Our Tribal Intelligence
Tribalism Is Killing Liberalism
Tribalism Is Killing Liberalism
In an interview with the Financial Times last year, Russian President Vladimir Putin glibly proclaimed Western liberalism to be “obsolete.” Self-serving as his remark may have been, Putin was tapping into a global sentiment.
Illiberal populism is on the rise on virtually every continent, even in places that not long ago seemed headed the opposite way.
https://www.foreignaffairs.com/articles/2020-03-05/tribalism-killing-liberalism
白人ナショナリズムとグローバル・セキュリティ より
カリフォルニア州の教訓
興味深いデータがある。2018年にロイターがIPSOS(マーケティングリサーチ会社)やバージニア大学政治センターと行った共同世論調査によると、「ネオナチ」を強くまたは多少なりとも支持すると答えた米国人が5パーセントいた。「オルトライト」に対しては7パーセント、「白人ナショナリズム」に対しては8パーセントだった。さらに「現在、米国では人種的少数派が攻撃されている」という指摘に、強くまたは多少なりとも同意すると答えた人が57パーセントだったのに対して、「現在、米国では白人が攻撃されている」に対しては43パーセント、「米国は白人欧州の遺産を守るべき」35パーセント、「結婚は同じ人種間に限るべき」16パーセントだった。
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今後、米国の白人ナショナリズムはどうなるのか。
私が今回ヒアリングを重ねた「現役」ならびに「元」白人ナショナリズム、そして人権団体関係者や専門家は、さらなる勢力増大ないし過激化の可能性を指摘する。少なくとも近い将来に減退ないし消滅すると考えている者は皆無だった。「レーガン政権が発足した頃、カリフォルニア州の人口の約3分の2が白人でした。それが今では約3分の1です。その一方で、カリフォルニアは全米で最も白人ナショナリズムが活発な地域の1つになりました。白人人口が減るにつれ、白人ナショナリズムは増大していったのです。この事実は米国の今後を考えるうえで示唆的だと思います」。ADL(連携ネットワーク)の担当者はこう述べていたが、ADLを罵る白人ナショナリズムの側からも同じ論法をしばしば耳にした。全米で見ればまだ白人が多数派を占めている現在でさえ「白人大虐殺」(white genocide)や「壮大な乗っ取り」(great replacement)を憂慮しているのであれば、今後、過半数を割り込むとされる2040年代半ばに向け、さらに危機感を強めても不思議ではない。
トライバリズムの時代
白人ナショナリズムの隆盛は現代米国においてより広い含意を有している。すなわち「米国の分裂」という問題である。
もっとも、分裂は今になって始まったことではない。建国以来、米国はつねに分裂しており、やや挑発的な言い方をすれば、1つにまとまらないことが彼の国の活力の源泉でもある。私が米国留学していた四半世紀前から党派対立は十分に熾烈だったが、米国史を繙(ひもと)けば、さほど稀有な現象でもない。暗殺が相次いだ時代もあった。
では、杞憂に過ぎないかというと、そうではない。近年の米政治は、従来とは異なり、共和党(保守)と民主党(リベラル)の双方が重なり合う領域、すなわち妥協の余地が少なくなっており、南北戦争以降、最も分裂した状態にあるとされる。
加えて、昨今の社会状況はトライバリズム(政治的部族主義、tribalism)の様相を呈している。トライバリズムとは、ここでは人種や民族、ジェンダー、教育、所得、世代、地域などの差異にそって、各自の集団の中に閉じこもることを指す。それだけなら目新しくはないが、最近の問題は自らの部族を「被害者」「犠牲者」と見なし、他の部族を制圧しようとする点にある。ソーシャルメディアがこうした傾向を助長している。
政治的指導者は国民融和を目指すのではなく、特定の部族(=支持基盤)の利益のみを重んじ、抗う部族を徹底的に敵視する。そのためには、専門家の知見をものともせず、然るべき手続きや不文律を軽んじ、そのことを「強い指導者」の証として誇示する。対外的にも同じで、多国間主義を疎んじ、自国第一主義を鼓舞する。
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民主主義国家はトライバリズムを克服することができるのだろうか。
断片化する世論の裂け目から民主主義が全体主義へと転落してしまった過去のドイツの事例はある。しかし、逆に、克服した事例はなかなか思い浮かばない。
そう考えると、いま、私たちが目の当たりにしている米国の分裂状況は、単に米国のみならず、民主主義そのものにとっての試練のように思える。
折しも欧米の一部では、リベラルな啓蒙理念そのものを否定する「新反動主義」、あるいは「暗黒啓蒙」と称される過激な思想が一部の有目を集め、2019年には映画『ジョーカー』が全米で3億ドル、全世界で10億ドル以上を稼ぎ出す大ヒットになった。
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しばしば指摘されるように、目下、リベラルな国際秩序は、力による現状変更すら厭わない権威主義国家による挑戦に晒されている。例えば、ロシアのプーチン大統領は、英『ファイナンシャル・タイムズ』紙の取材に対し、「リベラルな価値観は時代遅れのものとなった。国民の大多数の利益と相反するものとなっている」「リベラルな価値観は消滅しつつあると考えている」と喝破している。(The Financial Times,June 27,2019)。
と同時に、それはトライバリズムが進む民主主義国家の内側から蝕まれつつあるのかもしれない。白人ナショナリズムを看破できない理由がここにある。