じじぃの「歴史・思想_289_現代ドイツ・カッコウ時計」

Die schonste Kuckucksuhr aus dem Schwarzwald | Wir In Der Gewinnerregion

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ywWHc6Divqo

カッコウ時計(鳩時計)

鳩時計

ウィキペディアWikipedia) より
鳩時計(独: Kuckucksuhr、英: cuckoo clock)は、壁掛け時計の一種である。
ドイツ南西部にあるシュヴァルツヴァルト地方で普及されたといわれる、重りで動かす木製の振り子時計である。毎時ちょうどに時計上部の小さな窓から小鳥の模型が顔を出し、時刻の数だけ鳴き時報を教え、半にも一度鳴く。
人形の付いているタイプは小鳥と同時に針金などを使い、薪割りを始める動きなどを時計の中に入れ、ほとんどの場合(サイズの小さいものを除く)はポッポの時報と同時に鐘が鳴り、スイス製シリンダー式オルゴールが流れるものもある。1783年、ドイツで発明されたと伝えられているが、発祥時期の明らかな文献は残っていない。ドイツとスイスの国境に近いシュヴァルツヴァルト地方がその原産地で、スイスでも一部作られている。
ドイツにはシュヴァルツヴァルド時計協会(英語版、ドイツ語版)があり、おもり式鳩時計の品質証明書を発行している。この証明書は、シュヴァルツヴァルト時計協会が定める品質をクリアしている証であり、その基準を満たしている伝統のシュヴァルツヴァルト産機械式鳩時計にのみ、その認定書が付けられている。
日本では鳩時計と呼ばれるが、本来はカッコウが鳴く時計である。カッコウの別名が閑古鳥(不景気なときに鳴くとされる鳥)であるため、縁起が悪いと変えられたという説がある。鳴声は時計内部にある高音と低音の2つのふいご(アコーディオンのような蛇腹)により発音される。

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『現代ドイツを知るための67章【第3版】』

浜本隆志、高橋憲/編著 明石書店 2020年発行

黒い森のカッコウ時計――ノスタルジアを叫ぶ職人技 より

森の国といわれたドイツは、クリスマスツリーの習俗を生み出し、それはサンタクロースとともに、世界中に広まった。有名な西南ドイツの鬱蒼と茂った黒い森シュヴァルツヴァルト(Schwarzwald)は植林されたものであるが、森林官が手厚く森の自然を守っている。ドイツには木組みの家、家具、カッコウ時計、くるみ割り人形、子ども用木製玩具など、森の文化が育んだ木工品が多い。ここでは黒い森の特産品のカッコウ時計(Kuckucksuhr)を取り上げよう。
日本では鳩時計と訳されているが、しかしドイツには正確にいえば鳩時計はない。この種のものはカッコウ時計といい、おもな製造地は黒い森である。時計本体は、ピアノの鍵盤材と同じトウヒ(スプルース)を用いるが、その理由は、音響がよくなるからだ。動力はもともと、ペンデル(Pendel)と呼ばれる振り子によって機械式で動く仕組みであった。電子式と区別するために、現在ではシュヴァルツヴァルトカッコウ時計協会が、機械式のみを本来のカッコウ時計として認定している。なお錘(おもり)はトウヒの松ぼっくりをイメージしたデザインで、森の自然を連想させる。
カッコウ時計の外見は、ドイツ人のこころの故郷である山小屋をイメージしたものが多く、ほのぼのとして木のぬくもりを感じさせる。引用写真のように、ご当地定番の森の狩人、獲物のウサギ、キジ、シカなどのデザインは、ドイツ人を祖先へのノスタルジアに駆り立てる。
人気の秘密は、時計の上部の巣の扉が開き、なかからカッコウが飛び出し、ふいごによる鳴き声で時間を告げるメカニズムにある。カッコウは渡り鳥で、黒い森はその中継地にあたる。春から夏にかけて北アフリカ方面からヨーロッパへ飛来し、注意しておればドイツでも、そのシーズンになると日常的に見かける身近な鳥である。またカッコウは、鳴き声を摸倣することが比較的容易であったので、時計のシンボルに採用されたといわれる。
ドイツではカッコウは童謡や歌曲でも歌われ、愛らしい砦ありネガティブなイメージはない。しかし日本ではカッコウは閑古鳥、別名ホトトギス(不如帰)とも表現され、芭蕉の『奥の細道』(1702)の「郭公」(カッコウ)、正岡子規の句集の『ホトトギス』(1897)、徳富蘆花の小説『不如帰』(1898)において、別離や死と結びつくネガティブな意味を含んでいた。したがって日本へ導入するときに、カッコウを童謡でもなじみのある鳩に変え、鳩時計と変更したのではないだろうか。
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村人あるいは時計商が完成品を背負って、ドイツだけでなくヨーロッパ各地をまわって売り歩いたので、シュヴァルツヴァルトカッコウ時計は有名になった。行商人をモデルにした木製人形がつくられ、現在、土産物として売られている。その後、時計製造では手工業職人による独立工房方式となり、生産量が急増した。黒い森の南に隣接するスイスの山地でも、時計産業が1世を風靡したのは同様な経緯による。
近年、ドイツではシュヴァルツヴァルトが保養地として脚光を浴びるようになってきた。さらに昨今では、グリーンツーリズムのブームのおかげで、自然のなかでの乗馬、サイクリング、散策、果樹や野菜の収穫などを目的に、観光客も多くの訪れる。なおフライブルク東方の地方ルートを結ぶおよそ320kmにおよび「時計街道」があり、ここでもサイクリングが盛んである。
街道の途中のトリベルクには、世界一大きいカッコウ時計と称して、高さ15.3m、振り子の全長8m、時計装置は4.5 x 4.5m、重量6トンの実物を展示している。これはなかからも外からも見学でき、時間になれば実際にカッコウが飛び出してきて、時を告げる。トリベルクはこれを目玉にして客寄せをし、カッコウ時計や土産物を売っている。
なお、フルトヴァンゲンでは、1850年にドイツではじめて時計工学校が設立された。