日本の医療を外国と比べられる数字の情報はないの?
2019年03月19日 ニッセイ基礎研究所
2018年5月、世界の五大医学誌の1つランセット(Lancet)に「ヘルスケア・アクセス・アンド・クオリティー・インデックス(HAQインデックス)」の世界195か国ランキング(2016年版)が掲載されました。
第1位アイスランド、第2位ノルウェー、第3位オランダと、ヨーロッパの中規模国が上位に名を連ねています。G7の7ヵ国に着目してみると、イタリアが第9位でG7中の最高位にランクされ、次いで、日本がG7中の第2位(全体順位第12位)に位置づけられています。その他のG7国は、カナダ(第14位)、ドイツ(第18位)、フランス(第20位)、英国(第23位)、米国(第29位)の順になっています。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=61120?site=nli
LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界
【目次】
はじめに――いつまでも若々しくありたいという願い
■第1部 私たちは何を知っているのか(過去)
第1章 老化の唯一の原因――原初のサバイバル回路
第2章 弾き方を忘れたピアニスト
第3章 万人を蝕(むしば)む見えざる病気
■第2部 私たちは何を学びつつあるのか(現在)
第4章 あなたの長寿遺伝子を今すぐ働かせる方法
第5章 老化を治療する薬
第6章 若く健康な未来への躍進
第7章 医療におけるイノベーション
■第3部 私たちはどこへ行くのか(未来)
第8章 未来の世界はこうなる
第9章 私たちが築くべき未来
おわりに――世界を変える勇気をもとう
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第9章 私たちが築くべき未来 より
健康保険制度が不十分なアメリカでは平均寿命が短い
ヨーロッパのような健康保険制度が充実している国々の一方で、立ち遅れている国々もある。なかでも、とある1つの国はむしろ後退している。それがアメリカだ。
カロリーと麻薬への依存が急激に高まっているうえに、医療保険制度が不十分である(未加入の国民も多い)。そのせいで、近年のアメリカでは1960年代前半以来初めて平均寿命が低下した。その寿命の落ち込みは、1918年にスペイン風邪が大流行したときを近々上回りかねない勢いである。アメリカはGDPの17%を医療に支出しており、それはオーストラリアの2倍近くだというのに。
今住んでいる国を悪くいうつもりはない。家族も私も非常に温かく迎えてもらってきた。それでも私は歯がゆくてならない。人類を月に送った国に初めて着いて以来、比較的少ない資金で多くの人を救える機会があっても、それが繰り返し無駄にされるのを見て衝撃を受けてきたからだ。
アメリカは公共部門でも民間部門でも、人命を救う医学研究への出資で先頭に立ってきた。ある推計によれば、世界の医薬品の57%がアメリカで開発されている(世界はますます密接につながり合っているので、あらゆる薬の起源をたどるのは難しくはあるが)。医学研究にそこまでの資金が投じていない国は、アメリカが薬を発見・開発してくれていることに感謝すべきだろう。そのおかげで自分たちの寿命がますます長くなっているのだから。
これが公正な世界であれば、アメリカの国民こそが、どこよりもその恩恵を受けていなくてはおかしい。ところがそうはなっていない。
オーストラリア人は恩恵を受け取っている。イギリス人もしかりだ。スウェーデンもオランダ人も、アイルランドもスロベニア人も同じである。寿命や健康寿命の増加に関しては、これらのどの国民もメリットを得ている。なぜかといえば、国民の誰もが健康保険制度を利用できるからだ。なのにアメリカではその制度を、民主党員の15%と共和党員の半数が恐れている。
アメリカ人全体の平均寿命はオーストラリア人より4年短い。だが、そう指摘するだけでは真実は伝わらない。アメリカの最も貧しい地域では、寿命がそれよりさらに10年少ないのである。
オーストラリアの例からもわかるように、誰もが良く健康に生きるようになれば、誰もがより良い暮らしを送れるようになる。なれならに、なぜこのことがアメリカで非論されないのだろうか。鋤(すき)や鍬(くわ)やプラカードを掲げて連邦議会議事堂に突入し、もっと支出を、誰もが利用できる健康保険制度を、地球で一番健康な寿命をと、どうして市民は叫ばないのか。ほかの国々の健康寿命がどんどん延びていくのを見れば、さすがのアメリカ人も目を覚まして格差を嗅ぎつけるかもしれない。
しかし、そんなことは起こらない気もする。2018年に世界保健機関(WHO)が「世界の医療制度ランキング」(画像参照)を発表したとき、アメリカは37位だった。ドミニカ、モロッコ、コスタリアといった国々より下であり、スロベニアの1つ上である。それでも、アメリカの政治家からしきりに聞こえてくるのは、やはりアメリカの医療制度は世界一だという声なのだ。なんら正当な理由もないままに、そしてそれを大勢の市民が信じ込んでいる。