じじぃの「太陽系を超えて・電波を用いた生命探査(SETI)!地球外生命」

Frank Drake on the Current State of SETI

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=7zreIzRxtoM

惑星科学の世界に大きな影響を与えたカール・セーガン

カール・セーガンを振り返る

2014.03.18 ナショナルジオグラフィック日本版サイト
1986年、カリフォルニア州パサディナのNASAジェット推進研究所で宇宙探査機ボイジャー2号について語るカール・セーガン
同機に積み込まれたゴールデンレコードの内容を決める委員長を務めたほか、NASAの惑星探査の多くで指導的役割を果たし、1980~1990年代前半のアメリカで、最も有名な科学者だった。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/9039/

『地球外生命-アストロバイオロジーで探る生命の起源と未来』

小林憲正/著 中公新書 2021年発行

第7章 太陽系を超えて より

電波を用いた生命探査――SETI

1959年、イタリアの物理学者ジュゼッペ・コッコーニは、米国のコーネル大学に滞在し、そこで米国の物理学者フィリップ・モリソンと共に学術誌ネイチャーに「星間通信の探査」という論文を発表しました。この論文では、地球外に知的生命体が存在するならば、彼らは電波を利用しているはずなので、その電波を捉えることにより知的生命の検出ができるのでは、というアイディアを発表しました。地球生命は、テレビ、ラジオ、無線通信などで電波を使っています。例えば、NHKラジオ第1は東京では594kHz(キロヘルツ)の周波数で放送していますが、この周波数が少しずれてもラジオは受信できません。地球外生命はどの波長の電波を使っているのでしょうか。コッコーニたちは、1.42GHz(ギガヘルツ)という高い周波数の電波を提案しました。宇宙で最も普遍的に存在する水素原子が出すエネルギーがこの周波数であることから、宇宙でもっともありふれた周波数の電波と考えられます。そこで、彼らは地球外生命も周波数の電波を用いているのでは、と考えたためです。地球外生命体(Extraterrestrial. Intelligence,ETI)との交信(communication)は、その頭文字をとってCETI(セチ)と呼ばれました。
モリソンと同じコーネル大学にいた天文学者フランク・ドレイク(1930~)も星間交信の考えを温めていました。しかし、コッコーニたちの論文に先を越されたため、その実施を急いで行うことにしました。1960年夏、ドレイクは米国ウェストヴァージニア州グリーンバンクにある国立電波天文台の18フィート電波望遠鏡を用いて、比較的地球に近い2つの恒星、くじら座タウ星(12光年先)とエリダヌス座イプシロン星(11光年)をターゲットとして1.42GHzの電波の観測を200時間行いました。くじら座を選んだのに理由があり、くじら座の英語名cetiがCETIと同じだったからです。
この計画は「オズマ計画」と名付けられました。この名前はライマン・フランク・ボーム(1856~1919)の名作童話「オズの魔法使い」シリーズのオズマ姫の名前に由来しています。シリーズ第6作の『オズのエメラルドの都』のエンディングにおいて外敵の侵入を防ぐためにオズの国は外界から遮断されてしまいました。しかし、シリーズの継続を望む読者のために、作者がオズマ姫と電波交信をすることによってオズの国の出来事を知ることができるようになり、第7作『オズのつぎはぎ娘』以降の執筆が可能になった、としたのです。つまり別世界と無線で交信するというアイディアがCETIと共通していたのです。
実歳にCETIでETIと交信するとなると10光年先でも電波が届くのに10年、その返事が戻ってくるのにさらに10年かかるわけで、非常に悠長な話になります。そこで、交信はあきらめ、「探査」(Search)に専念することになりました。この場合、その略称はCがSに変わりSETIとなりましたが、発音はセチのままです。
オズマ計画の後、欧米の天文学者を中心にSETIの試みが断続的に行われました。その中で代表的ものは1980年にスチュワート・ボイヤー(1934~2020)が始めたセレンディップ計画です。カリフォルニア大学バークレー校のSETI研究センターが中心となり、もともとあった電波観測プログラムに相乗りする形で観測を行いました。

ジル・タータ―とカール・セーガン

ここであらたなヒロインが登場します。ジル・タータ―はコーネル大学で工学を学んだのち、大学院では天文学に転向、そこでボイヤーと出会い、彼女の工学(コンピュータ)の腕を生かさないかと誘われてSETIの道に入りました。その後、セレンディップ計画など、様々なSETIプログラムで活躍し、ドレイクと共にSETIの二枚看板になります。
1984年、タータ―らは北カリフォルニアのマウンテンビューに地球外生命探査を目的とした非営利団体SETI研究所をつくりました。カール・セーガンらもこの研究所の理事を務めており、フランク・ドレイクは現在名誉理事です。現在は研究所内に研究の中核となるカール・セーガン研究センターも作られ、SETIのみならず火星生命探査などを含む様々なアストロバイオロジーのテーマに取り組んでいます。