じじぃの「科学・地球_237_SDGsがひらくビジネス新時代・最終章」

SDGs目標1|貧困ってなに?【アニメでわかるSDGs

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=LUO8IPslPBA

楽しくアクション!SDGs 滅亡させない∞地球の作り方

フジテレビ
SDGsエスディージーズ)は、地球上で今を生き、将来を生きるすべての人にとって、とても重要な目標です。
未来のために、私たちフジサンケイグループにできることは何だろう。 それは、身近なことから楽しくアクションする機運を盛り上げて、SDGsへの意識を世の中へ大きく広げていくこと。
https://www.fujimediahd.co.jp/sdgs/enjoyaction_sdgs/

ちくま新書 SDGsがひらくビジネス新時代

竹下隆一郎(著)
SDGsの時代を迎えて、企業も消費者も大きく変わろうとしている。ビジネスの世界は一体どこへ向かっているのか? 複眼的な視点で最新動向をビビッドに描く!
序章 SNS社会が、SDGsの「きれいごと」を広めた
第1章 SDGs時代の「市民」たち
第2章 優等生化する企業
第3章 「正しさ」を求める消費者たち
第4章 衝突するアイデンティティ経済
第5章 職場が「安全地帯」になる日
最終章 SDGsが「腹落ち」するまでに

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SDGsがひらくビジネス新時代』

竹下隆一郎/著 ちくま新書 2021年発行

最終章 SDGsが「腹落ち」するまでに より

「怪しい海外の横文字」

今でこそ大手メディアはテレビ番組などで、SDGsのことを積極的に取り上げるようになっているが、2019年事、この言葉はまだまだ「怪しい海外の横文字」だった。CSR(企業の社会的責任)、ISO(工業規格などに関する国際的な機関)、KPI(重要な業績を評価するためのの指標)――。ビジネス界にはいつも突然、3文字のアルファベットが入り込んでくる。2000年頃、情報を表す「IT」という言葉を森喜朗元首相は「イット」と読んだとされるが、SDGsを「エス・ディー・ジーズ」と読むことは、ようやく最近になって浸透してきた。
複数の単語のそれぞれ最初のI文字をつなげてつくる”新しい言葉”は「頭字語(とうじご)」と呼ばれて、英語圏の人が好んで使う。
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ネットも軍隊も、スピードが求められる。「頭字語」を使えば、よりスピーディに意思を伝えられる。それでいえばSDGsも、「まったなし」の課題であることがよく表れているように思える。
しかし、ネットや軍隊から生まれた頭字語がそうであるように、SDGsも、分かる人にしか分からないという、どこか内輪な感じがあって、「うさんくささ」が漂う。
ある大手民放のプロデューサーと話をしていたとき、SDGsの話になった。SDGs関連の番組を作れ、と上層部がうるさいのだという。「SDGsって、何だか偽善的というか、きれいごとに聞こえるんですよね」と本人はボヤいていた。本書では、私の個人的な経験も交えつつ、国際情勢から冷凍餃子まで、さまざまな話題を取り上げて、SDGsが何を目指しているのかを、読者のみなさんと一緒に、まるでジャングルジムを行ったり来たりするようにして考えてきた。だから、SDGsは「きれいごと」にとうてい収まらないものだということは、すでに理解していただけていると思う。

SDGsが「腹落ち」しない理由

でも、ひょっとしたら、この段階でも多くの人が、このテレビのプロデューサーと同じような印象を抱いているかもしれない。あるいは、本を手に取ってくれたものの、「最終章」から読み始めている方は(私もたまにそういう読み方をするので期にしないでください)、SDGsは何となく「うさんくさい」という気持ちを持っている可能性もあるだろう。
  SDGsには、健康、エネルギー、食料問題などに取り組む目標があり、こうした各目標を追求するビジネスなどを行うことで、日本のGDPの2倍以上にあたる12兆ドル(1320兆円)の経済成長機会がある。新たに最大3.8億人の雇用創出にもつながる。(SDGsは、)国連が企業の動きに誘発されて採択したものだ。(夫馬賢治『ESG思考』より筆者要約)
  オランダの大手総合化学メーカーで、サステナビリティ重視の経営の評価が高いロイヤルDSMの前CEO、フェイケ・シーベスマ氏は「10年前は社会的に善いことと利益とは相反していた。現在はそれらを両立させることが可能な時代になっている。そして10年後は、それらを両立できなければ、誰も働いてくれず、社会から望まれない会社になる」というメッセージを発している。(森・濱田松本法律事務所編『ルール・チェンジ武器としてのビジネス法』より筆者要約)
このように、いまの世界は「きれいごと」ではなく、ビジネスに突き動かされた結果として変化が生じている。これまでと異なる経済のフレームワークが形作られている。それでも、どうしても「しっくり来ない」という人に私は何度も会ってきた。
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資本主義の限界が指摘され、経済成長をストップさせる「脱成長」の議論も注目されるなか、企業と手を組むSDGsは、はたして「まやかし」なのか。環境問題の解決には効果のないSDGsのビジネスもこれから多く出てくるはずで、私あっちは注意深く比較検討しなくてはいけないのは確かだ。

「見えないもの」の時代へ

本書では、現代社会におけるさまざまな「心の動き」を見てきた。
第1章では、市民がアイデンティティに根ざした発信をし、企業がそれと対峙していく様子を検討した。こうした新しいトレンドに、うまく対応してきた企業が優等生化している(第2章)。第3章では、生々しいほどの内面をさらけだす消費者たちの登場について検討した。こうした状況が、消費者同士のアイデンティティの衝突に発展する可能性について第4章で触れ、こうした課題をいかに乗り越えるかを考えた。その上で第5章では、一人ひとりの従業員が自分の「心の中」を安心してオープンにできる職場を構築できるかどうかが、これからの課題であることを示した。
そしてこの章で何度も検討してきたように、現在は、心の時代、アイデンティティの時代だ。形なきモノが経済を動かす時代だ。
その背景には、環境問題や人権尊重などがビジネスの主要課題となり、企業価値が有形資産から無形資産へとシフトし、グローバル化によってステークホルダーが増えてきたことがある。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大によって、私たちは「見えないもの」と戦っている。そこにはウイルスが肉眼では見えないという意味もあるし、自粛警察やウイルスへの恐怖によって社会が停滞してしまうという意味もある。さらに、本書では検討しなかったが、現代社会の大テーマであるAIの発達によって、人間の心とはなにかという問いが私たち人類につきつけられている。

SDGsの時代となって、私たちは「見えないもの」に突き動かされている。

SDGsは国連が突然言い出したから広まったわけでも、どこかの広告代理店が仕組んで流行らせているわけでもない。
それは見えるものの時代から、見えないものの時代へと移行したことを意味している。多くのビジネスパーソンたちは、このことを意識しないといけないのだ。消費者らから批判されるなど「炎上」を経験した、複数の企業の幹部に私は会ったことがある。日頃から価値観について考えている人ほど、「回復力」が早い。反省すべきところは反省し、会社としてのアイデンティティをさらに磨き上げていく。一方、倫理や哲学など抽象的な「見えないこと」の思考に慣れていない人ほど右往左往する。では、この見えないものをどうとらえるのか。最後は自分の「腹」に問いかけるしかない。そのためには、どうしたらいいか。仕事で揺れ動く自分の心の声を言葉にして、アイデンティティを問い直し、他者と交流していくしかない。