じじぃの「人の生きざま_800_赤畑・渉(ワクチン開発者)」

2017-01-05 がん治療最前線 日本人が研究 ワクチン治療法とは? 赤畑渉博士 VLP Therapeutics

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=fT6s910zfoY

ワクチン開発に挑む赤畑渉さん

VLP Therapeutics CEO 赤畑渉氏インタビュー -感染能を有しないウイルス様粒子(VLP)を用いた基盤技術に基づく創薬ベンチャーを米国で創業し、ワクチンを開発-

2019/05/27 nistep.go.jp
赤畑渉氏は、2010年に米国国立衛生研究所(NIH)ワクチン研究センターで、ゲノムを持たず感染能を有さないウイルス様粒子(VLP:Virus Like Particle)を用いたチクングニアウイルス感染症チクングニア熱)のワクチンを開発した。
2013年には、米国で創薬ベンチャーを創業し、チクングニアウイルスなどのVLPを用いてワクチン創製の基盤技術「i-α VLP プラットフォーム」を開発した。

現在、赤畑氏は、CEO(最高経営責任者)として、このプラットフォーム技術を用いてデング熱ワクチン、マラリアワクチン等の開発を進めている。

マラリアワクチンについては、2019年から臨床試験(第I / IIa 相臨床試験)が進められているなど、世界の公衆衛生の向上に向けて、従来とは異なる新しいワクチンの開発を進めている。
科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は、この成果に着目し、2018年に「ナイスステップな研究者」の一人として赤畑氏を選定した。
今回のインタビューでは、ベンチャー創業の背景、赤畑氏が経営するベンチャーの現況、感染症研究やグラントの日米の違いなどについて伺った。
https://www.nistep.go.jp/wp/wp-content/uploads/NISTEP-STIH5-2-00169.pdf

サイエンスZERO 「挑戦者たち! 新型ワクチン開発で世界を救え」

2020年1月26日 NHK Eテレ
【語り】小島瑠璃子
いまだ、年間45万人の死者を出す感染症マラリア
根絶を目指してワクチン開発に挑む日本人研究者・赤畑渉さんが生み出したワクチンは、動物実験で9割の感染を防いだ。カギとなるのはワクチンの大きさ。これまでにない巨大さで、免疫を誘導する能力が従来の約8倍あるという。2019年9月、アメリカでワクチンの効果を実際に人で確かめる臨床試験に挑んだ。赤畑さんの活動に密着、新型ワクチン誕生の可能性を追う。
赤畑さんの会社の社員はたったの6人。みんな世界の医療を変えたいという大きな夢を抱いています。
赤畑さん、「シュークリームとウィルスは似ています。というのは、ウィルスを形作るのが皮で、中のクリームが遺伝子。VLPはシュークリームでいうとこういうこと。クリームが遺伝子だとすると、僕たちはこの遺伝子を除いたVLPを作っています」
ウィルスは殻と遺伝子2つの部分に分けられます。遺伝子を取り除いて殻だけにしたものがVLPです。そして表面に抗原としてマラリアの特徴となる物質を乗せたものがマラリアワクチンです。
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2019097115SA000/index.html

『人類と病』

詫摩佳代/著 中公新書 2020年発行

2度の世界大戦と感染症 より

大戦中はマラリアも猛威を振るった。マラリアとは寄生虫プラスモディウムを有する蚊が人を刺すことによって、人から人へと感染する。感染すると高熱を出し、インフルエンザのような症状を呈する。現在でも、中央アフリカやアジア、中南米を中心とする熱帯地域で感染が続いている。
マラリアはもともと、アフリカの風土病であり、19世紀以降のヨーロッパ諸国による植民地開拓・支配の過程で、大きな懸念材料となった。たとえば1895年に発足したイギリスの第三次ソールズベリー内閣で植民地大臣を務めたジョセフ・チェンバレンは、マラリアに感染している現地人からヨーロッパ人を隔離することが得策だと考え、あらゆる新設建物を現地人居住域から隔離するように植民地の総督たちに指示した。科学ジャーナリストのソニア・シャーによれば、このような方針に基づき、たとえばイギリスの植民地であったシエラレオネフリータウンでは、高地にヨーロッパ人専用の飛び領地が建設され、現地人の立ち入りが固く禁止されたという。
第一次世界大戦中、マラリアバルカン半島を中心に猛威を振るった。バルカン半島ブルガリアからギリシャに向かって流れるストゥルマ川の流域には、マラリアの原虫が生息していた。1915年、フランスの指揮の下、イギリス、フランス、イタリアの60万人の部隊がセルビア軍を援護する目的でストゥルマの谷を下り、湿地に幕舎を設営した。幕舎の各テントの中にはおびただしい数の蚊がいたといい、1915年以降、各陣営では、マラリアによる死者が急増した。シャーによれは、1917年には、ギリシャのサロニカの病院にマラリアの患者兵士6万人以上が収容され、英仏の軍は麻痺状態に陥ったという。
マラリアの感染メカニズムが明らかにされたのは、前章で見たペストやコレラと同じく、19世紀末であった。1880年には寄生虫プラスモディウムが発見され、またキナの木の樹皮(キニーネ)は発病を防いだり、軽減する効果があることもわかっていた。キニーネと呼ばれるこの抗マラリア治療薬は、マラリア原虫のライフサイクルを遮断し、その増殖を防ぐ働きをする。

感染症の「根絶」――天然痘、ポリオ、そしてマラリア より

それでも事態は改善されているとはいい難い。2016年においては91ヵ国で約2億件以上のマラリアの感染が確認され、前年に比べると500万件の増加であった。WHOによれば、地域別でいうとWHOアフリカ地域局に感染件数および死者数の9割以上が集中しているという。
なぜマラリア天然痘やポリオと異なり、根絶が難しいのだろうか?
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今後のマラリア対策における第3の鍵となるのが、マラリアワクチンの活用である。マラリアワクチンの開発は1980年代から進められてきたが、たびたび失敗を繰り返してきた。
それでも今世紀に入って、ようやくワクチンの実用化に向けた道筋が整ってきた。2017年4月24日のCNNニュースによると、23日、WHOはアフリカの3ヵ国で年間約36万人の子供を対象に、世界で初めて使用が承認されたマラリアワクチンの接種を始めると発表した。モスキリックスと呼ばれるこの新たなワクチンは、イギリスの製薬大手グラクソ・スミスクライン社(GSK)が1987年に製造したもので、臨床試験の結果、子供のマラリア感染に対して、部分免疫による防護を提供することが確認された。史上初めてかつ現在唯一のマラリアワクチンであり、今後、広範囲な地域で使用され、感染の予防に大きな役割を果たすことが期待される。