【歴史ミステリー】 「ニネヴェ常数」とはなにか?
ニネヴェ常数
『神々の遺品』
今野敏/著 双葉社 2020年発行
彼は「セクションO」と書かれたファイルを差し出してから言った。
「オーパーツというのをご存じですか?」
ジョーンズは、最初、コンピュータか何かの部品のことかと思った。オーの頭文字ではじまるパーツ。
彼は正直に知らないと言った。その頃には、ジョーンズはますます不機嫌になっていた。シド・オーエンによると、オーパーツというのは、Out-of-place artifactsの頭文字を執った言葉だそうだ。つまり、「場違いな工芸品」というわけだ。コンピュータとは何の関係もなかった。若者はやってきて意味不明の言葉をしゃべれば、それはたいがいコンピュータに関連したことだというのが、昨今の世相だ。
だが、オーエンのいうオーパーツというのは、コンピュータの話題よりずっとやっかいだった。
それは、考古学の世界などで使われる言葉らしい。
・
「耳寄りな情報?」
「そう。ネット仲間の掲示板なんかで、訊いて回ったんだ。東堂君のホームページに何が書いてあったか覚えている人、いないかと思って」
石神は、思わず江梨子を見つめていた。
「わかったのか、何が書いてあったか……」
「数字が羅列してあったんですって」
「数字? どんな数字だ? 電話番号か何かか?」
「そんなんじゃないよ。いろいろな数字がたくさん並んでたって」
「その数字を覚えていたやつはいないのか?」
「教えてくれた人、コピーを取っていたそうよ。これがそれ……」
江梨子は、紙を取り出した。パソコンのプリントアウトのようだ」
3.1415
1.41421356
1.7320508
2.2360679
1.61803398
2.7182
19.5
72
36
108
4320
25920
195955200000000
たしかにただの数字の羅列だ。
石神は、しばらくそれを睨み付けていたが、さっぱり意味がわからず、明智に手渡した。
「おまえ、これが何だかわかるか?」
明智は即座に言った。
「最初の4つは、明らかですね」
「何だ?」
「円周率と√2、√3、√5ですよ」
・
デ・ザリ神父は好奇心に目を輝かせた。
石神は、コピーを取り出し、デ・ザリ神父に差し出した。
デ・ザリ神父は、老眼鏡を取り出してかけると、眼を細めて紙を見つめた。しばらく、睨み付けていたが、やがて、何かを発見したようにやや興奮した面持ちで言った。
「たしかに、円周率や√2、√3、√5といった数字はすぐにわかりますね。それと、最後の数字には見覚えがあります」
「ほう、それは何です?」
「おそらく、ニネヴェ常数と呼ばれるものです」
「ニネヴェ常数? それは何です?」
「古代アッシリア帝国の首都ニネヴェから、大量の粘土板が発見されました。いわゆる、シュメールの粘土板です。そこに刻まれていた楔形文字の中に、含まれていた数字です。それゆえに、ニネヴェ常数と呼ばれています」
・
石神は質問した。
「ピラミッドに幾何学的な数字が隠されているのはなぜなんだ?」
「あれこそが、時代を超えたメッセージです。ピラミッドやスフィンクスなどギザの構造物全体が、大洪水で滅んだ人々のメッセージなんです。建造物に、幾何学の知識をふんだんに盛り込むことで、人々の注意を向けさせようとしたんです。何度も言いますが、幾何学は、いつの時代であれ、どんな言語を話していようと、文明が発達すれば必ず理解できる共通言語だからです」
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
どうでもいい、じじぃの日記。
ニネヴェ(Nineveh)は、古代メソポタミア北部にあったアッシリアの都市。アッシリア帝国の後期には首都が置かれた。なお、ニネヴェという名は旧約聖書(ヨナ書など)の表記によるものであり、アッカド語ではニヌアと呼ばれる。新改訳聖書では、ニネベと表記される。現在は、対岸のモースル市域に含まれる。
ウィキペディア(Wikipedia) より
古代アッシリア帝国の首都ニネヴェ(紀元前9世紀頃)で見つかった粘土板群から、ニネヴェ常数という甚大な数値(195兆9552億)が出てきた。
この数値は、地球の歳差運動の周期で割り切れると同時に、様々な惑星の公転周期で割り切れる数だった。
「あれこそが、時代を超えたメッセージです」
ちなみに、「2.7182」という数字は自然対数の底(loge)と呼ばれる数字なのだそうだ。