ソルトレイクシティー。
末日聖徒イエス・キリスト教会・通称モルモン教が築いた宗教都市としても知られています。そもそもモルモン教とはどのような宗教なのか?今回は100年以上の歴史を持つモルモン教の合唱団テンプルスクウェア・タバナクル合唱団の公開練習を取材。メンバーで日本人の信徒に話を聞く。さらに日本人宣教師も取材。
https://www.bs-asahi.co.jp/machiyama-now_cnn/lineup/prg_243/
『アメリカ50州がサクッとわかる本』
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ユタ州 モルモン教徒が開拓した砂漠地帯 より
面積と人口 面積はイギリス本島と同程度
ユタ州の面積は、21万9887km2。イギリス本島であるグレート・ブリテン島よりもわずかに大きな州だ。人口は338万人程度。
地勢と気候 塩分濃度の高い湖を有する内陸州
合衆国の中西部に位置する内陸州である。ロッキー山脈の西にあり、州の中央から南東部にかけて、「グレート・ベースン」と呼ばれる砂漠地帯が広がる。州の北にはグレートソルト湖があり、ミシシッピ川以西では最大の湖だ。その塩分濃度は27%にもある。中東の死海に次いで塩分の濃い湖であり、海水よりも8倍濃い。
政治風土 共和党の地盤
共和党が優勢にある。州の多くをなすモルモン教徒らは中立なのだが、彼らの禁欲的な生活態度は保守的な共和党と重なる。
迫害され流れ着いたモルモン教徒が州都を建設
ユタ州といえば、モルモン教徒の州である。モルモン教は正確には「末日聖徒(まつじつせいと)イエス・キリスト教会」というキリスト教の一派である。ユタ州の人口のおよそ6割は、モルモン教徒たちだ。
モルモン教徒は、敬虔にして禁欲的であり、酒も飲まないし、たばこも吸わない。彼らは勤勉な開拓者であり、州都ソルトレークシティを建設してきた。ソルトレークシティでは、2002年に冬季オリンピックも開催されている。
ただ、モルモン教徒たちがソルトレークシティに安住するまでは、苦難の道があった。モルモン教は、1830年に教祖ジョセフ・スミスが東海岸で神の啓示を受けたところからはじまる。その後、モルモン教団は迫害を受けて、西へと向かう。彼らは独自の共同体をつくろうとして、地元の住民との軋轢(あつれき)を生みがちだった。加えて、彼らの一夫多妻制が受け入れられなかったのだ。
教祖であるジョセフ・スミスがイリノイ州で殺害されたのち、新たに教団を率いたのはプリガム・ヤングである。彼に率いられて教徒たちはイリノイ州からさらに西へと向かい、ロッキー山脈を越えた。彼らによって、ネヴァダ州のラスベガスも建設されるが、この大移動で根拠地となったのがソルトレークシティだった。
ただ、その後も合衆国政府との軋轢があり、アメリカ陸軍相手の戦争も経験している。合衆国政府は、ユタを州に昇格しようともしなかった。モルモン教の一夫多妻制度を嫌悪していたからだが、モルモン教が一夫多妻制を禁止したところから、1896年に45番目の州に昇格させている。