じじぃの「究極の方向音痴・自宅で道に迷う?脳の不思議な物語」

ロンドンのタクシー

「世界一難しい試験」と言われるロンドンのタクシー免許試験とは?

2014年11月12日 GIGAZINE
ロンドンの伝統的なタクシーは背が高く黒色の車体を使っていることから「Black Cab」と呼ばれています。
ロンドン市民だけでなく世界中の旅行者に親しまれ愛されているBlack Cabを運転するロンドンのタクシー運転手は、ロンドン市民から尊敬される対象とのこと。その理由は、Black Cabを運転する資格を得るための運転免許試験「Knowledge of London(ナレッジ試験)」が「世界一難しい試験」と呼ばれるほどの難関だからだそうです。
https://gigazine.net/news/20141112-knowledge-of-london/

『9つの脳の不思議な物語』

ヘレン・トムスン/著、仁木めぐみ/訳 文藝春秋 2019年発行

脳内地図の喪失――自宅で道に迷う ”究極の方向音痴” シャロン より

方向感覚は脳が生み出す最も高度な能力の1つだ。では、それを失うと人はどうなるのか。それを教えてくれるのがシャロンだ。彼女は自宅のトイレからキッチンへ行こうとして迷子になる。脳内ではどんなエラーが起きているのか。

                     1952年
自宅の前庭の芝生で、シャロンは目隠しをされていた。友達が周りを走り回り、笑いながら彼女に捕まるまいとしている。目隠し鬼で遊んでいるのだ。シャロンは誰かの袖を捕まえると、目隠しのスカーフを勢いよく外して叫んだ。「はい、鬼!」
それから彼女は目を瞬き、辺りを見回した。不意にパニック状態に陥った。家も通りも、すべてが違って見える。シャロンは自分がどこにいるのかまったくわからなくなった。
シャロンは裏庭に駆け込み、庭用の椅子に座っている母親を見つけた。
シャロンは訊いた。「ここで何をしているの? ここは誰の家の裏庭? ここはどこ?」
母親は当惑したようにシャロンを見た。「どうしたの? ここはうちでしょ!」
シャロンはわけがわからなかった。彼女は周りのもの全てに見覚えがないと言ったが、母親はイライラしているようだった。シャロンがなぜ、ここが自分のうちでないと思うのが知りたいようだった。
シャロンにはそれもなぜだかわからなかった。どうしてママは助けてくれないの?
「ここがどこかわからない。そんな見たことないものばっかりで、なんだかわからないの」
すると母親はシャロンの目をまっすぐに見て、顔に指を突きつけた。
「このことは誰にも言うんじゃないよ。魔女だと言われて火あぶりにされるから」

自分に見えている景色と、隣の人に見えている景色は同じなのか?

私は機内で、シャロンとレストランで撮った写真を眺めていた。シャロンの明るい赤色の髪と晴れやかな笑顔はきらきらしていた。彼女には世界が奇妙に見えているなんて、外からはまったくわからない。けれど彼女の世界では山が突然別の方向に飛んでいったりするし、自分の家さえ、一瞬のうちに一変してしまうのだ。
シャロンの病状が起こる仕組みは少しずつわかってきている。海馬内や周辺の細胞同士が、どう連絡を取り合って体内GPSを作り上げているかが。きっといつか、そこに問題が起きたときには治せるようになるだろう。けれど現時点で、どれほどの数の人が、シャロンと同じ秘密を隠しているのだろう。言い訳をし、技を見つけだし、非難されることをおそれるあまりにうつ病になってしまlている人々が、そういうことが起こるのは自分の見ている世界を、それぞれ客観的に比べることができないからだ。

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どうでもいい、じじぃの日記。
自分に見えている景色と、隣の人に見えている景色は同じなのか?
シャロンの病状が起こる仕組みは少しずつわかってきている。海馬内や周辺の細胞同士が、どう連絡を取り合って体内GPSを作り上げているかが。きっといつか、そこに問題が起きたときには治せるようになるだろう」
ロンドンのタクシードライバーの脳を調べた結果、ベテランになるほど記憶を司る海馬が発達していることがわかった。
「方向音痴」かどうかは、脳内の海馬と高度な空間記憶とそれを検索し結びつける力によるものらしい。
同じ景色を見ていても、脳のなかで見ている世界は違っているのです。