じじぃの「歴史・思想_402_2050年 世界人口大減少・近い将来に凋落する中国」

India vs China Population Growth (1950 - 2050)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=5ff8cL7VfrM

India's Population Is Expected To Overtake China's In 2027

Jun 18, 2019 Statista
The United Nations has released new statistics about global population growth and by 2100, it's estimated that the planet will have to sustain 11 billion people.
Between now and 2050, India is expected to show the highest population increase of any nation, overtaking China as the world's most populous country in around 2027. The countries expected to record the next biggest increase are Nigeria, the Democratic Republic of the Congo, Ethiopia and Tanzania.
https://www.statista.com/chart/18413/estimated-growth-in-india-and-chinas-population/

『2050年 世界人口大減少』

ダリル・ブリッカー、ジョン・イビットソン/著、河合雅司/解説、倉田幸信/訳 文藝春秋 2020年発行

象(インド)は台頭し、ドラゴン(中国)は凋落する より

いま、中国とインドで生まれる子供が、もしくは生まれなかった子供が、人類の未来像を決めることになる。我々人類の3分の1超がこの2国のどちらかに住んでいるからだ。両国で今年何人生まれるか、来年は何人か、その子たちは何歳まで生きるのか――それが将来の世界人口のベースラインになる。人口統計学者はこの2国を正しく理解する必要がある。地球環境も世界経済も大国の興亡も、すべてはこの2国にかかっている。
国連人口部の予測によれば、中国の人口は2030年ごろに14億人台でピークに達し、その後は減少して2100年までに10億人を多少上回る程度になるという。劇的な人口喪失としか言いようがない。一方でインドの人口予測については、2060年までに17億人あたりまで増え、その後は緩やかな減少に転じるとしている。おそらくこの予測は外れるだろうと私は見ている。中国の人口は「減少」では済まない。ほぼ「崩壊」に近いことになる恐れがある。また、インドの人口は決して17億人に達することはないだろう。以下で、そう考える根拠を説明する。

消された女

中国の一人っ子政策は、もうひとつ(人口減少と高齢化社会が同時に進む以外に)悲劇的な結果をもたらした。女児だったら中絶するという親が多く、中国の総人口から膨大な数の女性が消されたのである。男の子の跡継ぎを大事にするという中国の伝統と一人っ子政策が結びつき、この歪みが生じた。本来であれば男児105人に対して女児100人という男女比で生まれるのが自然だ。ところが中国では男児120人に対して女児100人という比率なのだ。この男女不均衡は、地方ではさらに激しいところもある。中国全体では3000万人から6000万人の女性が”足りていない”ことになる。ただし、その一部は、生まれてはいるが出生届けが出されなかっただけだろう。
もし本当に3000万人の女性が”足りない”とすれば、3000万人の中国人男性が妻を得られないことになる。しかも、中国では女性では女性は結婚するものとされているが、今は多くの中国人女性がキャリアを貫く権利のために戦っている。このため、仮に結婚するとしても、学歴や仕事を優先して婚期は遅くなる。近い将来、中国は孤独で性的欲求不満を抱えた男性を何百万人も抱えることになりかねない。どう考えても社会の安定にはマイナス要因だ。
中国の当局者は、一人っ子政策を止めさえすればベビーブームが起きるだろうと考えていた。だが、今のところベビーブームを起きていない。他の国と同様に、ひとたび小さな家族が当たり前になると、その常識は世代を超えて引き継がれる。”低出生率の罠”によって将来人口が制限されるのだ。中国では特にその傾向が強い。何十年にもわたり、小さな家族の素晴らしさを布教してきたからだ。加えて中国で不妊手術はによる避妊が一般的だ。出産年齢にある中国人女性のまるまる半数は、自分もしくはパートナーが不妊手術ずみだという。いまさら「2人目をどうぞ」と言われても、肉体的に不可能な男女が多いのである。

結婚は、ボリウッド映画では”夢”だが、現実では”義務”

インドでロマンチックな恋愛話はほとんど出てこなかった。独身女性は誰一人として、理想の男性像やおとぎ話のような結婚へのあこがれを語らなかった。人気のボリウッド映画(インド・ムンバイの映画産業につけられた名称)では夢のような恋愛ストーリーが主流であることを考えると、なんとも皮肉である。議論に参加した女性たちは、自分の夫に尊敬の気持ちを抱えていなかった。彼らは稼ぎ手として当てにならず、一緒に暮らすのに苦労が絶えない。大半は気が向いたときだけ働く日雇い労働者で、稼いだカネも多くは酒とギャンブルに消える。酒が結婚生活の大きな問題になっているという話は何度も出てきた。
その場にいる女性全員にとって、結婚と子育ては”夢”ではなく”義務”なのだ。とはいえ、彼女たちは妻になり、母になりたいとは思っている。だが同時に、できるだけ自分の思うように生きたいという夢も持っているのだ。話を聞いていて、私の頭にはこんな考えが浮かんだ。この若い女性たちが「自立の夢」を自分の娘に託すころには、インド人女性の要求する自主性は今よりもっと範囲が広まっていることだろう。その要求はゆっくりと着実に、世代を経るごとく強く、大きく育っていく――。デリーのスラム街における家族計画とは、経済的必要性であり、宗教と家父長制という伝統との戦いであり、自分の人生をコントロールしたいという女性たちの夢でもある。その行く先はひとつしかない。自主性の向上、そして子供の数の減少である。女性の権利を求める闘争は、いつでもどこでも同じ方向を目指すのだ。
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インドの人口は、国連が予測するように、2060年に17億人というピークを迎えるのだろうか――。少なくともこの点に関しては、ヴォルフガング・ルッツと国際応用システム分析研究所(IIASA)にいる彼の研究仲間は国連予測が正しいと考えている。だが、私はデリー滞在中に、現地の人口統計学者や研究職にある政府関係者から小さな声で何度も聞かされた。”実は出生率はすでに2.1を切っているのではないかと疑っています”と――。もしそれが事実なら、インドは国連やウィーン学派の予想の10年先を行っていることになる。もし出生率がすでに2.1以下になっているなら、インドの人口は最大時でも15億人を大きく超えることはなく、2100年には12億人程度にまで減るだろう。「低位推計シナリオ」に従えばそうなる。
もし国連予測が正しければ、中国とインドの人口増加により人類は110億人に近づくことができよう。だが、中国もインドも、「国連予測は数字が大きすぎる」という強いシグナルを発している。両国ともに、多くの人が予想するより早く人口のピークを迎え、その後は他の国と同じように人口減少に転じるという強い徴候が読み取れるのだ。