じじぃの「科学・地球_482_温度から見た宇宙・生命・体温・発熱の原因」

【ワクチン】「高熱出た人ほど抗体の量多い」研究結果を発表

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=cjgBPjb_sA4


食中毒の原因・症状

大正製薬
●食中毒にかかると下痢、腹痛、嘔吐、発熱などが現れる
食中毒は下痢、腹痛や嘔吐が主な症状で、下痢は水のような物や粘液や血液が混ざった物などが見られます。発熱が起こる場合もあり、かぜと間違えて放置すると処置が遅れることもあるので注意が必要です。
いずれも倦怠感や微熱感があるなどの前駆症状が現れ、それぞれの症状が顕著になりますが、食中毒かどうか症状がはっきりせず診断が困難な場合もあります。食品を食べて症状が出るまでの潜伏期間は、食中毒の原因となる細菌・ウイルスや、どのくらいの量を食べたかによって異なります。
https://www.taisho-kenko.com/disease/217/01/

『温度から見た宇宙・物質・生命――ビッグバンから絶対零度の世界まで』

ジノ・セグレ/著、桜井邦朋/訳 ブルーバックス 2004年発行

第1章 37.0度C より

事が悪く運ぶとき

現代医学をもってしても、発熱の原因を見出すことは、困難である。病院で1、2週間検査しても、少なくとも約38度Cの熱が、何の説明もつかずに3週間も続くことがある。こうした謎めいた発熱は特に困ることなのだが、病気の原因がわかっている時でも、発熱の経過を記録することは重要である。
体温、血圧、脈拍、それに呼吸の状態は、患者のベッドに張りつけられた表に記録される4つの必須項目である。その理由は、これらの項目が、時に病状を反映するからなのである。たとえ、病気が何かわからず、どのように扱ったらよいかわからない時でも、これら4つの機能は病気の進み合いを教えてくれ、回復のヒントを与えてくれるのである。
高熱は特に重大な危険性のあることを示す。髄膜炎チフス、肺炎のような急性の感染症では、持続的な発熱で42度C以上にまで体温が上がり、発熱をもたらした病気そのものとは無関係に、患者に重大な危険を生じさせることになる。震えや意識の混濁、けいれんが起こり得る。
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熱がある時、視床下部にセットされた温度を正常に戻すには2つの方法がある。1つ目は発熱因子を取り除くこと、つまり、サイトカインを生産する細菌を殺すことである。2つ目は、プロスタグラディンの合成を阻止するアスピリンなどの薬品を服用することである。つまり、情報の末梢と、情報媒体の破壊である。
アスピリンのような薬品は、およそ100年前から知られるようになったにすぎないが、これに似た薬はずいぶん昔からわかっていた。現代医学の父といわれるヒポクラテスは、紀元前5世紀に柳の樹皮からの抽出物を処方することにより、熱と痛みを治療した。柳のラテン名はサリクス(salix)で、樹皮中の活性成分はサリシンである。
ただ、残念ながら、サリシンは胃の不調をひき起こす。しかし、1897年、バイエル社の化学者がアセチルサルチル酸を合成することにより、サリシンを大改良したのだった。アセチルスピリンとして知られるこの新製品は、1899年にバイエル社からアスピリンという名前で市場にでまわった。1915年に処方箋なしでも購入できるようになったが、サリシンほどには副作用は生じなかった。その価値は非常に早く認められたが、プロスタグラディンを抑える働きが証明されたのは、ずっと後のことで、1970年代のジョン・ヴェーンの研究によって明らかとなった。彼はその功績で、1982年にノーベル賞に輝いた。
けれども、現代医学のあらゆる手段を用いても、医者が患者に発熱の原因についての明確な診断が得られないことがしばしばある。幸運にも処置が素早く、症状が劇的に改善することもある。20世紀にいたるまでは、感染を処置する有効な薬剤がほとんどなかった。抗生物質の使用が始まるてから、やっと50年にしかならない。これに関連するものとして、1999年6月9日の『ニューヨーク・タイムズ』紙に出た死亡記事を紹介しておく。
  アン・シーフ・ミラーは、ペニシリンに命を救われた最初の患者として、医学史上で知られる人だが、コネティカット州ソールズベリーで5月27日になくなった。享年90。
  1942年3月、ミラー夫人はニューヘイヴン病院で瀕死の床にあった。当時、ありふれた死因だった連鎖球菌の感染で苦しんでいたのだった。42度C近くまで急上昇する体温のため、時々うわごとを言う彼女は、1ヵ月間入院していた。その間、医師たちはサルファ剤、輸血、手術などを含むあらゆる手段を尽くした。だが、すべて失敗した。

そして、1928年にサー・アレクサンダー・フレミングが発見したペニシリンを使用して、ミラー夫人夫人は奇蹟的に回復。それまでは、ペニシリンの治癒力がいかなるものか、完全な評価はなかった、と話は続く。彼女が運がよかったのは、発熱の原因がわかっていたので、処置法があったことである。
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感染の危険性に気づいたのはパストゥール(フランスの細菌学者、感染症の原因が微生物であることを発見し、また病原体を弱毒化し接種するワクチンを開発した)だが、けがや手術のあとに起こる感染を抑える殺菌処置という考え方を発展させ、系統化させたのは、スコットランドn若い外科医、ジョゼフ・リスターである。リスターがパストゥールに宛てた1874年の手紙を引用しよう。
  あなたのすばらしい研究によって、腐敗が細菌によって起こるという説の正しさが証明されたことと、消毒設備だけがそれを防いでくれるとする原理を示してくれたことに対し、最高の愛をこめた感謝を捧げます。

私たちはしばしば細菌を体内への侵略者だと考えるが、細菌の多くは体内で静かに生きており、何の問題も起こさないのである。悪名高き大腸菌は、実はどこにでも棲んでいる。この細菌は私たちの結腸中に静かに棲んでおり、実際にこの細菌が繁栄していない哺乳類を見つけることは難しいのである。大腸菌が腸の外へ出て、例えば、尿管へと移動すると、炎症をひき起こすが、通常は、それほど大きな問題にはならない。
大腸菌の中には有害な系統もおり、中には危険な系統が発現することもある。中でもO157:H7は特に危険である。この細菌は、汚染されたハンバーガーで感染者を出した1980年代初期に、初めて同定されたのだった。大腸菌O157:H7が発生してパニックが起きると、その治療の方法と、汚染を防ぐ手段が探し求められた。幸いなことに、ハンバーガーについては簡単な方法が見つかった。それは、約70度Cで15秒間調理すれば、殺菌に十分だということであった。だが今もなお、O157:H7の感染は、アメリカ全体で年間7万5000例もある。
約70度Cに加熱しても、常に十分とは限らない。私たちは今では、ゲノムの配列を知っている。科学雑誌『ネイチャー』の2001年1月25日号には、大腸菌O157:H7の完全なゲノムの配列を示す論文がでている。この論文の著者たちは「O157:H7の病因検出法に対する研究を推進したのは、この病気の激しさ、有効な治療法の欠如、それに汚染した食品供給から生じる大規模な流行への潜在的脅威があったからである」と言っている。完全な配列の解明が、よりよい診断法と治療法の導入につながるかもしれない。しかし、今のところは、ハンバーガーにしっかりと火を通すしかない。

発熱を伴うさまざまな病気の治療法はないし、それどころか、なぜ熱が出るのかが、まだ明確にはわかっていない。発熱に対する説明として、数度の体温の増加が侵入してくる細菌を殺すのだという説だけでは、明らかに十分ではない。

例えば、肺炎球菌のような細菌は温度に特別な感受性があり、41度C以上ではほとんど増えないが、一般的にほとんどの細菌を殺すためには、体温を人体の限界以上に上げなければならないのである。医療器具の消毒や肉類の調理は、決まって70度C以上の温度でなされる。
もし、細菌を殺すことが体温上昇の理由でないとしたら、本当の理由はなんだろうか。