じじぃの「歴史・思想_525_老人支配国家・日本の危機・日本は核を持つべき」

北朝鮮極超音速ミサイル発射と発表、米韓との交渉はこう着続く

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=a2wWmw2WWRo

North Korea nuclear test 10 times more powerful than Hiroshima bomb: Japan

Japan sees rising threats from China, North Korea, Russia

Sep 28, 2019
The North is now aiming to further increase missile ranges, improve accuracy and operational and surprise attack capability and diversify launching methods, it said.
North Korea's military activity "still poses serious and imminent threat" to Japan's security as well as international peace and safety, it said.
https://www.airforcetimes.com/news/your-navy/2019/09/27/japan-sees-rising-threats-from-china-north-korea-russia/

文春新書 老人支配国家 日本の危機 エマニュエル・トッド

本当の脅威は、「コロナ」でも「経済」でも「中国」でもない。「日本型家族」だ!
【目次】
日本の読者へ――同盟は不可欠でも「米国の危うさ」に注意せよ

Ⅰ 老人支配と日本の危機

1 コロナで犠牲になったのは誰か
2 日本は核を持つべきだ
3 「日本人になりたい外国人」は受け入れよ

Ⅱ アングロサクソンダイナミクス

4 トランプ以後の世界史を語ろう
5 それでも米国が世界史をリードする
6 それでも私はトランプ再選を望んでいた
7 それでもトランプは歴史的大統領だった

Ⅲ 「ドイツ帝国」と化したEU

8 ユーロが欧州のデモクラシーを破壊する
9 トッドが読む、ピケティ『21世紀の資本

ⅳ 「家族」という日本の病

10 「直系家族病」としての少子化磯田道史氏との対談)
11 トッドが語る、日本の天皇・女性・歴史(本郷和人氏との対談)

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『老人支配国家 日本の危機』

エマニュエル・トッド/著 文春新書 2021年発行

2 日本は核を持つべきだ より

茶番劇だった米朝交渉

米国は、核兵器を持った相手(北朝鮮)とは交渉し、核兵器を諦めた相手(イラン)には攻撃的に出ている。ここから得られる教訓は何か。米国は、核保有国には和平的な態度を取るが、非核保有国には威圧的な態度に出るというわけで、「米国と和平的交渉をしたいならば、核兵器を持った方がいい」というメッセージを全世界に向かって発しているも同然です。米国は、核拡散を奨励する外交を展開しているわけです。
さらにイラン核合意破棄は、意図せずとも、北朝鮮にはこれ以上ないほど直接的なメッセージとなって伝わります。イランは合意を順守していたのに、米国はそれを一方的に破棄した。この様子では、米国の言うことは信用できない、と。2018年5月中旬に北朝鮮が米国への批判を強めると、トランプは「中国の影響だろう」と発言しましたが、事の本質は、米国によるイラン核合意破棄にこそあります。イランの核問題と北朝鮮の核問題は、直接リンクしているのです。6月12日に首脳会談を開催するとの発表後に、北朝鮮の高官が「改めて考慮せざるを得ない」と最初に発言したのは、5月16日のことで、5月8日のイラン核合意破棄の直後のことでした。
地政学において重要なのは、相手をバカだと思ってはいけない、ということです。もし北朝鮮の指導者がバカでなければ、イランへの対応を見て、米国を決して信用しないでしょう。トランプは6月12日の会談中止を表明し、水面下で米朝の駆け引きが続いていますが、実際に行なわれても騙し合いにしかならず、このままでは北朝鮮は決して核兵器を捨てようとしないはずです。ですから、仮に開催されても、米朝首脳会談は茶番劇にしかならない、と私は明言しておきます。
そうなると、見通せる範囲内での未来において、東アジアには、中国と北朝鮮の2つの核保有国が存在することになります。核を持たない日本は、2つの核保有国に隣接することになるのです。
このように言うと、すぐに「日本は米国の核の傘に守られている」と思われるかもしれませんが、私が問いたいのは、本当にそう言えるのか、ということです。
通常兵器による脅威については、日本は米国に保護されていると言えるでしょう。しかし、核兵器は別次元の存在です。まず、その点を理解しなければなりません。

米国の「核の傘」は存在しない

私の母国フランスは、核兵器保有し、抑止論を突き詰めた国ですが、抑止理論では、究極、核は純粋に個別的な自己防衛のためにある、ということになります。つまり、自国を保護する以外には用途がないのです。核は例外的な兵器で、これを使用する場合のリスクは極大です。ゆえに、核を自国防衛以外のために使うことはありません。

たとえば、中国や北朝鮮に米国本土を核攻撃できる能力があるかぎりは、米国が、自国の核を使って日本を護ることは絶対にあり得ない。米国本土を狙う能力を相手が持っている場合には、残念ながらそのようにしかならないのです。

フランスも、極大のリスクを伴う核を、例えばドイツのために使うことはあり得ません。要するに、「米国の核の傘」はフィクションにすぎず、実は存在しないのです。
こうなると、日本の核保有という問題を真摯(しんし)に検討する必要が出てくるのではないでしょうか。

中国は「砂でできた巨人」

中国については、今後、世界の覇権を握り、一種の「帝国」となるといったことがしばしば言われますが、「幻想の中国」と「現実の中国」を冷静に分ける必要があります。中国を必要以上に大きく見せるのは、中国でビジネスをする欧米の財界人で、中国の未来を過大評価することに経済的利益があるからです。
中国が、今後、「帝国」になることは、政治的にも経済的にもないでしょう。中国の未来は悲観せざるを得ないという点で、人口学者は一致しています。少子化と高齢化が急速に進んでいるからです。
とくに懸念されるのは、出生児の男女比です。106人(男子)対100人(女子)が通常比率であるのに対し、今日の中国では、118人(男子)対118人対100人(女子)という、将来の人口構成に悪影響を及ぼす異常値を示しています。出生前の性別判断が技術的に可能になり、女子の選択的堕胎が行なわれているのです。元来、中国の伝統的な家族構造は、「女性の地位の低さ」を特徴としていますが、近年の中国社会では、伝統的な価値が改めて台頭しているわけです。そんななか、中国からは若いエリート層がどんどん国外へ流出しています。中国経済は確かに成長を遂げましたが、内需が弱く、輸出依存の脆弱な構造になっています。中国は、いわば「砂でできた巨人」にすぎません。
では、そうした中国に日本はどう向き合うべきなのか。
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米国と世界が不安定化するなかで、安全保障問題は、核保有の是非も含めて、日本にとって今後、死活問題となるでしょう。
それにしても、最後に申し上げたいことがあります。国家が思い切って積極的な少子化対策を打つこと、出生率を上げるための社会制度を整えることこそ、安全保障政策以上に、日本の存亡に直結する最優先課題だということです。