じじぃの「科学・芸術_897_カール・セーガン・宇宙の4つの謎」

Man in his arrogance - A Great Speech By Carl Sagan

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=cSrL0BXsO40

Carl Sagan

結局のところ、人類は宇宙をどこまで解明できるの?――図解 宇宙のかたち(7)

2018/11/15 本がすき。
●宇宙観そのものを疑う
実のところ、宇宙の全体像はどうなっているのか。この世界とは、いったい何もので、どんなところにあるのか。
昔に比べれば、現代の宇宙観はだいぶ進歩した。
いまから思えば、天動説のような複雑なメカニズムを一生懸命に考えていたのは無駄だったと思うかもしれない。それに比べれば、私たちはより真実に近づいてはいる。
だが、現代の宇宙観を何百年後の人類が見たらどう思うだろうか。
天動説を信じていた時代と五十歩百歩というところではないだろうか。
現代の私たちも、何か大きな思い違いをしているかもしれないのだ。
https://honsuki.jp/pickup/10557.html

『百億の星と千億の生命』

カール・セーガン/著、滋賀陽子、松田良一/訳 新潮社 2004年発行

宇宙の4つの謎 より

天文学者達が最も興味深い問題を4つ選ぶとしたら、それぞれ好みがまちまちだろうし、多くの人が私と違う選択をするだろう。解くべき謎はいろいろ挙げられるだろうが、その中には以下のようなものがある。宇宙の90パーセントを構成しているものの正体(われわれはまだ答えを見出していない)、最も近いブラックホールを突き止めること、銀河間の距離がどうやら量子化されているらしい(即ち、銀河はある一定距離の整数倍のところにあり、その中間の値のところにはない)というおかしな結果、太陽系全体と同じくらいのものが時たま爆発するガンマ線バースターの性質、宇宙の年齢が最も古い星々より若いらしいという明らかな矛盾(宇宙の年齢は150億年だという、ハップル宇宙望遠鏡のデータを使った最近の結果によりおそらく解決されるだろう)、地球へ持ち帰った彗星起源の試料を実験室で徹底的に分析調査すること、星間アミノ酸の探査、始原期の銀河の性質。
天文学と宇宙探査の予算が世界中で大きく削られなければ――情けないことにこれは決してあり得ないことではないのだが――ここに解明できそうな4つの謎がある。

1、火星にはかって生命があったのだろうか?

 火星は現在ではからからに乾いて凍てついた不毛の地だ。しかしこの惑星の至る所に、大昔には川の流れていた谷がはっきりと残っている。太古の湖の跡もあれば、海のような痕跡さえある。

2、タイタンは生命の起源の実験室か?

 タイタンは土星の大きな衛星で、大気は地球の10倍も濃く、主に窒素(これは地球と同じだが)とメタン(CH4)からなるという異常な世界だ。アメリカの宇宙船ボイジャー1号、2号はタイタンの大気中に多くの単純な有機分子――地球上の生命の起源に関与してきた炭素を基にした化合物を検出した。この衛星は赤みを帯びた不透明な靄(もや)の層に取り巻かれている。これは実験室でタイタンの模擬大気にエネルギーを加えるとできる赤茶色の固体と同じ性質を持っている。この物資が何からできているかを分析したところ、地球上の生命に必須の基本構成要素の多くが見出された。タイタンは太陽から非常に遠く離れているので、水があっても凍っているはずだ。だから生命の起源の時代には、タイタンの環境は地球に似て非なるものでしかなかったとお思いかもしれない。しかし時おり彗星が衝突して表面を解かすので、タイタンの平均的な場所ならば、46億年の歴史の中では1000年程度は水の下にあっただろうと思われる。

3、どこかに知的生物はいるだろうか?

 電波は光速で旅する。それより速いものはない。正しい周波数を保って、星間宇宙も惑星の大気もきれいに突き抜けて飛ぶ。もし地球最大の電波・レーダー望遠鏡が、別の恒星系の惑星にある同等の望遠鏡に向けられていたら、その2つの望遠鏡が何千光年も離れていたとしても互いに通信できる。こういう訳で既存の電波望遠鏡は誰かがメッセージを送ってきていないかを調べるために使われている。今までのところ何も確実なことは見出されていないが、気になる「できごと」はいくつかあった。地球外の知性としてのすべての基準を満たすシグナルを記録されたのだ。ただ一点を除いて。望遠鏡を再び空のその方角に向け直しても、数分後、数ヵ月後、数年後……シグナルは決して繰り返されないのだ。我々は知的生物探索プログラムを開始したばかりだ。徹底した探索には10年か20年かかるだろう。もしも地球外知的生物が見つかったら、宇宙や我々自身に対する見解は永久に変わるだろう・

4、宇宙の起源と運命は何か?

 驚いたことに現代の天体物理学は、全宇宙の起源・性質・運命に対する基本的な見解を今にも明らかにしようとしている。宇宙は膨張しているという。すべての銀河はハッブル流に乗って互いに遠ざかっている。これは宇宙ができた時の、厳密に言うならば現在の宇宙が形をとった時の、巨大な爆発を示す3つの証拠のうちの1つだ。地球の引力は空に向かって投げ上げた意志を引き返す十分な力があるが、脱出速度で飛ぶロケットを引き戻すほどでなない。宇宙についても同じことが言える。もし宇宙に非常に多くの物質があるならば、これらの物質すべてによる引力は膨張の勢いを弱め、ついには止めるに至るだろう。膨張する宇宙は、収縮・崩壊する宇宙に転じる。しかしもし十分な物質がなければ、膨張は永久に続くだろう。