じじぃの「歴史・思想_281_ハラリ・21 Lessons・教育」

Education at a Glance 2019 - OECD Indicators Q&A Webinar

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=XPMG2jxp4BA&feature=emb_title

Education at a Glance

2019 OECD
Education at a Glance is the authoritative source for information on the state of education around the world. It provides data on the structure, finances and performance of education systems across OECD countries and a number of partner economies.
https://www.oecd.org/education/education-at-a-glance/

『21 Lessons』

ユヴァル・ノア・ハラリ/著 柴田裕之/訳 2019年発行

19 教育――変化だけが唯一不変 より

人類は前代未聞の革命に直面しており、私たちの昔ながらの物語はみな崩れかけ、その代わりとなる新しい物語は、今のところ1つも現れていない。このような史上空前の変化と根源的な不確実性を伴う世界に対して、私たちはどう備え、次の世代にはどんな準備をさせておけるのか? 今日生まれた赤ん坊は、2050年には30代に入っている。万事が順調にいけば、その子供は2100年にも生きていて22世紀に入っても溌剌と暮らしてさえいるかもしれない。2050年あるいは22世紀の世界で世界で生き延び、活躍するのに役立ててもらうためには、その子供に何を教えるべきなのか? その子は、仕事を得たり、周りで起こっていることを理解したり、人生の迷路をうまく通り抜けていったりするためには、どんな技能を必要とするのか?
あいにく、2100年は言うまでもなく、2050年の世界がどうなっているかは誰にもわからないので、このような疑問の答えを私たちは知らない。もちろん、これまでも人間は未来を正確に予測することはできなかった。だが今日、未来の予想はかつてないほど難しくなっている。なぜなら、テクノロジーのおかげでいったん体と脳と心を作り変えられるようになってしまえば、もう何1つ確かに思えるものがなくなるからで、それには、これまで不変で永遠のように見えていたものも含まれる。
今から1000年前の1018年には、人々は未来についてわからないことはたくさんあったが、それでも人間社会の基本的特徴が変ることはないと確信していた。
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未知との遭遇が常識となる時代には、自分の過去の経験ばかりか全人類の過去の経験も、手引きとしては以前ほど頼りにできない。超知能を持つ機械や、人工的な作られた体、君が悪いほどの精度で人の情動を操作できるアルゴリズム、人間が引き起こす気候の大変動、10年ごとに職業を変える必要性といった、かつて誰も出合ったためしのない事物や事態に、個々の人間も人類全体も対処せざるをえない場合が増えていく。まったく前例のない状況に直面したときには、どうするのが適切なのか? 厖大な量の情報の洪水に見舞われ、全部を吸収して分析することなど逆立ちしてもできないときに、いったいどう振る舞うべきなのか? 深遠な不確実性というものが欠陥ではなく特徴である世界で、どう生きればいいのか?
そのような世界で生き延び、栄えるには、精神的柔軟性と情緒的なバランスがたっぷり必要だ。自分が最もよく知っているものの一部を捨て去ることを繰り返さざるをえず、未知のものにも平然と対応できなくてはならないだろう。あいにく、未知ものを取り入れ、心の安定を保つことを子供たちに教えるのは、物理の方程式や第一次世界大戦の原因を教えるよりもずっと難しい。本を読んだり講義を聴いたりしても、レジリエンスは身につかない。21世紀に求められる精神的柔軟性を、教師自身がたいてい欠いている。なぜなら、彼ら自身が、古い教育制度の産物だからだ。
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バイオテクノロジー機械学習が進歩するにつれ、人々の最も深い情動や情動や欲望を操作しやすくなるので、ただ自分の心に従うのは、いっそう危険になる。コカ・コーラやアマゾン、百度(バイドウ)、政府があなたの心や脳の操作の仕方を知ったとき、あなたは依然として、自己と、企業や政府のマーケティングの専門家との区別がつくだろうか?
これほど手強い課題を成し遂げるには、自分のオペレーティングシステムをもっとよく知るために必死に努力するひつようがある。自分は何者か、そして、人生に何を望むかを知るために。もちろんこれ、すなわち汝自信を知れ、は本書でいちばん古い助言だ。哲学者や預言者は何千年にもわたり、人々に自分自身を知るよう促してきた。だが21世紀ほど、この助言の実行が急を要することはこれまでなかった。なぜなら、老子ソクラテスの時代と違い、今や熾烈な競争が繰り広げられているからだ。コカ・コーラやアマゾン、百度、政府がみな我先にあなたをハッキングしようとしている。あなたのスマートフォンやコンピューターや銀行口座ではなく、あなたとあなたの有機的なオペレーティングシステムをハッキングしようと競っている。わたしたちはコンピューターがハッキングされる時代に生きていると言われるのを、聞いたことがあるかもしれないが、それは真実の半分も語っていない。じつは私たちは、人間がハッキングされる時代に生きているのだ。
今この瞬間も、さまざまなアルゴリズムがあなたをじっと眺めている。あなたがどこに行き、何を買い、誰に会うかを見守っている。