じじぃの「科学・芸術_1009_台湾・安全保障・台湾有事」

台湾空域に中国軍機 米長官の訪台を牽制か (20/08/11)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=5IX5lsikDWQ

中国共産党創建100年で演説する習近平国家主席


習氏、台湾統一は「歴史的任務」「能力見くびるな」と米牽制

2021/7/1 産経ニュース
中国の習近平国家主席共産党総書記)は1日の党創建100年記念式典での演説で、台湾統一は「党の変えることのできない歴史的任務」だと強調し、「平和統一の過程を進める」としながらも、「いかなる『台湾独立』のたくらみも粉砕する」と強調した。
同時に、「誰であれ、国家の主権と領土の一体性を守る中国人民の強い決心と能力を見くびってはならない」と述べ、台湾問題への米国などの干渉を牽制(けんせい)した。
https://www.sankei.com/article/20210701-7VEJKMXHXNJBTHQYLMKXXYONZY/

『台湾を知るための72章【第2版】』

赤松美和子、若松大祐/編著 赤石書店 2022年発行

Ⅴ 対外関係 より

第67章 安全保障――米中に翻弄され続ける台湾の防衛

台湾の安全保障、すなわち中台関係は、冷戦時代から常に東アジアにおける重大な安全保障問題として取り上げられてきたが、国際情勢の変化によってその内包的合意も変化してきている。本章では台湾の安全保障を概観したい。
1949年12月、中国共産党中共)との内戦(国共内戦)で敗北した中華民国中央政府中国国民党部は台北へ移転した。大局的にみて中共の武力による「台湾解放」はいつ実現されてもおかしくない状況であったが、朝鮮戦争の勃発によって米国は台湾海峡を「中立化」させた。その後、米台は1954年に米華相互防衛条約を調印した。
米国の目的は、台湾海峡の中立化と米華相互防衛条約で中共の「台湾解放」だけではなく、台湾の蒋介石政権が武力で中国本土へ反攻する「大陸反攻」をも阻止することにある。ここに、東アジアの冷戦体制に組み込まれる中台の対立構造と、米国による中台の武力衝突を阻止する構造が形成された。
蒋介石1860年代に「大陸反攻」を試みようとしたが、米国にもけん制された。米国の支援がなければ大陸反攻の実行は不可能であるため、蒋介石政権は軍事戦略を防衛中心へと事実上転換させた。台湾の軍事戦略は今日に至るまで、防衛という目的は変更されていない。
ところが、国際社会でどちらが「中国」を代表する正統性を有するのかという問題については、中国は蒋介石蒋経国政権の争いに勝利し、1970年代にかけて国連加盟や日本および米国と米国との国交正常化を果たした。台湾はこの失敗によって国際的な孤立状態に陥ったのである。
この点、日米は中国との国交正常化プロセスで台湾問題の平和的解決を前提として交渉していた。米中和解の上海コミュニケには「” It reaffirms its interest in a peaceful settlement of the Taiwan question by the Chinese themselves.”([米国政府は、]中国人自らによる台湾問題の平和的解決についての米国政府の関心を再確認する)。」という文言が記されている。また、米中国交正常化(米華断交)にも拘わらず、米国は国内法である台湾関係法によって台湾の安全保障にも関与している。米中が「武器輸出問題に関する共通コミュニケ」において台湾への武器販売を徐々に減らすことに合意した際にも、米国は台湾問題の平和的解決が絶対条件であることを台湾側に保証している(「6つの保証(The Six Assurances)」)。一方日本は、日米安全保障条約第6条の規定(いわゆる極東条項)によって、間接的に台湾の安全保障にコミットメントしてきた。日中国交正常化の際には、台湾を極東条項から除外しないことを前提として交渉を進めた。
このように、日米は台湾と断交したものの、中台の争いを抑止し、平和的解決を導かせるための枠組みが維持されてきた。中国が李登輝総統の米国訪問に反発し、1995年から1996年3月にかけて台湾周辺で軍事演習を実施した、いわゆる第三次台湾海峡危機において、米国は2つの空母戦闘群を派遣したとともに、中台と同時に対話し、危機を鎮静化させた。日本の橋本龍太郎首相も米国の対応に合わせ、中国の李鵬国務院総理に憂慮を表明したのであった。
他方、中国は、1979年から「武力行使」を「平和統一」の補助手段と位置付ける「平和統一」政策へと転換した。また、1つの国家に2つの異なった制度を共存させる「一国二制度(一国両制)」による国家統一を提案し、台湾との貿易・投資の優遇処置や接触に向けた準備などを整えていった。
これに対し、蒋経国政権は当初、「(中共とは)妥協せず、接触せず、交渉せず(不妥協、不接触、不談判)」という「三不政策」で臨んだ。
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また、蒋経国一国二制度の対象として民主化の推進を主張したとともに、交流の拡大によって中国本土の人々に台湾の民主化を認識させようとした。その結果、間接貿易の規制緩和渡航解禁に伴う台湾住民の大陸里帰り解禁などの措置が取られたのである。
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しかし、中台間の軍事バランスは2000年代から中国側に有利な方向に代わり、その差は年々拡大していく一方である。米国の軍事的抑止力も中国の台頭で相対的に低下してきている。しかも、台湾の対中経済依存度も高まっている。

蔡英文政権の発表では、中国が台湾の半導体に依存するようになった結果であるが、2020年1月から11月までの台湾の対中輸出額(香港含む)は対外輸出の43.8%を占めるまでに至っているという。

それに加え、習近平政権はより主導的に、台湾独立志向である民主進歩党蔡英文政権に対して自身の主張を受け入れるよう、多方面から圧力をかけ続けている。特に台湾の要人・政治機関などへのサイバー攻撃、親中のマスコミやSNSによるフェイクニュースの流布だけではなく、政治団体、宗教団体、中国に進出した台湾企業で台湾内部に影響を与えようとしている「シャープパワー」が近年では注目されている。
2021年4月16日に行われた日米首脳会議の共同声明では台湾海峡の平和と安定の重要性や、台湾海峡問題の平和的解決を促すことが強調されている。蔡英文政権が2021年に発表した『四年期国防総検討』(4年ごとの国防戦略の見直し)でも戦争予防、「防衛固守、重層抑止」が強調されている。つまり、日米が両岸の争いを抑止し、平和的解決を導かせるための枠組み、また台湾の防衛を中心とする国防戦略、軍事戦略という安全保障の枠組みには変更がないと言える。しかし、皮肉にも、経済交流や社会交流など、これまで中台関係を安定化させてきた交流活動は、中国がシャープパワーを用い、台湾に非伝統的安全保障の脅威を与えるルートになってしまったのである。そのため、従来の台湾の安全保障の枠組みがどこまで非伝統的安全保障の分野まで適用できるかは、今後台湾の安全保障を考える際の課題になると思われる。