じじぃの「科学・芸術_909_パレスチナ・善きサマリア人」

The Good Samaritan - Holy Tales Bible Stories - Parables of Jesus Christ

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=aSfm2xdKau4

The Samaritan Passover

on Mt. Gerizim

善きサマリア人のたとえ

ウィキペディアWikipedia) より
善きサマリア人のたとえ(英語: Parable of the Good Samaritan)とは、新約聖書中のルカによる福音書10章25節から37節にある、イエス・キリストが語った隣人愛と永遠の命に関するたとえ話である。このたとえ話はルカによる福音書にのみ記されており、他の福音書には記されていない。
ユダヤ人のある律法学者(英語版)が同じくユダヤ人であるナザレのイエスに永遠の生命を受けるために何をすべきかを問いかけた際、イエスが逆に律法にはどうあるかと尋ね返した。律法学者が答えた内容(神への愛と隣人への愛)に対しイエスが「正しい答えだ、その通りにしなさい。そうすれば生きる。」と答えると、さらに律法学者が「では隣人とは誰か」と重ねて尋ねた。これに対し、イエスは以下のたとえ話をした。
ある人がエルサレムからエリコに向かう道中で強盗に襲われて身ぐるみはがれ、半死半生となって道端に倒れていた。そこに3人の人が通りかかる。
最初に祭司が通りかかるが、その人を見ると道の向こう側を通り過ぎて行った。次にレビ人が通りかかるが、彼も道の向こう側を通り過ぎて行った。しかし3番目に通りかかったあるサマリア人は、そばに来ると、この半死半生の人を助けた。傷口の治療をして、ろばに乗せて宿屋まで運び介抱した。そして翌日になると宿屋の主人に怪我人の世話を頼んでその費用を払った。
このたとえ話の後、律法学者に対してイエスは、このたとえ話で誰が怪我人の隣人となったかを律法学者に問い、律法学者が「助けた人(サマリア人)です」と答えると、「行って、あなたも同じようにしなさい」とイエスは言った。

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パレスチナを知るための60章』

臼杵陽、鈴木啓之/編著 赤石書店 2016年発行

「3652年間この地に生きる」 サマリア人 より

ヨルダン川西岸北部の中心都市ナーブルスにあるゲリズィム(ジャリズィーム)山。その頂に、独自の伝統を守り続けるサマリア人の共同体が存在する。彼らはモーセの律法を遵守し、現在も古代ヘブライ語で礼拝や宗教儀礼を行う。といっても周りから隔絶された存在ではなく、普段はアラビア語を話しパレスチナ人と同じ学校に通う、ナーブルスのアラブ人社会の一員だ。
山頂の村にたたずむ小さな博物館で、家系図を前に説明を受けた。「アダムからモーセまでは26世代、モーセの兄アロンの子、エルアザルが、初代の大祭司。彼から現在のの大祭司オヴァディアまで137世代、つまりアダムから数えると、私たちは第163代目」
サマリア人の歴史や文化を紹介するこの博物館を開いたのは、現サマリアの大祭司の弟で、自身も祭司であるフスニー・サームリー(ヘブライ語名イェフェット・コーヘン)氏だ。灰色のガウンに赤い円筒状の帽子を被り、立派なあごひげをたくわえている。氏によれば、サマリア人は北イスラエル王国の民の末裔で、イスラエル12支族のうちレビ、エフライム、マナセの子孫だという。
現代のユダヤ教徒の多数派であるラビ系ユダヤ教エルサレムを聖地とするのに対し、サマリア人はゲリズィム山を聖地として信仰する。旧約聖書の初めの五書(トーラー)のみを聖典とするなど他にも相違点はあるが、シャバット(安息日)や過越祭など共通項も多く、サマリア人はしばしば「ユダヤ教の一派」とされる。
しかしフスニー祭司に言わせれば、「われわれは3652年間イスラエルの地に残り、ユダヤ人は2000年間外に出ていた。サマリア人こそが、イスラエルの民の教えと伝統を正しく継承する者」なのである。村のシナゴーグ(礼拝堂)には、世界最古である3652年前のトーラーが保存されているという。
2015年初めにおける世界のサマリア人人口は777人。そのうち約400人がテルアビブ郊外のホロンに、そして残りの半数弱がゲリズィム山に住む。年3回の巡礼や祭事のときは聖地ゲリズィムに全員が集まるため、普段山頂の村には空き家が多い。
繁栄期には300万人いたというサマリア人は、長い歴史の中でさまざまな勢力による支配や迫害を受けた。1917年の統計学の人口はたったの146人で、宗派消滅の危機に瀕して平穏ではなかったこの土地において、サマリア人共同体は再興を果たした。
サマリア人の異宗婚は禁止とされるが、共同体の女性が男性に比べ少数になり、男性の結婚難が深刻化した近年は、改宗した女性との結婚がみられる。「サマリア社会は父系制。これまでに約40名の女性が改宗を経てサマリア人男性に嫁ぎ、子どもも生まれている」とフスニー氏は話す。
ともすると「ユダヤとアラブの民族対立」または「ユダヤイスラームの宗教対立」と形容されてしまう地域の状況下にありながらも、サマリア人は各者と良好な関係を築いている。圧倒的多数の住民がイスラームまたはキリスト教を信仰するナーブルスと、ラビ系ユダヤ教徒が大半を占めるホロン。それぞれの町で、自らの生活文化を実践しながら共同体を維持しているのだ。